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第五章・W

十月二十一日(金)午後一時二〇分

一年一組教室外


 ――思い出す光景がある。


 林間学校でのことである。

 カオスな花火を終えた後、一同は三々五々に散らばって、それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。

 サイコはと言えば、ミカ、テン、そしてマイとユートというお馴染みのメンバーで宿舎裏の山道を散策していた。目的などない。ただ、気の知れた面子と意味もなく、だらだらと過ごすだけで、充分に楽しめたのだ――その時は。

 二つの人影を発見したのは、広場から宿舎の真裏に到達した時だった。大きなキンモクセイの木の下で、二つの人影が見つめ合うようにして立っている。

 キンモクセイ――十組の教室の外にあるのと、同じ樹だ。

 生憎と、流れてきた雲が月光を邪魔して、人影が誰なのか特定することはできない。何を話しているのか、会話を聞き取ることもできない。恐らく、向こうもサイコたちのことなど気付いていないのだろう。

 にわかに、前を歩いていたミカが色めき出す。何でも、林間学校の間に告白すると、その恋は成就するのだとか、何とか――そんな噂が、ウチの学校では流布しているらしい。女子高生が好みそうな話である。もちろん、視線の先の二人がそうだとは限らない。林間学校の最終日の夜、人目につかない大きなキンモクセイの下で、愛の告白をしているだなんて――そんな場面を思い描くほど、サイコは少女趣味ではない。

 ……それにしても、あの二人は誰なんだろう?

 暗すぎて分からない。せめて街灯でもあれば、誰なのか判断することもできるのだけど……林間学校に使う山の中、街灯はおろか、天候のせいで月の光すら望めない。

 と、その時。 

 今まで二つだった影が――一つに、重なった。

 ――二つが、一つに。

 ミカがキャイキャイ騒いでいる。隣からは、テンがごくりと唾を飲む音が聞こえてくる。マイとユートが無言なのは、唖然としているからだろう。サイコもどうリアクションしていいか分からず、ただ固まって、その様子を眺めていた。

 タイミングよく、雲が移動し、月が顔を出す。

 キンモクセイの二人を、仄明るく照らす。

 そこにいたのは――。


 ふるふると首を振り、回想を強制終了した。

 この一ヶ月というもの、回想に耽ってばかりだ。ずっと、後ろばかり見ている。過去に、囚われている。

 過去に囚われている――か。

 それはきっと、十組全員に共通していることだ。皆、過去に囚われ、亡きモノに縛られ、身動きが取れなくなっている。

 ……いや、違うか。『過去』などでは、ないのだろうか。彼らにとって、それは紛れもない『現在』にすぎなくて――サイコは、それらを『過去』だと捉えてしまうから、苦しくなるのだろうか。

「…………」

 一度、顔をカクンと落とし――その反動で、力強く顔を上げる。

 ――やめた!

 わざと勢いよく立ち上がり、大きく息を吐く。

 呼気は白い大きな塊となって宙に浮き、数瞬と置かずに霧散していく。動くたびに、凍てつく大気が肌を刺す。サイコは軽く身震いをして、歩き始める。

 やいやい――。

 全く、我ながら、何をいつまでウジウジしているのだろう。

 サエの提案で、全ては文化祭が終わるまで先延ばしにされたのだ。もう、SRSの――と言うかサエの――追及に怯えることもない。マサやハルカの一言一句に恐れることもない。疑心暗鬼に陥ることなど、ない筈なのだ。全ては、文化祭の終了まで持ち越された筈。少なくとも、今は『今』に専念すべきだ。

 今日は、文化祭二日目。

 初日は不慣れなこともあって、ハルカが店長を勤める餃子屋台はてんてこ舞いだった。余裕が持てるようになったのは二日目になってからだ。交代制にして、こうして自由行動も取れるようになったのだが……。

