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鬼と文
“ありがとう。本当に感謝してます。でも後もうちょっとだけ。もうちょっとだけだから”
あの手紙がまた届いた。
もう少し。もう少し。
そうだ。あともう少し。
ここまで来た。
後は。
最初は信じられなかった。夢でも見ているのかと思った。この手紙も、そして実際に目の前で起きた事も。
“僕のお願いを、聞いてほしいんです”
彼の手紙が、私を長い眠りから再び呼び起こした。
そこから全てが始まった。
私は確信した。
これは、神が私にくれた機会だ。遠き日に救えなかった想いの。
彼の意志は間違いなく生きている。
私は、彼の想いに応えるのみだ