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or  作者: 真亭甘
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寅の国-尊-

「ラエル!!!」


振り返りざまに刀を抜刀した。

しかし、破れ布の人影も白髪の人影も見当たらない。むしろ通行人がいたが、皆腰を落としたり、引き返して逃げ去ったりしていた。悲鳴が上がり、兵が呼ばれる。さすがにまずいと思い、素早く逃げ去る。人混みの奥にある屋台で、果実を丸かじりする白髪の少年がいた。


「ったく、とんだ災難だ・・・。あの感じ、いや、あいつがいる。いるなら桜花も。」


中央の屋台広場に隠れ込み、考えながら歩き、ランが爆食している所へと向かう。大量の皿を積み重ねながら席について食べている光景に、彼は驚いた。


「あるものをすぐに口に入れると詰まるぞ」

隣に座って食事をしていると、料理を提供している屋台の店主から3人分の料金を請求された。


「あぁ、3人分か・・・。・・・3・・・3人分?」

料金に驚き、席を飛び上がった。


「3人だろ?この大食いの兄ちゃんに、隣の姉ちゃんも友人だと言っているぞ。」


「姉ちゃん?誰のことだ?」


「私のことよ。初めまして、私ルナ。よろしくね。ランの顔見知りなの。あなたもランの知り合い?なら私も知り合いね。ちょっと持ち合わせがないから、建て替えてくれる?私の分はもともと大して量を食べていないから。」


明るい赤い髪に、Yシャツにひざ丈スカートの女の子が、馴れ馴れしく話しかけた。

お構いなく食べるランを引き寄せ、確認すると頷いた。二人の接点はわからないが、この場を打開する方法が見つからない。これは言い逃れられないな。


「悪いが、俺も金を持ち合わせていない。しかし、後々兵に将軍に会ってくれ。将軍が俺たちのこの場での後見人だ。軍の将軍だ、もし嘘ならただでは済まされない。」


店主にその場をやり繰りするための交渉をする。だが、そんなに話は簡単ではない。確かめるために待つという。話していると、3度の鐘が鳴り響く。


「ヤバい、宮殿に向かわなくては」ルナに小声で「走るぞ」と言う。「そこで何こそこそと。」


「走れ。」


はい、承知いたしました。以下に、校正・校閲後のテキストを生成します。


食べているランを抱え込み走り去る。今日は逃げてばかりだ。それもこいつと関わったせいで、やはり俺はここで関わるべきではなかったのだ。そうだ。宮殿で報酬を受け取った後、関係なく別れればいい。そうだ、俺がいなくてもこの女がいるではないか。俺には目的があるのだ。そんなこんなで、宮殿に着くと将軍が待ち構えていた。


「遅い!城主、建岱様がお待ちである。さっさと入れ。」


「待て、そいつらは食い逃げだ!罪人を処罰しろ。」


「こやつらは、我が国が雇った要人だ。要人に、食い逃げなどない。以上、立ち去れ。」


「そんな・・・横暴だ!この国の城主が、そんな暴君だとは。今まで納めた俺たちの金を返せ!」


「要人に国や国王や城主を非難する覚えはないし、返す金もない。」


「そんな!パワハラだ!」


「パワハラか・・・。ならば、お主らの生活の安全に対する我らの働きへの市民の不平不満・・・こそパワハラだ!パワハラなどと文句を言うのなら、城の外で暮らすがいい。城外には、モンスターや盗賊などもいる整備されていない土地で暮らすのだ!並外れた人間にしか無理なことだ、それを貴様はやるのか?やれるのか?」


「・・・やるさ。やった方がこんな悪政な国よりましだ。」


「わかった。やるからには実行あるのみ。今更拒否権はないぞ!」


将軍の言葉と同時に兵士たちが店主を担ぎ上げ、城門へと歩いて行った。もう後戻りもできず、謝罪の言葉を連呼するが、誰一人として聞く耳を持たず絶望の淵に陥りかけた瞬間、兵士を呼び止める声が響く。

十二神獣の職として難なくやっているが、一番覇権争いの多い職だ。それをわかっていても、魅力を感じる職ではある。それはこの俺がこの世界に存在するためなのであろう。ならば終わりゆくまで暴れてやろうではないか。宮殿の広間に座り込んでいた男、建岱に伝令が報告に来た。


「伝令。国主・建文様らの軍が新明城から出陣されました。」


「殿、若殿が来たな。野党どもは傭兵や各部隊が片付けた。税の猛将・青宇将軍も討たれ、民鬼も暗殺された。税への躊躇いは消えました。」


「まったくだね・・・。なぜ実力を測り間違えるのかな?それほどまでに力を持っているわけでもないのに、先走るのかな。」


建岱の左には細長くキリッとした顔が特徴の老将が、右には真逆の丸く優しそうな老将が二人、話している。


「自国を自分たちの手で取り戻そうと動いたのだ。逆の立場ならそうだろ?岩夫よ!魚杢、好機か?」


優男風の岩夫と細長い魚杢の二人は、外へ歩き出した建岱の後ろで手を合わせてお辞儀をする。魚杢は戦を行う正当性や作戦を細かく説明する。魚杢からの説明を少しばかり考え込むこともあったが、雅竹に教えると思いながら、久しぶりの戦に興奮する。


