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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
六章 誘う手
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(3)

「これって、武市君の復讐なんでしょうか」


 シンプルに思い付いた答えだった。

 いじめを受けていた武市君は、次沢達いじめグループに抵抗を試みた。その結果、自分の力を知ってか知らずか神山君が死んだ。そして完全に孤立した。人殺しのレッテルを張られた彼には孤独が待っていた。そして、中学にあがったものの心は既に疲れ切っていた。そして、自らの命を絶った。


「どうかな。そうなると腑に落ちない点はあるけどね」

「そうですよねー……」


 彼の復讐と考えると絶対的におかしな点がある。それが彼の手首だ。

 仮にだ。彼の手首が意志を持って復讐しているのだとしよう。そうなると、何故十年以上も経った今になって復讐を行っているのか。そこまで時間を置いた理由が見えない。そして切り取られた手首。これを自分で行ったのかどうか。

 私達は更に記事を追った。


 結果としては、残念ながら真新しい情報は出なかった。もともと扱われた記事の大きさもそこまでのものではない事もあってか、事件から一週間足らずで事件は消滅したのかのように紙面から消えていった。

 分かった事と言えば、自殺した際、武市君の周りに手首を斬り取れるような道具は一切なかったという事だけだった。


「これ以上はもう何も出て来なそうですね」


 収穫としては十分だろう。捜査を進める上での大きな軸は得る事が出来た。

 さて、ここからどうするか。


「外堀を埋めようか」

「外堀?」

「茅ヶ崎さんだけの情報では足りない。当時の同級生からも話を聞いた方がいいね。後、妹尾先生についても」

「はい。まだまだ大変そうですね」

「捜査というのは大変なものなんだよ」


 私達は図書館を出て、早速次の行動に映った。

 コピーしておいた卒業アルバムの情報をもとに、当時を知るであろう人物達に連絡を取った。生徒数が多くなかったのが幸いだったが、それでもかなりの人数である事には違いない。連絡がつくものもいれば、いないものも当然いる。一人一人から情報を抽出していく作業は骨の折れる作業だった。だがこれも真実へと近づく大事な作業だ。息をつきながら私は次々にダイヤルを続けた。


「はい、じゃあお願いします」

「御神さん、今それどこに掛けてたんですか?」


 ちょうど私が電話を終えた所で、何とはなしに御神さんの電話の様子に耳を傾けた。同じく猪下小の元生徒に連絡しているものかと思ったが、死体やら手やら物騒なワードを平然と口にしていたので気になったのだ。


「新潟の署の方に連絡してみた。武市君の件で何か情報が得られないかと思ってね」

「あ、なるほど。で、どうだったんですか?」

「普通の事件として処理されなかった可能性が高そうだったからね。影裏にも連絡してみたよ」

「え、影裏?」


 当たり前のように出たその言葉に私は驚いた。


「影裏は僕だけじゃないよ。色んな所に根を張ってるからね」

「なんだか勝手に、影裏って御神さんだけだと思っちゃってました」

「さすがに日本全部は荷が重すぎるよ」


 どれほどの頻度でこういった事件が起きているのかは分からない。だが知らないだけで、日常的に全国でこういった事は起きているのかもしれない。この世界で知らない事は、まだまだ山ほど溢れているようだ。


「まあただ、結構昔の事のだから少し時間はかかるみたい。こっちはひとまず連絡を待つとしよう。その間に、僕達に出来る事を進めていこう」

「はい」


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