 やいやい――。

 サイコは自嘲気味に苦笑する。一緒に行動する人間がいないことに、だ。一番親しいハルカとは、自由時間をとる時間がずれている。マコイやホウタ、トシヒロなどのグループメンバーは、二人きりで遊ぶほどには親しくない。かと言って、マサを誘う訳にもいかない。向こうは向こうで忙しいだろうし、それより何より――やはり、気まずい。彼とは四日前の女神像ホールでの一件以来、顔を合わせていない。多分、この一件が終わるまでは、以前のような付き合いをすることはできないのだと思う。少し淋しいけど、仕方がない。

 サイコは十組の人間で、マサは九組の人間なのだから。

 ……かくして、サイコは一人で遊ぶ羽目になるのである。別段、一人は苦ではないので構わないのだけど……。

 しかし、本当に寒い。さっきから躰の震えが止まらなくなっている。十月半ばでこの気温はないだろう。衣替えの前だから、半袖だし――奥歯を鳴らしながら、サイコは二の腕をさする。自然、歩みが速くなる。

挿絵(By みてみん)

 ここは北校舎の外――敷地の端の端である。ちなみに、北校舎には一年一組の教室があるだけである。建物が小さいのではない。一年一組の教室が馬鹿デカいのだ。馬鹿みたいに大きな教室に、百八十人もの生徒が在籍しているのだとか。色々と、意味が分からない。もちろん、それはサイコには関係のない話なのだけど。

 そんなことはどうでもいい。

 普段滅多に来ない場所だからと、無理して足を伸ばしてみたのだけど――とにかく、寒すぎる。このままでは凍死確実だ。そこここに、焼きトウモロコシやじゃがバターなどの屋台が開かれているのだが、その全てをサイコは素通りする。せっかくの屋台なのに、こんな極寒の屋外で営業する意味が分からない。何か、試されている気分になる。

 北校舎の外壁を辿って歩くこと数分――ようやく、東校舎との渡り廊下に行き着く。東校舎はこの学校で一番大きな建物で、Lの字を九十度左に傾けたような形になっている。縦棒の部分には一年二組から七組の教室が、直角部分には三年一組から六組、及び特進学級の教室が、そして横棒の部分には二年一組から十組までの教室が収められている。とにかく巨大な建物なので、外壁を辿るだけでかなりの時間を浪費しなくてはならない。寒さに耐えられないので、さっさと東校舎に入ってしまおうかとも思ったのだが――前方からやってくる巨大な何かを目にして、思わずそちらに足を運んでしまう。近くまで近付いて、それが何か分かった。

 山車(だし)だ。上には、武者を模した巨大な張りぼてが乗っている。

 何だろう、これは。物凄い迫力だ。サイコはしばし呆然として、その張りぼて山車を見送る。恐らくは一年二組の出し物なのだろうけど――ううん、こんな代物を出してくるなんて。東校舎の一年生は、なかなかに気合いが入っているらしい。

 少し歩くと、今度は蕎麦の屋台が見えてくる。しかし、ただの蕎麦ではない。注文した人間は空のお椀を持たされ、それに次から次から、横についた人間が少量の蕎麦を放り込んでいくのだ。食べても食べてもきりがない。新手の拷問だろうか……。

 その後ろでは海女の格好をした女子生徒がアイドルよろしくミニライブを行っている。何で海女がアイドルなのかとか、そういうことを突っ込んではいけないのだろう。

 蕎麦の屋台を通り過ぎると、今度は奇妙な集団の登場だ。鬼――なのだろうか? 真っ赤な顔に出刃包丁、(みの)を全身にまとった異形の集団が、練り歩いている。何やら叫んでいるが、声がこもっているせいか、聞きづらい。よくよく耳をすませば、どうやら泣いている子供はいないかと、探して回っているらしい。いやいやいや。泣かせる気マンマンだろう。幼少期に出逢ったら、トラウマになるレベルだ。

