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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
五章 氷と鬼
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(7)

 気付けば日は落ち、強まった冷気が肌に痛い。私達は事前に予約しておいたビジネスホテルにチェックインを済ませた。一日の行動量として適切なものかどうか捜査未経験の私には分からなかったが、とても疲れたという感覚だけは胸を張って言う事が出来た。


「じゃあ解散ね。おやすみ」


 てっきり集合してご飯でも食べながら今日の活動について話をしたりするものかと思っていた私は、意表をつかれて「あ、はあ」としか言葉を返せなかった。

 せっかく新潟に来たんだし、おいしいお店でも見つけて楽しみたかったけど仕方ない。少し寂しいなと思いながら、適当に一人でぶらつくかとホテルを出て当てもなく歩き始めた。


 自然と頭は事件の事に向いた。初めての事だらけで戸惑いだらけだったが、私なりに頭の中で事件を整理していく。


 三人の犠牲者。次沢、内原、畑中。死に方も同じ。残された謎の指紋も同じ。そして同郷出身。彼らの学び舎である猪下小学校。そこで明らかになったのは、神山君という少年の死。突然動かなくなったという死に方。そして、その場にいた武市君という存在。

 今回の事件。過去の少年の死。これらが無関係とは思えなかった。

 

 じゃあ、一体どう関係してくるのか。

 やはり引っ掛かるのは死に方だ。いまだここは何も解明出来ていない。そもそも死人の犯行だなんて突拍子もない事実を突きつけられている今、そこを合理的に解き明かそうなんてのは到底無理な話だ。

 

 ――ああーもう分かんないよ!


 理路整然と考えようとすればするほど、不可解な事実が邪魔をして思考を妨げる。何がどうなってるのか。彼らの過去を探って、その先に本当に真実なんてあるのだろうか。実はたまたまが重なった自然死だったりしないだろうか。

 

 途端に全てを放棄したくなる。

 なんで私がこんな事をと、理不尽に巻き込まれた感情がまた蘇りそうになる。だがそうはならなかった。

 頭の中にさっと、喜美代さんの顔が浮かんだ。

 あの時、自分自身も感じた痛み。身を切るような思いで話してくれた喜美代さんの存在がそれを許さなかった。

 

 ――まだ始まったばっかりじゃん。


 分からない。だからもういい。そんな話じゃないのだ。まっとうに処理が出来ないから回ってきた案件。ここで分からないなんて言ってしまっては、この事件はもう誰も解決してくれない。急に影裏の重さがのしかかってきた。

 

 私一人で事件が解決出来るとは思えない。なんだかんだでこれまで通り、御神さんが全てを片付けるかもしれない。私が出来る事はなんだ。しれている。しれているだろうけど、それは貫こうと思った。


 諦めない。


 この事件をちゃんと最後まで見届ける。それくらいは、私だってやらなきゃいけないだろう。


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