特別補講 2
市町村紹介に戻ろう。
お茶ばかりだった中部の次は、いよいよ東部の登場。
この東部、さらに『狭義の東部』と『伊豆』とに分けることができる。これから紹介するのは前者。では、富士山と駿河湾に挟まれた風光明媚な東部地域を、早速探索してみよう。
富士市
静岡県東部、富士山の南に位置する工業都市。
面積245.02km2
人口253,870人。
静岡県第三の都市で、人口二〇万人以上の特例市。
製紙工業が主な産業として発展していて、富士山をバックに製紙工場の煙突が並ぶ光景は、なかなか印象的。トイレットペーパーの生産日本一。
農業としては、お茶や果物など。林業や漁業も盛ん。
近年、テレビ番組がきっかけで、『つけナポリタン』というB級グルメが誕生した。
2008年、富士川町を編入。
《出身有名人》渡部陽一(戦場カメラマン)、林哲司(作曲家)、川口能活(サッカー選手)、小林大悟(サッカー選手)
旧・富士川町
静岡県中部、庵原郡に位置していた町。
キウイフルーツが名物。
富士川は、その東西で電力の周波数が異なる。東側は東京電力の五〇Hz、西側は中部電力の六〇Hzである。
2010年、平成の大合併で山梨県に同名の町が誕生したが、すでにこちらの富士川町は富士市と合併した後だったので、大きな問題にはならなかった。
富士宮市
静岡県東部、富士山の『麓』に広がる観光都市。
面積388.99km2
人口131,995人。
古くは富士山本宮浅間大社の門前町として栄えた。現代でも、富士山の湧水や観光資源などで富士山の恩恵を受けている、名実共に『富士山の町』である。
最近はB―1グランプリ殿堂入りを果たした『富士宮やきそば』がとにかく有名で、B級グルメで町おこしに成功した代表例として広く認知されている。
ニジマスの養殖が盛んで、生産量日本一。
その他、富士の豊富な伏流水を利用した工業も行われている。
白糸の滝、朝霧高原、まかいの牧場、そして前述の浅間大社などの観光地がある。また、富士登山道の一つである富士の宮口が市の北部から出ている。
2010年、富士郡芝川町を編入。
《出身有名人》里見浩太朗(俳優)、秋吉久美子(女優)、澤登正朗(元サッカー選手)
旧・芝川町
静岡県東部、富士郡に存在した町。
タケノコ、梅、竹細工などの特産品がある。
町内は、柚野、芝富、内房、稲子の、四つの地域に分かれている。
沼津市
静岡県東部に位置する港町。
面積187.12km2
人口201,044人。
静岡東部の中心地で、人口二〇万人以上の特例市である。
漁業と水産加工業が盛ん。水産業だけなら、焼津市を抜いている。アジの干物は日本一(今では市ごとの統計自体が廃止されている)。南部の戸田地区で水揚げされるタカアシガニが有名。
農業としては、温州みかんとお茶が盛ん。
古くから東西の交通の要所であり、また、富士山や箱根といった観光地への移動も容易なことから、保養地として栄えた。皇室の沼津御用邸もあり、『海のある軽井沢』と称された。御用邸に向かう際に利用される(御成りになる)ことから名付けられた『御成橋』は、市のシンボルでもある。
産業、商業における静岡東部の拠点とされてきたが、最近は衰退気味で、人口も減少傾向にある。起きろ、沼津。
2005年、田方郡戸田村と合併。
《出身有名人》岩崎恭子(水泳選手)、小野伸二(サッカー選手)、室伏広治(ハンマー投げ選手)
旧・戸田村
静岡県東部、伊豆半島の付け根、田方郡に存在した村。
港町であり、前述の通り、タカアシガニが有名。タカアシガニを初めて食用で出したのが、戸田の旅館だと言われている。
戸田村で忘れてはいけないのが、『ヘダ号』だ。
日露和親条約のため、フリゲート「ディアナ号」で下田港に寄港していたロシアの海軍中将・エフィム・プチャーチンは、1854年(安政元年)、安政東海地震における津波の被害を受け、船は大破。その時、船の修復のために向かったのが、戸田港である。しかし、船は強風により沈没。地元の人々の熱心な救助により助けられる。プチャーチンは、その際の人々の献身的な態度に大いに感謝したという。条約締結後、日露合同での初の造船に着手。それで完成したのが『ヘダ号』である。戸田村では、ヘダ号と同じ『君沢形』と呼ばれる帆船を量産した。この出来事は、幕末における日本の造船技術に大いに貢献したと言われている。