 鬼の集団をやり過ごすと、今巨大な鍋を薪で焚いている光景に出くわす。近付き、覗き込んでみる。どうやら豚汁を作っているらしい。ただし、メインは里芋らしく、その隙間を埋めるように、多くの野菜やキノコ、豚肉が投入されている。それを、みんなで分配して食べているのだ。何とも牧歌的な風景である。サイコもご相伴にあずかろうかと思ったが、それよりも先を急ぐことが先決だと思い、泣く泣く素通りする。ううん。屋内でやっていたなら、確実に足を止めていたのに。

 その次は、また食べ物屋台だ。牛タンや緑色の餅などを売っている。それ自体も惹かれるのだけど――サイコの目を引いたのは、屋台の飾り付けである。短冊や吹き流しなどが、カラフルに飾られているのだ。季節外れの七夕だろうか。飾り付けの意味はともかくとして、とにかく派手で豪華で、見ているだけで楽しくなってくる。担当は一年六組だろうか。あのクラスには校内の有名人であるミヤコが委員長だった筈だ。真面目で粘り強い個性ばかりが目立つ東校舎一年の中では珍しく、派手好きで目立ちたがり屋という希有な人材である。きっと、この飾り付けも彼女の発案に違いない。

 そろそろ三年エリアに辿り着こうかというところで、ラーメンの屋台を見かける。太めの平打ち縮れ麺を使った、素朴な感じの醤油ラーメンだ。順番的に、ここは一年七組のコーナーだろうか。校内に『ラーメン同好会』を作るほどのラーメン通らしいのだが、彼らの真面目で実直な人柄が、作るラーメンに表れている気がする。


 寒さのあまり急ぎ足で通り過ぎてしまったが――このエリアは、ただただ凄い、の一言に尽きる。真面目で粘り強い個性というのは、こういう形で表れるものなのだろうか。

 彼らなら、きっと。

 どんなことがあっても、乗り越えていけるような気がする。

 それだけの、強さがある。

 サイコなどが偉そうに言うことでもないのだけど――と言うか、何故そんなことを急に思いついたのかも分からないのだけど――とにかく、そう思ったのだ。


 東校舎一年の実力に嘆息しつつも、サイコは歩みを進める。

 しばらくして、ようやく裏口へと到達し、慌てて東校舎内へと飛び込む。暖房が効いている訳でもないけど、少なくとも屋外よりはマシだ。手に息を吹きかけ、さすり合わせながら、下がった体温回復に努める。慌てて飛び込んだので見ていなかったが、この辺りはすでに三年生のエリアになっているらしい。入ってきた裏口から左手に曲がると三年六組で、その奥が特進学級、更にその奥がミライのいる三年五組になる。イズミの恋人も三年五組の生徒ではなかっただろうか。名前は失念してしまったが――落ち着いた雰囲気の、大人びた印象の少女だったことは覚えている。どういう巡り合わせなのかは知らないが、向こうは向こうで十組の秘密を知ろうとしている。極力近寄らない方がいいだろう。

 右に曲がり、三年三組の方から迂回するルートを選択する。


三組の先は、三年二組――ハルカグループと同じく、餃子屋を出し物としているクラスである。店舗となっている教室の入り口には、何やら奇妙なオブジェが鎮座している。石膏でできた巨大な餃子――なのだろうか? 店の看板らしいが、どうにも奇妙な印象が拭えない。さらに、その横では、何故か猿の着ぐるみを着た人間が客寄せを行っている。着ぐるみ自体は可愛らしく、子供受けもいいようだが――何故、猿なのだろう? なんだか不思議なクラスである。

