そのいち
猫のトイは、いつも眠っている。
いつもマイちゃんのベッドですやすや、すやすや。
でも、マイちゃんはそれを怒らない。
マイちゃんは、トイのことが大好きだからだ。
トイと言う名前は、マイちゃんのお父さんとお母さんがつけた。マイちゃんが初めてトイ(まだ名前はなかった)を見たとき、マイちゃんが
「オモチャみたい」
と言ったのを面白がって、トイと名付けたのだ。マイちゃんの家族はみんな、この名前を気に入っている。
その日は、マイちゃんの誕生日だった。
マイちゃんは、朝から家族みんなに誕生日おめでとうと言われて、夕ごはんの時にケーキとプレゼントが貰えることになっていた。
お母さんに、
「今日はマイちゃんはお客さんなのだから、夕ごはんの時間になるまで遊んでらっしゃい」
と言われたので、マイちゃんは部屋で大好きなトイと一緒にいることにした。
トイは、いつも通りマイちゃんのベッドの上で寝ていた。マイちゃんが呼んでも返事をしなかったけど、マイちゃんにはトイが一緒にいていいと言っているように感じた。それだけトイのまわりの空気が優しかったのだ。
マイちゃんはトイと一緒にベッドの上でゴロゴロしていたけれど、そのうちやっぱり眠くなって、すやすや、すやすや。トイの隣で寝てしまった。
マイちゃんの隣で、トイの髭がピクリ、と動いた。