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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
五章 氷と鬼
32/70

(2)

「大変な騒ぎでした。あれは確か、午前の休み時間でした。私は少し早めに教室に来て、授業内容の確認をしていました。いつも通り騒がしくも楽しげな子供達の声に囲まれながら、今日も平和だなんて暢気な事を考えていたのを覚えています。それが、まさか……」


 茅ヶ崎さんはそこで声を詰まらせた。よほどショックな光景だったのだろう。


「何が起きたんですか?」


 すっと怯える手を掬うように御神さんが言葉を差し伸べた。茅ヶ崎さんは改めて話を続けた。


「隣の教室がやけに騒がしい事に気付きました。それはいつも耳にしているものとは明らかに違う、なんというか……心がざわつくような、何か良くない事が起こっていると感じさせるものでした。そして妹尾せのお先生の大きな声が聞こえた時、私はそれを確信しました」

「妹尾先生、というのは?」

「当時3-Aを受け持っていた担任の方です。彼女が叫んでいる声がしたので、慌てて教室を飛び出したんです。教室に入ると、妹尾先生が蹲っているのが見えました。そして彼女を中心に、次沢君や内原君達がその様子を見下ろしていました。全員、顔色が真っ青になっていました。私は近付いて、何が起きているのかを見ました。そこには、倒れている神山君と彼に人工呼吸を行っている妹尾先生の姿がありました……」

「では、その時点では全てが終わってしまっていたと」

「そうですね……。まもなくして救急隊員が来て神山君は運ばれていきました。妹尾先生もついていく事になって、教室は一転恐ろしいほどに静かになっていました。こんな状態で授業も出来るわけがないので、生徒達は帰らせる事にしました。その後妹尾先生から学校に連絡が入り、神山君が死んだ事が告げられました」

「神山君は、何故死んでしまったんですか?」

「それなんですが……窒息死だと」


 ――窒息死!?


 思わず私は声をあげそうになった。これまでの犠牲者と同じ死因じゃないか。


 ――まさか……。


 偶然とは思えない。今起きている事件と、過去の神山君の死。ひょっとすれば、同じなのではないか。

 だが、同じだとすれば一体どういう理屈なのか。十年以上もの時を隔てて、今一体何が起きているのか。


「あの後警察の方も来られて、私も話を聞かれました。ただ現場にずっと居合わせたわけではなかったので、私への聴取は比較的に軽いものでしたが、妹尾先生や他の生徒達はいろいろと何度も確認されたようです。最終的には突然死という事故という形で警察の捜査は終わったようでしたが、私ももちろん、おそらく誰しもがその結論に納得はいっていなかったでしょう。しかし、その結論に反論出来るものは、誰も持ち合わせていませんでした」

「というと」

「小学三年生の元気な男児が、急に窒息死ですよ? あり得ないです。私も妹尾先生もその結果を聞いた時、耳を疑いましたよ。納得という所では、神山君のご両親が一番そうだったでしょう。しかし、あの時何が起きたのか。私が聞いている限りでも、神山君が死んだ理由に繋がるものなんて、その時なかった筈なんです」

「教えてもらえますか、その時の事を」


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