「これこそ我らが、殿!国主を退かれてからも、このアニマ。興奮の関を切るのが楽しみです」と、魚杢と岩夫は口をそろえて言う。後ろの二人からの言葉に建岱は、「ハハハ、そんなことはないよ。全盛期頃よりも格段に下がり切っている。その証拠に下はしなっている!」と衰えと惚気を言って笑いながら、大広間に入ると傭兵や兵士が腰を下ろしている。礼儀としての珍しくない光景だが、どこか重い雰囲気だった。


「顔を上げよ!戦功恩賞を始める。」


「お待ちください」建岱が話しかけている途中に、将軍が立ち上がり申し出た。


「なんだね、将軍?」


「は、自分は商人との揉め事に、兵士たる身でありながら相応しくない、あるまじき行いをしてしまいました。」


「と、申しますと?」


「それは私、甕がお答えします。」


甕は、魚杢や岩夫より少し年の低い老将だ。年齢順に魚杢、岩夫、建岱、甕、兵以となる。

ちなみに魚杢と岩夫は建岱の家庭教師であり、甕は建岱と義兄弟の契りを交わした盟友だ。兵以は関係性はないが、戦を駆け巡った将軍である。建岱は十二神獣の寅の地位にあり、華凰ではその四人のことを寅の足とも言われている。


「先ほど、兵以と商人は宮殿の門で言い争いをしていました。客人への飲食代金を免除すると契約書に記載されているにもかかわらず、商人は怒鳴り散らし、兵士たちにも暴言を吐きました。そこへ兵以も怒り、商人たちを追い出したのです。それを見ていた私が止めに入り、商人も謝罪して難なく終わりました。」


「しかし、私、兵以は兵士たちの見本としては、あるまじき行いです。これは許されることではありません。」


「わかった。ならば処罰を与える。」


建岱の言葉に甕と兵以は、即座に膝をついて手を合わせ、建岱の話を待つ。建岱は椅子から立ち上がり、兵以を前へと呼び出す。処罰を受ける者が前に出て刑を宣告される光景とは少し違い、建岱も前に出て兵以と対面に向かい合った。すると兵以は、大雨に濡れたように全身から大量の汗が噴き出し、それまで寝ていないのかと思うほど疲れ切った顔をしていた。


「では、刑を申し上げる。兵以、お主は無罪だ。」


「え!・・・あ、ごめんなさい。」


ルナが思わず声を上げたが、すぐさま頭を深く下げた。息をのむ音が聞こえてきそうなくらい静まり返った大広間に、少女の高い声が響き渡った。ランはわからないが、ルナ自身や俺でもこれはヤバいと感じた。

大広間の静まり返った雰囲気は、誰もが気まずさを感じさせた。建岱は口を開いて、将軍を呼びかけた。呼ばれた将軍は焦りで変な発音になった。


「将軍、近頃領地内で暴れている賊どもについて何か掴めたか?」


「は、ああはは・・・。賊軍は近隣の村々を襲い、金品や人攫いを行い、売りさばいている模様です。」


「うむ、で彼らの目星は?」


「それは私、ジットが代わりに申し上げます。」将軍ではなく後ろの方に控えている、ロン毛にニット帽を被った青年が名乗り出てきた。


「おお、HUNTER FUNGからの傭兵ジットか。」


HUNTER FUNG――変異前にシステムイメージとしてアップロードされた作品。青年が悪徳政治を倒し、新たな治安を作るという設定だ。と言っても俺もその後に配信されたDogmaのシステムキャラクターではあるが・・・。ジットは俺たちの前で片膝を着き、建岱に話す。


「陛下、これは以前の我々HUNTER FUNG設立のきっかけとなった出来事と同じです。賊によって治安や国力を裂き、弱まったところを一気に畳みかける。この流れはスットマンによって内政から行われましたが、今回は隣国・税の国からの攻撃。そしてこれを画策しているのは、我々の時と同じく・・・そして、殿と同じ十二神獣の・・・文圍であると。」


「・・・やはり文圍の仕業か。これはますます大人しく隠居させてくれませんな、殿。」

「はぁ、確かにこれは困った。」


優男の岩夫が立ち上がり、大いに声を上げて建岱に話しかける。話しかけられた建岱は、顔に手を当てて目を閉じた。が、すぐに顔を上げて指示を出す。


「そうだな、岩夫。岩夫、甕、兵以、すぐに挙兵の準備をせよ。魚杢、税までの進軍の策を立てよ。」


「は!」


岩夫、甕、兵以はすぐに大広間を後にし、戦支度を始めに走る。しかし、魚杢はただただ伏せたまま、その場に残った。


「殿、出陣も良いですが、首都合肥を制圧しても今回の目的は果たされません。賊の首領は税国ではなく、まとまりもつかない江西のさらに奥、武功山にいるとのことです。奴を討ち果たしてこその出陣です。」


魚杢からの言葉に、建岱は困った顔で手を寄せた。こちらに来ている倅の本軍とここの二軍に分けて出陣しても、雅竹を取り逃がしてしまう可能性もある。一軍にしても遠征費やこれからの洛陽での帝の催事にも間に合わない。名君とも言われる穏やかさと聡明さで怒り出さない人である建岱も、思わず「申めぇ」と叫び出し、顔にしわを寄せるほど強張っていた。


「殿、ご安心ください。今回の件、両者を勝ち取る方法がございます。」

魚杢は漫然とした顔つきで建岱に申し上げた。


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