(3)
「一番焦点があてられたのは、やはり神山君の傍にいた次沢君達でした。どうもあの時、少しその中で小競り合いというか、そういうものがあったそうなんです」
「小競り合い?」
「ええ。武市君という生徒がいましてね。どうも度々武市君は、次沢君達にからかわれていたようなのです」
「いじめ、ですか?」
「武市君にとっては、そういう感覚を持っていたかもしれません。その彼が、珍しく怒ったらしいんです。そして神山君の体を、どんと両手で押したそうなんです」
そう言いながら茅ヶ崎さんは両手を前に押し出す仕草をしてみせた。
「怒った神山君が武市君に向かおうした所で、急に彼の様子がおかしくなったそうなんです。苦しみだし、その場に倒れてしまい、それっきり動かなくなったと」
「……」
「神山君が死ぬ前に起きた事と言えば、それだけなんです。最初警察は事件の可能性も考えたんでしょうが、あった事はそれだけなんです。神山君が何か重い持病を抱えていたなら別でしょうが、そんな事もありませんでした」
「そして結局、事故死だと」
「はい……」
神山君の死。
全てが語られても、全く腑に落ちない内容。だが、私や御神さんは違う。
あまりにも今起きている事件と酷似しているその内容は、私達にとって大きな意味を持っている。
「なるほど。ありがとうございます。辛い記憶にも関わらず、話して頂いて」
「いえ。ですが、これが何か参考になるんですか?」
茅ヶ崎さんもひょっとすると、気付いているのかもしれない。
次沢兼人達の死と、神山君の死。でも彼は結びつけられないだろう。その線が交わる事を認める事は出来ない。その線を結ぶには、常識を超えないといけないから。
「大変、参考になりましたよ」
御神さんの言葉は本心だ。次なる鍵を見つけた。そんな思いが読み取れた。