長泉町
静岡県東部に位置する駿東郡の町。
面積26.51km2
人口41,203人。
産業は、主に工業。
南部は三島市との繋がりが強く、北部は裾野市と強く結びついている。『長泉なめり駅』は、裾野市南部の最寄り駅。
静岡県立静岡がんセンターの所在地。
清水町
静岡県東部に位置する駿東郡の町。
面積8.84km2
人口32,308人。
沼津、三島のベッドタウン。農業、工業が盛ん。
柿田川湧水群や千貫樋などの観光地がある。
《出身有名人》冨士眞奈美(女優)、神保悟志(俳優)、石川雄洋(野球選手)
裾野市
静岡県東部に位置する町。
面積138.17km2
人口54,214人。
名前通り、富士山の裾野に広がる町。工業、観光が主な産業。
富士『サファリ』パークの所在地でもある。
名産はイチゴとモロヘイヤ。
そのモロヘイヤの皮を練り込んで作った『すその水ギョーザ』をご当地B級グルメとして売り出している。裾野市民も浜松市民に負けず劣らずの餃子好きで、市民一万人辺りの餃子取り扱い店の数が、日本一の6.04軒というデータがある(宇都宮市は4.45軒)。名物がモロヘイヤで、餃子好き――すその水ギョーザが誕生したのは、ある種、必然と言えるのかもしれない。
御殿場市
静岡県東部、富士山の麓にある高原都市。
面積194.85km2
人口89,006人。
全体的に温暖な土地の多い静岡県の中では例外的な寒冷地で、冬は降雪量も多い。その一方で、夏は涼しく、避暑地としての側面も持ち合わせている。
高原ビール、金華ハム、水菜が名物。
陸上自衛隊の駐屯地、演習場、在日米軍海兵隊キャンプ地など、防衛関係の施設が多いことでも有名。
静岡市には望月姓が多く、浜松市には鈴木姓が多いが、この御殿場市では、何故か『かつまた』姓が多い。漢字も、『勝又』『勝俣』『勝亦』『勝間田』と、多岐に渡る。恐らく一番有名な勝俣姓であろう、タレントの勝俣州和も、御殿場の出身である。
2000年には、御殿場プレミアム・アウトレットがオープンし、大盛況となった。
富士登山駅伝に利用される富士登山道御殿場口がある。
《出身有名人》勝俣州和、トータルテンボス(お笑いコンビ)、堀内賢雄(声優)
小山町
静岡県の北東に位置する駿東郡の町。
面積136.13km2
人口20,483人。
農業は、豊富な湧水による稲作が中心。工業も盛ん。
富士スピードウェイの所在地。東部にある足柄山は、ご存知、金太郎こと坂田金時が生まれた土地として有名である。
《出身有名人》坂田金時、杉山祥子(バレーボール選手)
【苦痛列車】
再び小休止コラム。
くどいようだが、静岡県は東西に長い。だから、そこを東から西へ、西から東へ走り抜ける東海道は、本当に長い。当然、東海道新幹線も長い。県内だけで、新幹線の駅が六つもあるくらいだ。
ここでクイズ。
静岡県内に存在する東海道新幹線の駅を全て述べよ。
……簡単すぎただろうか。
答えは、西から浜松、掛川、静岡、新富士、三島、熱海である。
一つの新幹線路線でこれだけの駅があるのは国内広しと言えども、静岡くらいではないだろうか。
ただし、のぞみは止まらない。
ひかりも、半分ほどしか止まらない。
何故だ。
何故なんだ。
何故、県内に止まらないんだ。
のぞみに乗ったら最後、新横浜から名古屋までノンストップである。静岡か浜松か、どちらかに止まっても罰は当たらないと思うのだが……。ちなみに、在来線でも、県内では快速が存在しないため、一部の鉄道マニアの方々は非常に疲れる、らしい。
さて、富士山の恩恵を大いに受けた東部エリアの次は、いよいよ伊豆エリア。県内屈指の観光地へと馳せ参じよう。
三島市
静岡県東部、伊豆半島の付け根に位置する町。
面積62.13km2
人口111,640人。
三島大社や楽寿園で有名な、落ち着いた雰囲気の町。
『水のまち』として知られていて、富士の伏流水から成る湧水が、市内の各地から湧き出ている。
全国的にうなぎと言えば浜松だが、この三島市にも、うなぎ店は数多く存在する。前述の湧水に打たせ、うなぎ特有の臭みや余分な脂を落とすのである。
