表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
四章 痛み
23/70

(3)

「私こういうの初めてです。なんだか遠足気分です」

「ゆとりくんらしい発言だね。けど仕事だという事は忘れないでくれよ」

「ういーっす」

「どこまでも心配になる返事だね」


 私達は今新幹線に隣どおし仲良く並んで座っている。私の前には駅弁がどっしりと私の方に向いて置かれている。「鰻重重」と書かれた木製の蓋を取り払うと、中には脂の乗った鰻の身が濃厚なタレと共に幾重にも重なっている。


「うっまそ」


 思わず涎がこぼれかねない食の輝きに、私の期待は高まるばかりだった。


「いっただきまーす」


 ふっくらとした身を箸でつつき、口へと運ぶ


「……ふまっ」


 幸せだ。


「今だけだよ、遠足気分は」

「ふぁい」


 もちろん私だって今回の主旨がおいしい駅弁を食べて観光を楽しむなんてものではない事は分かっている。

 私達が向かっている先は新潟だ。やはり鍵は新潟にあると考えた私達は、善は急げとばかりに全ての始まりがあるであろう地へと向かっている。

 

 確証を得たのは三人目の犠牲者、畑山怜美。

 彼女の免許証はやはりと言うか住所変更の処理がされており、本来の住所が新潟である事がすぐに判明した。

 三人共同じ出身地。ただの偶然かどうか。それは調べていけば分かる事だろうが、事件の奥にある真相に近付ける気はする。


「御神さんはお弁当食べないんですか?」

「あまりお腹が空かない体質なものでね」


 その言葉通り、御神さんの前にあるのはブラックの缶コーヒーと小さなクロワッサン一つだけだ。


「それでよく足りますね」

「気持ち的にはコーヒーだけでいいんだけど、さすがに体がうるさいからね」


 むしろそれで鎮まる体もどうなんだと思うけど、どこか神秘的な雰囲気を湛えている御神さんは内臓も普通の人間とは違うつくりになっているのかもしれない。


「もったいない体ですね」


 そして私はまた鰻重重へと箸を伸ばした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