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山上建設

 山上建設の社長はいかにも土建屋というタイプ、見た目は中肉中背だが

 座るとおなかがでぽっこり出ているのがよくわかる、正面に座っている

 面接に来たてんをじとっとと見つめる

「いやーまさか、女子校生が面接に来るとはねー」

 と制服姿のてんをめずらしそうに見つめる

「こんな…おれが…本物の女子高生と話ができるなんて…仕事が一緒に

できるとは…社長やって…よかったー」

 考え深げにつぶやき、テンションマックスで叫ぶ、目にはうっすら

 涙が浮かんでいる、叫んだ後、下をむいて汚れた作業着のそでで涙をぬぐう

 その様子を見ていたてんが立ち上がりよしよしという風に社長の頭をなでる

「いや…すまねぇ、取り乱してしまって…」

 社長が落ち着きを取り戻しわれに返る

「あの、じゃあ、わたし、採用ですか?」

「もちろーん、明日からでも来てくれたまえ、なーに、仕事は簡単だ

 その日の業績をちょいちょいと計算してくれればいい、それと…だ」

 社長が大切な話をするようにてんの顔に近づける

「もうじき、うちの従業員が現場から帰ってくる、むさくるしいやつらだ、

そいつらにねぎらいのことばをかけてくれ」

「はーい、わっかりましたー」

 そこへタイミングよくむさくるしいやつらが帰ってくる、汚れた作業着姿

 顔はいかつい系が主、疲れきっているようにみえるが血の気は多そうな連中

「あ!おつかれさまでございまーす」

 てんが明るくあいさつするとむさいやつらがひるみ、後ずさる

「え?女子校生?」

「本物?」

「な…なんで、マジ?」

「いやー諸君、おつかれ、紹介しよう、こんどアルバイトで来ることになった

的場てんくんだー、みんなよろしく頼むー」

 うろたえる連中に構わず社長がてんを紹介する

「「ほ…本物の女子高生ですか?」

「ああ、本物だ、てか偽物の女子高生っているのか?」

「女子校生なんてこんな近くで初めて見たー!」

「だろ! だろ! なんか仕事する元気が出てくるだろー」

「はい!」

 みんなが声をそろえていい返事をする、みんな笑顔、顔に活気が戻った表情

 中には小さくガッツポーズをするやつもいる、その時

(てめーいいかげんにしろ!)

(いや…だから…私のせいじゃないですって)

 ドアの外から二人の男の言い合う声が、そして2人が入ってくる怒鳴っているの は20歳前後の若い作業員、怒鳴られて小さく言い返しているのがかなり年配

 の作業員

「おまえが発注の数をまちがえたんだろうが!」

「いや…だから…わたしはあなたが言った通りやったわけで…」

「じゃあ、おれがまちがえたって言うのか!ふざけんな!」

(バシッ!)

 ついに若い作業員が年配の顔を殴る、そばにあったいすをなぎ倒し

 年配がはでに倒れる

「やめねぇか、てめえら、せっかくの女子高生が怖がっちゃうだろ!」

 社長とほかの作業員が止めに入る

「しかし…このおじさん、発注数まちがえたんですよ、50の所を500も頼

んじゃって…」

「ああ…もういい、話はあとで聞く、とにかく、おじさん、大丈夫か?」

 おじさんと呼ばれた作業員が顔をおさえて立ち上がる、鼻から鼻血を出し

 ている、そしてだまって外に出て行った

「いやー、変なとこ、見せちゃったね、怖かっただろ? もうこないなんて言わな

いよねー?」

 社長が困り声でてんに尋ねる

「ううん、なんともないよ、それよりおじさんの様子見てくる」

 と外へ駆け出して行った

「優しいなーてんちゃんは」

 社長がしみじみつぶやくと、むさいやつらからも(あ、いいなぁ…)と

 いう声がもれた

 てんが外に行くとおじさんが鼻血で汚れた顔を洗っていた、殴られた頬が

 赤くはれている

「大丈夫?おじさんーん」

「ああ…大丈夫…だよ」

 顔を洗い終えたおじさんがてんに気づきふりかえる

「赤くなったとこ冷やしたほうがいいよ、あと、病院に行った方がいいな、頬骨

ほほの骨折れやすいから」

 とてんがそばにあったタオルを持っておじさんの顔を拭こうとする

「ああ、いいよいいよ、自分でするから、制服がよごれちゃうといけないから」

 おじさんがタオルを取る、顔をふいててんを見つめる

「あれ?その制服…うちの息子とおなじ高校だな」

「え?おじさんの息子さん?何年生?」

「1年生」

「ああ、じゃあ、知らないや、あたし2年だし」

「「そうか…末広だいすけっていうんだけどなバスケやってるんだけど…な」

「バスケ部なんだ」

「ああ、わたしにはもったいないくらいのいい息子だよ」

 おじさんが初めてにっこりほほ笑んだ


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