『みしまコロッケ』をB級グルメとして推している。箱根西麓でとれた三島馬鈴薯を使用する、というのがその定義で、三島馬鈴薯さえ使っていれば、どんな形状でも、他にどんな具材が入っていても構わない。それ故にバリエーションが非常に多い。
また、2010年には、野生の猿が大暴れして全国ニュースにもなった。『ラッキー』という皮肉な命名をされ、楽寿園に収容されたが、年をまたいで脱走騒ぎを巻き起こしている……。
文豪・三島由紀夫のペンネームの由来になったという説がある。
《出身有名人》神崎京介(作家)、高原直泰(サッカー選手)、長山藍子(女優)
函南町
静岡県東部に位置する田方郡の町。
面積65.13km2
人口38,427人。
町名は『箱根(函嶺)の南』の意。神奈川県の県境があり、函根町、湯河原町と接している。
お茶やみかん、工業、漁業が目立つ県内において、丹那地区は珍しく酪農が盛んな土地であり、『丹那牛乳』が有名。県内全体はもちろん、今では関東圏内でも流通している。
また、スイカの名産地でもある。
《出身有名人》内田篤人(サッカー選手)
熱海市
静岡県東部に位置する温泉街。
面積61.61km2
人口39,283人。
温泉である。熱海温泉である。場所自体が丘陵地帯のこともあり、第三次産業の割合が八割を越える。ああ、温泉街。
神奈川との交流が深く、接している湯河原町とは交流が多い。平成の大合併では、県を跨いだ越境合併が検討された(実現はしなかったが……)。
『金色夜叉』の舞台としても有名。
B級グルメとして、『イカメンチ』がある。
伊豆市
静岡県東部、伊豆半島の中央に位置する自治体。
面積363.97km2
人口33,732人。
2004年、田方郡修善寺町・天城湯ヶ島町・土肥町・中伊豆町の新設合併によって誕生した。『伊豆』という名前は半島、地域、及び旧国名を示すモノで、決してこの町だけを指す訳ではない。新市誕生の際、『伊豆市』と命名するにあたって、周辺の自治体から軒並み反対されたが、それを押し切る形で名付けられた。
四つの自治体が合併しただけあって、面積は伊豆地域では一番、県内全体でもトップクラスだが、山林が多く、可住地面積が狭いため、人口はさほど多くない。
ワサビ農園や漁業も盛んだが、メイン産業はやはり観光である。温泉や景勝地に恵まれ、文豪たち所縁の地も多い。『伊豆の踊子』の他、多くの小説、映画などの舞台にもなった。
詳しくは、旧自治体の紹介にて。
旧・修善寺町
静岡県東部、伊豆半島の中央の田方郡に存在した町。
現在の伊豆市北部。
修善寺温泉や、その中心にある、曹洞宗の寺院である修善寺で有名。夏目漱石『修善寺の大患』や、岡本綺堂『修善寺物語』などでも知られている。
《出身有名人》市毛良枝(女優)、つまみ枝豆(たけし軍団)
旧・天城湯ヶ島町
静岡県東部、伊豆半島の中央に存在した町。
現在の伊豆市中部。
かの天城山があり、ワサビ栽培などが盛ん。
わさび沢、隠れ径、九十九折り、浄蓮の滝――。
石川さゆりの代表作『天城越え』が何と行っても有名。
同様に、松本清張の『天城越え』も有名であり、さらには、かの『伊豆の踊子』の舞台となったことでも知られている。
《出身有名人》井上靖(作家)、研ナオコ(歌手)、ガダルカナル・タカ(たけし軍団)
旧・土肥町
静岡県東部、伊豆半島の中央に存在した町。
現在の伊豆市西部。
駿河湾に面していて、漁業が盛ん。
『恋人岬』が有名で、カップルの観光客で賑わっている。
かつては金山もあり、佐渡金山に次ぐ産出量を誇っていた。現在では、鉱山跡が観光地となっており、砂金採り体験ができる。
旧・中伊豆町
静岡県東部、伊豆半島の中央に存在した町。
現在の伊豆市東部。
山間の町で、隣の伊東市とまたがって伊豆高原が位置する。
農作物としては、ワサビやシイタケなど。
《出身有名人》中村光(漫画家)
伊豆の国市
静岡県東部、伊豆半島北部に位置する町。
面積94.71km2
人口49,086人。
2005年、韮山町、伊豆長岡町、大仁町の新設合併により誕生。
市の木は、梛。梛の葉は横に割けにくいという特徴があり、源頼朝・北条政子の恋愛話に関する言い伝えも残っている。
観光地や特産に関しては、旧自治体紹介にて。
旧・韮山町
静岡県東部、伊豆半島北部に存在した町。
現在の伊豆の国市北部。
