第4話:ハッピーエンドは、わたし自身が選ぶ
「――ねえ、リヴィア。
結局、あなたのエンディングって、どこにあるの?」
その問いかけに、私は静かに微笑む。
ここは、王都近郊の小高い丘の上。
春の風が吹き抜け、新しく咲いた花々が揺れている。
となりには、銀の髪の騎士。
レオン=ヴァルト。
今はもう、元攻略対象なんて呼ばれ方じゃない。
彼は、私の恋人だ。
「うーん……そうね。
正直、もう“エンディング”なんて、どうでもいいって思ってるの」
「……それ、ずいぶん投げやりな」
「違うのよ。そうじゃなくて――
“ハッピーエンド”って、誰かに用意されるものじゃないと思うの」
私はレオンの手をそっと握る。
「私が、今こうして“幸せ”って言えるのは、
あなたがそばにいてくれるから。
私が、自分で選んだ未来だから」
かつて私は“断罪ルート”確定の悪役令嬢だった。
ヒロインの引き立て役。バッドエンドを回収するためだけの駒。
だけど、そんなレールはもうない。
私は、愛された。
愛することもできた。
そして、誰かに“許される”のではなく、
“自分の幸せを選ぶ”ことができた。
「リヴィア。俺に、もう一度だけ……言わせてくれ」
レオンが言う。
私の手を取って、まっすぐ目を見つめながら。
「俺は、君を愛してる。
これまでも、これからも、どんな物語より――君と歩む人生が、いちばん美しい」
風が吹き抜け、花が舞う。
私は、笑った。
「ありがとう。私も……あなたが好きよ。
――どんな結末より、あなたといる“今”がいちばん幸せ」
これが、誰にも書かれていない、私たちだけのエンディング。
そう――
「ハッピーエンドは、わたし自身が選ぶもの」だから
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
この物語は、
「悪役令嬢に転生したけど推しキャラに恋してしまった」
という王道設定から始まりました。
最初はただ断罪ルートを避けたいだけだった主人公リヴィアが、
いつしか本気で人を想い、人に想われ、
“設定”や“シナリオ”を超えて自分の人生を選ぶまでの物語になりました。
最終的には乙女ゲームという“箱庭”を飛び出し、
全キャラが“物語を与えられる側”から“自分の物語を紡ぐ側”へと変わっていく――
そんなテーマを込めました。
もちろん、その中でも一貫して描きたかったのは、
「誰かに選ばれるのではなく、愛することを“選べる”強さ」
です。
悪役令嬢でも、ヒロインでも、攻略対象でもなく、
あなたがあなたとして幸せになっていい。
この物語が、そんなメッセージを感じていただけるものになっていたら嬉しいです。
感想などもお待ちしております。
それでは、またいつか別の物語でお会いできる日まで。
――ハッピーエンドを、あなた自身の手で。
心からの感謝を込めて。