バスケ部の末広くん
「ボール回せー!」「サイドがら空き! パスパス!」
「よーし、あがれ、広がって行けー!」
「行けーシュート!」
機敏な動き、軽快なステップ、手に吸い付くようにボールがドリブルする、
そして…シュート
ゴールが壊れるようなパワーのダンクシュート、ボードのはねかえりを利用した 巧みなシュートがさく裂する
(…す…すんげえ~)
末広だいすけはあっけにとられ、このプレイを見ていた
まだ一年生、練習には参加できない、見学の身分
中学のころは少しは名の知れた選手、それなりの自信はあったが…
(やっぱレギュラー、先輩たち…すごい!)
そこへコートからボールが飛んでくる
「おい! 1年! ボール!」
「あ…は…はい」
あわててボールを拾いコートに返す、そしてまた華麗なプレイが再開する
やがて…
(ピーッ!)
長いホイッスルが練習の終わりを告げた
練習後、数人の1年生と一緒にコートを掃除する
コートにモップをかけながらさっきの先輩たちのプレイを思い返す
(おれも、いつかは…あんなふうに…)
ぼんやりモップを走らせていると…(ゴツン)
誰かの足にぶつかった
「イテ!」
その足の持ち主がよろけながらうめく
「にゃにやってんだぁ~1年!」
よろけた男と一緒に歩いていた背の高い男がどなる
背は高い、でもバスケはできそうにない、しゃべりかたも変、ろれ
「気いつけろ、バカヤロ!」
もう1人、そばにいた男も加わってくる
こっちは背は低い、めがね、バスケというタイプではない、バスケアニメに
影響されて入部したタイプ
「す…すいません!」
いちおう先輩なのであやまる
足にモップをぶつけられた男はなにもいわない、じっとこっちを見ていたが
にやっと笑い、大丈夫という風に軽く片手を上げただけ
なにも言わず更衣室の方へ歩いて行った、怒鳴った2人もこっちをにらみ
後ろをついて行く
「すいませんでした!おつかれさまでしたー」
3人の背中に向かってもう一度、念のためあやまる、すると…
3人が立ち止まる、背の高いのとめがねがふりむく、顔が怒りの表情
「おまゃえ、いまなんつぅったぁ~」「おつかれさまだと」
背の高いのがすごい形相でやってきて胸ぐらをつかむ
「皮肉か?てめー!」
「おれたちが補欠で見学しかしてないのを知って、おつかれさまだぁ?疲れてる
わけねぇだろが!」
めがねも詰め寄りわめく
「す…すいません」
(あやまってもだめっぽい…だめだ…殴られる)
その時…
「おい、やめろ、やめろって」
後ろで見ていたモップでつまずいた男が止めに入った
(たしか…神原先輩)
レギュラーではないが常にベンチ入りしている先輩、ほかの2人とは違う実力
者
神原に言われると2人とも静まる、怒りを抑えた
「わりいな、こいつらちょっといらついてて、ま、許してやってくれ」
神原先輩がちかづいてきて方に手を回しほほ笑んだ
「いえ…そんな…すいません…」
「明日も朝練だ、早く掃除済ませてあがれ…な」
ポンと肩をたたく、そして笑顔でそばの2人に目配せをして歩き出す、でかい
のとメガネもしぶしぶ後ろをついて帰って行った
(た…助かった)
掃除を終えると外はすっかり真っ暗になっていた、ほかの1年はもう帰って
いて最後になる
着替えて体育館を出ようと下駄箱に向かう
「あれ?」
靴が見当たらない、あたりをさがす…ない?
(どうしよう…バスケのシューズで帰ろうか…でも…
しばらく考える、そして、意を決したように…裸足で体育館の外に踏み出し
歩き始めた