 呆気にとられるサイコの横を通り、着ぐるみに近付く人物がいる。

確か、彼こそが三年二組の委員長、オツだった筈だ。

「テル、店の方はどんな感じだべや」

 着ぐるみの少年はテルと言うらしい。

「いやぁ……店は繁盛してっけどよぉ……正直、こわいわ……。少し着ぐるみ脱いでていいかい?」

 周囲に人がいないのを確認して、着ぐるみの頭部を外すテル。中から、厳めしい顔付きをした少年が顔を出す。

「猿の着ぐるみ着て客寄せするっつったの、オメーだんべや。ごじゃっぺゆってねえで、自分の責任果たせや。もちっとしたら休憩になっからよ」

「オメーは気合い入ってんなぁ……。そんな頑張らんでも、だいじだんべや。餃子つったらウチのクラスなんだからよ」

「でれすけ。それがごじゃっぺだっつてんべや。二年十組も餃子屋やるって話、散々したでねえか。もし二年に負けてみろ。俺らの面子丸つぶれだべ。他のことならともかく、餃子で他のクラスに負ける訳にはいかねえんだからよ」

 店の前で何やら言い合っている。

 ……これは気まずい。できるだけそちらを見ないようにと、顔を背けながら店の前を通り過ぎる。幸か不幸か、サイコは地味な存在なので、仮に顔を見られたところで、二年十組の生徒だと気付かれる危険性は皆無なのだけど。


 しかし、歩く時はやはり前方に気をつけるべきだった。不自然に顔を背けていたせいで、正面から人が歩いてくるのに気付かず、まともにぶつかってしまう。

「おっと」

 その衝撃で、抱えていた紙袋を落としてしまったらしい。紙袋が大きすぎて、向こうも視界が悪かったのだ。ゴトゴトと音を立てて、中身が転がっていく。

「あやや……いかんちや」

 慌ててそれを拾い集めている。多分、同学年なのだろうけど……随分とワイルドな雰囲気の男である。シャツの前部分は大きくはだけ、肌は真っ黒に日に焼けている。無造作に伸ばされた髪はゴワゴワとしていて、その下から覗く双眸は、ギラギラとエネルギッシュに輝いている。

 紙袋から転がったのは、いくつもの大瓶だった。サイコの所まで転がってきたので、一つ拾い上げてみる。

「悪い悪い。アンタ、怪我ないか」

「あ、いや、大丈夫ですけど……」

 それよりも、サイコは今見た瓶のラベルに驚いていた。

『清酒 八海山』

 ――酒だ。

 よく見れば、男が拾い上げたのは、全て清酒の瓶ではないか。

 ここは学校である。それも、文化祭開催中の。しかも、目の前の男はどう見ても高校生だ。

 あまりにもあまりなこの状況に、サイコは激しく混乱してしまう。

 そんなサイコの様子に気が付いたのか、男は一瞬だけ決まり悪そうな顔をする。その一瞬後には、豪快に笑い出していたのだが。

「驚かせちまったかや。いやいや、毎年の恒例での。特定のクラスで裏メニュー扱っちゅう話なんじゃ。ま、見ての通り、酒なんやけどな。オレらは学校側の押しつけるモンに従うつもりなん、毛頭ないき。オレらはオレらの文化祭を楽しむちゅうことじゃ」

 ――今宵は酒盛りぜよ。

 豪快な捨て台詞を残して、酒瓶を抱えた男は去っていく。

 今聞いたこと、見たことは全力で忘れよう。

 酒も裏メニューも、あの不思議な男も、今や記憶の彼方。危なげなことには関わらないに越したことはない。


 三年一組の教室を通り過ぎると、廊下を挟んで二年四組の教室が見えてくる。扉には『2―4 米処』と看板が下がっている。どうやら、ここは白飯を食べさせる店らしい。サイコも米は大好きだ。

 その時、廊下の隅に妙な人物がうずくまっているのが見えた。

 アオイやハルカ程ではないが、かなり大柄な人物である。躰自体が大きいのに、背中にもまた、大きな箱を背負っている。よく見ると、うずくまっているのではなく、小さな子供をあやしているところのようだった。背負った箱から竹とんぼや紙風船などの昭和のおもちゃを取り出し、まだ三歳にも満たないであろう幼児を楽しませている。それ自体は微笑ましい光景なのだけれど――この人物は、何なのだろう。客寄せのつもりだろうか。それにしてはクラス名や出し物を示すモノがない――などと考えながら後ろを通り抜けようとして、サイコは思わず声に出して驚いてしまう。


