(3)
「何すかこれ?」
「おお。目通したか。で、ご感想は?」
「誰かのおふざけですか?」
一通り資料に目を通した私は、早速こんな訳の分からない仕事を押し付けたパワハラ野郎に文句の一つでも言ってやろうと梅﨑さんに電話をかけた。
私の反応が予想通りだったのだろう。梅﨑さんは愉快そうに笑っていた。
「おふざけかどうか、それも込みで調べろって事だよ」
「あの、私決して暇じゃないんですけど」
「俺らからしたら暇も同然だ」
「だからって、こんなお遊びに時間を費やせだなんて――」
「おい」
急に梅﨑さんの声が尖りと冷たさを見せた。
「お前、ちゃんと読んだんだよな?」
「……はい」
「遊びで人は死んでいいのか?」
その声は先程までの先輩の声ではなく、刑事としての声だった。
日常的に誰かの悪意や嫉妬や恨みなどで奪われた命を目の当たりにしてきた者の声だった。
「とりあえず、影裏に行ってくれ。後はそこで指示を受けろ」
「行くって、どうやってですか?」
「いいか。一回しか言わないからメモれよ」
そう言うと梅﨑さんは、ばばばばっと影裏への行き方を伝えて最後によろしくと一声残し電話は切れた。
なんだか面倒な上に、厄介な事に巻き込まれてしまった。
――帰りてー。