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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
三章 受け入れた世界
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鬼と生贄

「何して遊ぶー?」

「こおり、こおり。こおりやろうぜー」

「さんせー」


 グラウンドの木陰の下で談笑する面々。すでに俺は半分にやけている。

 “こおり”は好きだ。最近はよくこの遊びを皆でする。でも今日は、いつにも増してこおりが楽しみなのだ。


 俺はちらりと後ろをとぼとぼ歩くあいつを見やる。

 今回のこおりのメインイベント。

 駄目だ、また俺はにやけている。


「じゃあ、鬼決めようぜ。鬼」


 きっかけを投じるのが誰とは決まってはいない。

 開始の合図を鳴らすのは誰でも構わない。その日はたまたま俺が言い出した。でもこの時点で、何が始まるのかは全員が分かっている。

 ただ一人を除いて。


「ジャンケン、ジャンケン」


 男勝りなれみが、やんちゃな声を上げながら拳をぶんぶん降る。れみにならって皆が輪になる。


「まさ、お前に鬼は無理だから待ってろ」


 俺は冷たい声でまさを追い払う。だが誰もそれも咎めない。まさを鬼しないのは打ち合わせ通りだからだ。

 これから始まる事を想像すると思わず、勝手に頬があがった。見ればカネも同じように悪い顔をしている。


 ジャンケンの結果、鬼はえいちゃんに決まった。


「よーし始めるぞー」


 えいちゃんが俺らに背を向け、木に向かって顔を伏せ数を数えはじめる。


「いーち。にー。さーん」


 カウントが十になれば、えいちゃんが俺達を追いかけまわす。

 俺達は出来るだけえいちゃんから距離をとる。一緒に横を走っているカネが俺にまた悪い笑顔を向けた。


「しのぶ、お前やっていいよ」

「え、マジ? いいの?」

「その代り、しくじんなよ」


 ぽんと肩を叩いて、カネは俺から離れていった。


「しー。ごー。ろーく。しーち」


 ――よし。まかしとけ。


「はーち。きゅーう」


 こおりが始まる。

 触れたものを凍り漬けにする、こおりおに。

 えいちゃんに触れられたやつは、その場を動けなくなる。仲間が助けてくれるまで。


「じゅーう!」


 えいちゃんがぐるりと体を回し、俺達を見つめる。


 ――さあ、始まりだ。


 鬼がこちらに走り出した。


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