『2―7 フルーツパーラー MUZIN』


 背負われた箱の表面に、大きくそう書かれていたからだ。

「な、七組!?」

 サイコの声に驚いたのだろう。子供の相手をしていた人物はびくりと反応して振り返る。団栗眼(どんぐりまなこ)に太い眉の、愛嬌のある顔立ちをした男だった。やはり、見覚えがない。あまり七組とは馴染みのないサイコだが、こんなインパクトのある人間が隣のクラスにいたら、さすがに印象に残っている筈だが……。

「……いくそったっちゃ。急に大きな声出されんな」

 サイコが騒いだせいか、子供もトコトコとどこかに行ってしまう。男はそれを目で追いながら、

「どうかしたが?」

「え、いや、あの、七組って書いてるから……」

 サイコのしどろもどろの物言いで、ある程度察してくれたらしい。男は背中を気にしながら、合点がいったような顔をする。

「ああ、行李(こうり)のこれけ? 七組のジュリに頼まれたっちゃ。『そっちの商品置いてやるから、こっちの広告塔になって』なんて取り引き持ちかけられて――俺が校内の色んなトコ廻ってるの知っとったがいね。別にこっちもつまらんで、言われるままに条件呑んだがやけど……ほとんど面識もないのに、強引な奴っちゃ」

 真面目で実直そうな見た目とは裏腹に、よく喋る男だ。さっき子供をあやしていたところを見ても、相当に社交的な性格をしているらしい。

「じゃあ、七組じゃなくて?」

「違う違う。俺は三組うぇ。三組で委員長しとる、ソウガちゅうもんちゃ」

 言いながら、ソウガは立ち上がる。やはり、相当に大きい。

「三組って……えっと、何やってるだっけ……」

「薬売りちゃ。商品をこの行李に入れて、校内をぐるぐる廻って売り歩いとるがや」

「え、薬って――」

 確か、医薬品の販売には許可がいるのではないだろうか?

「ああ、もちろん、普通の売薬とは違うちゃ。薬事法に触れるうぇ。俺らが取り扱っとるのは、独自に調合した健康ジュースの類っちゃ。あ、アンタも一杯飲もまいけ。元気出るっちゃ」

 言うが早いか、そそくさと健康ジュースを取り出すソウガ。五百ミリのペットボトルである。中に詰められたジュースは濃い緑色をしている。

「ほら、騙されたと思って。いつもは二百円貰うがやけど、今回は特別に百円でいいうぇ」

「え、あの……」

 サイコが曖昧な態度をとっていると、グイグイ売り込んでくる。最近、押しの強い人間の相手ばかりだ。

「すみません。間に合ってるんで!」

 訳の分からない弁解をして、サイコはその場を逃げるようにして立ち去ったのだった。


 逃げてきたはいいが、結局、来た道を戻ってきてしまった。目の前は二年四組。ここを右に曲がると、その先は七組の教室だ。

 ――行ってみようか。

 さっきのソウガの話を聞いて、好奇心が刺激された。七組は十組の隣のクラスだが、六組や九組、三年五組と違って、今回の一件にはノータッチの筈だ。特に忌避する理由もない。それより何より、サイコはフルーツが大好きなのだ。一番はダントツでみかんだが、たまにはブドウや桃を楽しむのもいいだろう。

 そう思って、七組の教室の前に立つ。


『2―7 フルーツパーラー MUZIN』


 さっきソウガが担いでいた箱に書かれていたのと同じ文字が、扉に派手なフォントで描かれている。割と奥まった場所にあるにも関わらず、人の出入りは多い。割合盛況なようだ。

 恐る恐る教室を覗いてみて――サイコは、その場に固まった。

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