北条政子出生の地。源頼朝の流刑地として有名な蛭ヶ小島があることでも知られている。前述の二人に所縁の深い土地で、同じく所縁の深い梛の木が、町内の寺社に多く生育されている。他には、韮山反射炉などの観光地もある。
《出身有名人》北条政子
旧・伊豆長岡町
静岡県東部、伊豆半島北部に存在した町。
現在の伊豆の国市西部。
町の花は『アヤメ』。
頼朝も入浴したと言われる、伊豆長岡温泉がある。
旧・大仁町
静岡県東部、伊豆半島北部に存在した町。
現在の伊豆の国市南部。
『田中村』が1940年に町政施行し、名称変更して誕生した。
大仁温泉や、奈古谷温泉、伊豆洋らんパークなどの観光地がある。
伊東市
静岡県東部、伊豆半島の東部に位置する町。
面積124.13km2
人口70,981人。
漁業や温泉地として有名。『伊東に行くならハトヤ』のCMソングでお馴染みのハトヤホテルがある。
B級グルメとして『ちんちん揚げ』がある。豊富な海の幸と野菜を練り、油で揚げた郷土料理で、名称は油に入れた時の音に由来している。セクハラ的な意味はない。
《出身有名人》森田実(政治評論家)、志茂田景樹(作家)
東伊豆町
静岡県東部、伊豆半島の東部に位置する町。
面積77.83km2
人口13,872人。
天城山の東麓にあり、山林が多い。相模湾沿いも崖が多い。
『稲取地区』が町の中心。
温泉産業がメインで、熱川バナナワニ園などの観光地がある。
B級グルメは、『肉チャーハン』や『げんなり寿司』など。
河津町
静岡県東部、伊豆半島の東部に位置する町。
面積100.79km2
人口7,919人。
早咲きの『河津桜』が有名。
やはり温泉産業が盛んで、河津七滝などの観光地がある。
西伊豆町
静岡県東部、伊豆半島の西部に位置する町。
面積105.52km2
人口9,264人。
漁業の他、温泉や海水浴場などの観光業が盛ん。
堂ヶ島や黄金崎などの観光地があり、また、駿河湾に沈む夕陽が美しく、『夕陽のまち』としても知られている。
2005年、賀茂村と新設合併し、新・西伊豆町が誕生した。
旧・賀茂村
静岡県東部、伊豆半島の西部に存在した村。
静岡にかつて存在した村、最後の刺客。
産業としては漁業と観光がメイン。
1956年、『 安良里村』と宇久須村が合併して誕生した。
松崎町
静岡県東部、伊豆半島の西部に位置する町。
面積85.23km2
人口7,521人。
温泉や海水浴場、なまこ壁造りの建物などの観光業が盛ん。また、桜餅に使われる『桜葉』の塩漬けが有名で、国内シェア七割を誇る。
南伊豆町
静岡県東部、伊豆半島の最南部に位置する町。
面積110.59km2
人口9,376人。
産業としては、漁業、農業のほか、下賀茂温泉や弓ヶ浜温泉といった温泉や、弓ヶ浜海水浴場といった観光業が中心。『石廊埼灯台』などの景勝地がある。
下田市
静岡県東部、伊豆半島の南部に位置する港町。
面積104.70km2
人口24,714人。
古くから『港』町として栄え、幕末にはアメリカ、ロシアなどの諸外国の船が来港し、開国の舞台となった。近代日本史の要地である。
メイン産業は、温泉や海水浴場などの観光で、数々の小説、映画の舞台となっている。
漁港も多く、須崎には『いけんだ煮みそ』、白浜には『さんま寿し』といった郷土料理が存在する。
《出身有名人》鈴木由美子(漫画家)、栗原はるみ(料理研究家)
――以上である。
勘のいい方はリンク先などで察しがついているだろうが――実は、もう少しだけ続くのである。
ここまでは、あくまで静岡県内の紹介だった。
ここからは、静岡を取り巻く県の紹介に移ろうと思う。
静岡を語るのなら、内部だけの言及に終始していたのではいけないのである。接する県の個性を捉え、関わり方を見ることで、分かることもあるのだ。
接しているのは、愛知、神奈川、山梨、長野の四県。
遠州地方は愛知県と仲が良く、伊豆地方は神奈川県と仲が良い。富士山を共有する山梨県とは、富士山を巡ってライバル関係にある。長野県とも接しているが――山に遮られているために、その関係は微妙である。友人と言うより、知人と言うべきか。 では、各々の県の特性を見ていこう。静岡と同様、各県の市町村紹介も行うが、さすがにそこは大幅に割愛させてもらう。




