耳鳴り
ああ、まただ。
いつしか慣れて、でもやはりこの甲高い音には慣れない。
耳鳴りがするようになったのはもうかれこれ1年近く前のこと。
耳鼻科に通っているものの、一向に良くなる気配がない。
そんなとき、一つの法則性に気づいた。
それは、ある特定の位置で、ある特定の方向に向いたときだけ、より強く耳鳴りがするというものだ。
平屋の家の、それも一角へ向かって終息をしている。
場所をさがすために、家のいろんなところから、体の向きを変えてグルグルと回りながらも見ていた。
そしてその方向を見出した。
敷地の中の、ちょうど北東の方向だ。
何かあるものかと思い、その方向の土地を見る。
家の主となって久しいが、耳鳴りをするようになったのはここ約1年。
向きやそう言った細かいことに気付いたのはここ数か月だ。
何か造作をしたこともないし、周りの家で何かしらあったという話も聞かない。
ともすれば家の中で何かあったのだろうか、そう思っても心当たりは全くと言っていいほどない。
敷地の北東の方は、正確には角があるわけだが、敷地としては塀がそこだけくぼんで作られている。
その壁の下の方、少し気になるものが出てきていた。
「……なんだこれ」
先祖伝来というにはあまりに若い土地であるが、一応は戦後直後ぐらいには一家の敷地になっていて、そのころにすでにこの塀は作られていたのだと聞いたことがある。
その塀は、あまり手入れが行き届いていないせいで少しばかり崩れてしまっていた。
そしてその塀の下の土も少しえぐれたようになっていて、そこから何か、壺のようなものが顔を出している。
財宝とかならいいが、こんな耳鳴りを引き起こすものだ。
絶対によくないものだ。
そんな確信めいた気持ちを持ちながらも、それでも好奇心には負けた。
生唾をごくりと飲みながら、恐る恐ると外でふたを開けていく。
開け切った瞬間、バンッと大きな驚くべき音を響かせて、今までにないほど大きな音での耳鳴りが響き渡る。
ギンギンとしているのは、もはや鼓膜でも破れたんじゃないかと思うほどだ。
「……有り難う」
そんな声が、耳鳴りの中から聞こえた気がした。
壺の中は小さな石佛だった。
どうやら先祖が守り神的なものとして祭り、敷地の隅に埋め込んだものらしい。
北東方向というのは鬼門の方向なわけで、そこを守るために、ということだったのだろう。
お地蔵様のような石佛は、近くにある寺に事情を説明して、ねんごろに弔ってもらうことにした。
そして新しい石仏を刻んでもらい、丁重に守り佛として同じ場所の、今度は地上のところに小さな小屋のような祠を建てて、祀ることとした。
それ以来、耳鳴りは聞こえていない。




