表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
四章 痛み
22/70

(2)

 私達が二人の経歴を再確認した数日後、私達は再び白鞘さんのラボを訪れていた。気分は重かったが仕方がない。断る理由はどこにもなかったし、何より行く義務があった。


「また出たぞ」


 それだけで十分だった。またあの死体だ。

 遺体の名は所持していた免許証から畑山怜美はたやまれみという女性である事が分かった。彼女の死体は発見時、狭い路地の上で何かに驚いたような顔をしたまま固まっていたらしい。


「例の指紋は?」

「ああ、今回もついているぞ」


 例の指紋とはもちろん死人の手の事だ。


「まったく、どうなってやがんだか。そっちはどうなんだ?」

「シンプルな繋がりを見つけた以外は何も」

「シンプルな繋がり?」

「前の二人の犠牲者は、どちらも新潟市内の出身でした」

「へえ。じゃあこのお嬢ちゃんも?」

「だとすれば、この繋がりは馬鹿に出来ないですね」


 免許証の住所は都内のものになっていた。だが彼女の年齢もまた26歳。新潟からこちらに出てきて住所変更をしている可能性は十分にあり得る。


「まあそこを突いていくしかねえわな」

「そうですね。ところで死体から何か分かる事はありますか?」

「そうだな。とりあえず三人の死体に同様に起きているであろう事は、何らかのきっかけで全身の筋肉が凄まじいスピードで固められたって事だな」

「筋肉が?」

「ああ。死後に筋肉が硬直したんじゃなく、筋肉が硬直して死んだって順番だ」

「筋肉の自由が奪われた結果、呼吸する筋力もなくなり、結果窒息死に至った」

「そんなとこだな。まあ、あり得ねえ死に方に変わりはねえが」

「うーん……」

「それが分かった所でって話だわな。で、後もう一つ」

「何です?」

「これを言うと余計混乱を招きそうな気はするが……」


 白鞘さんの声は歯切れが悪く、すぐに言葉は続かなかったが、やがてもう一つの結果について口を開いた。


「指紋の事なんだがな」

「はい」

「小せえんだよ」

「小さい?」

「ああ。今回の死体もそうなんだが、これまでの遺体も掌からべったりと触るような指紋じゃなく、五本の指先だけで触れたような指紋の残り方をしている。そしてその五本ともがな、どう考えても大人のサイズじゃねえんだ」

「子供の指って事ですか?」

「サイズなんてそれこそ人それぞれだからよ、一概にそうとは言えねえが、にしてもこれはちっせえわ」

「なるほど……」

「これが役に立つかどうかは分からねえが」

「いえ、必ず何かに繋がるはずです。ありがとうございます」

「すまねえな。まあ応援してるよ」


 また一つ新たな事実が現れた。

 小さな指紋。これが意味するものは、一体何なのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