第3話:Rewriteーあなたと紡ぐ、新しい未来
それは、誰かが作った“物語”だった。
けれど今、私たちの手で、新しいページが開かれる。
ルシアンとの対話を終えた私とロザリアは、学園の中庭に戻ってきていた。
そこには――もう、元の“ルート”なんて存在しない。
断罪イベントも、告白フラグも、エンディング分岐も、全てが白紙となった世界。
「……全部、消えちゃったのね」
ロザリアが空を見上げて言った。
アカデミーの鐘も、空を飛ぶ魔導列車も、
かつてのイベント演出だった景色が、すべて“消失”していた。
(まるで、ただの舞台セットだったように)
でも、それでも。
「私たちは、生きてる」
私はそう言って、胸に手を当てた。
想いがある。
愛がある。
未来を一緒に歩みたいと願った人が、すぐそこにいる。
「リヴィア!」
振り返ると――そこには、息を切らして走ってきた、レオンの姿があった。
「っ、よかった、無事だったか!」
「レオン様……」
私は彼の前まで歩き、迷いなく、彼の手を取る。
「レオン様。もう、イベントもシナリオもないの。
私たちには、エンディングも、分岐も用意されてない」
「それでも……君がここにいるのなら、それで十分だ」
彼の手が、私の手をぎゅっと握る。
「どんな未来でも――俺は、君と生きたい」
ロザリアが微笑んで言った。
「これが、“誰かに選ばれた物語”じゃない。
“自分たちで紡ぐ物語”の始まりなのね」
私たちは互いに頷く。
「だったら、書こう。
この世界に新しいページを、私たち自身の手で」
* * *
その日、私たちは宣言した。
すべての元ルートから脱却し、
“選ばれた未来”ではなく“選び取った未来”を生きることを。
そして、その決意はやがて、あらゆるキャラクターたちに波及していく。
――ルークは、亡き兄の影から解放され、自分の夢を語り始めた。
――エルヴィンは、真の意味で“民のための騎士”となる道を歩み出した。
――ロザリアは、誰かに選ばれるヒロインではなく、
“自ら王を選び、政を成す未来”を志すようになった。
“物語を与えられた登場人物たち”が、
自らの意思で“自分の物語”を紡ぎ始めたのだ。
(これが、本当の意味での――リライト)
私たちは、確かに世界を変えた。
だけどそれは、**破壊ではなく“再生”**だった。
もう、どんなフラグもいらない。
私は、私の意志で。
あなたと歩く未来を、選ぶ。




