洛陽城3
隆長が冷笑を浮かべる。部下たちは一斉に綾に襲いかかるが、彼の動きは電光石火だった。礼儀正しく冷静な青年の面影は消え去り、冷徹な戦士としての姿が露わになる。一瞬のうちに部下たちを一蹴し、そのまま隆長に向かって鞘で斬りかかる。隆長は即座に二本の短刀で防御するも、その力に押し負け、路地に積まれていた空箱へと吹き飛ばされる。
その様子を遠く離れた場所から見て微笑む影があった。
隆長が倒されたことに怒り狂った部下たちは再び綾に襲いかかる。しかし、その瞬間、彼らは一瞬の間に切り裂かれていった。突如現れた黒服の男が、容赦なく隆長の部下たちを斬り捨てたのだ。
驚きと戸惑いを隠せない綾は、黒服の男に対して構えを取り直す。男の眼差しには狂気が宿っていたが、その瞳には計り知れない知性も感じられた。
「お前も、楽しませてくれるか?」
男の声が冷たく響く。次の瞬間、彼の刀が閃光のように綾に襲いかかる。綾はその攻撃を受け流し、再び戦闘態勢を整えた。二人の剣士の間に激しい戦いが繰り広げられ、冷酷な剣士と冷静な戦士の邂逅は、終わりなき戦いの始まりを告げていた。
隆長が空箱の中から立ち上がる。その顔には怒りが滲み出ていたが、その怒りは次第に冷たい笑みに変わっていく。彼は部下たちの無残な姿を見下ろし、男の存在に気付く。
「示志か。貴様・・・邪魔をするつもりか。」
示志、自らを「俺」と称し、人を斬ることに快楽を見出す狂気の剣士。独特の笑い声が彼の存在を際立たせる。
隆長の声に、示志は答えることなくただ微笑むだけだった。その笑みには狂気と冷徹さが交錯していた。綾は二人の状況を見極めようとするが、示志の動きは素早く、彼の刀は再び綾に向かってきた。
激しい剣戟の音が路地に響き渡る。綾は示志の攻撃をかわしながらも、その狂気に満ちた剣技に圧倒されていた。しかし、彼は冷静さを失わず、自らの信念を胸に戦い続ける。
一方、隆長は再び短刀を構え、機を伺っていた。彼の視線は鋭く、二人の戦いを見定めていた。示志の動きが一瞬止まったその瞬間、隆長は綾に向かって襲いかかる。
「これで終わりだ!」
隆長の叫びと共に、短刀が綾に向かって突き出される。しかし、その刃が綾に届く前に、示志の刀が隆長の腕を切り裂いた。隆長は痛みに叫び声を上げ、地面に倒れ込む。
「そんなのに構わずに、まだ楽しませてくれるか?」
男が冷たい声で問いかける。
「貴様!!」
次の瞬間、二人の剣が激しく交錯した。鋼の音が響き、火花が散る。青年は冷静に防御と反撃を繰り返し、その動きは精確で無駄がなかった。しかし、男はその攻撃を楽しむかのように受け止め、時折狂気の笑みを浮かべていた。
綾は一瞬の隙をついて、反撃に出る。その刀は正確無比であり、示志の攻撃を的確に受け流し、反撃の機会を見逃さない。
示志はその一撃を受け、笑みを深める。「いいね、もっと楽しませてくれ」その言葉とともに、再び示志の刀が閃く。
戦いはますます激しくなり、互いの剣技が火花を散らす。示志は心眼を使い、綾の動きを読みながら攻撃を繰り出すが、綾もまたその動きに対応していく。
青年はその攻撃を素早く受け流し、反撃の一撃を放つ。刃と刃が激しくぶつかり合い、金属音が響き渡る。二人の戦いは周囲の喧騒を忘れさせるほどの緊張感に包まれていた。
綾は苛立ちの表情を浮かべていたが、すぐに冷たい笑みに変わった。
「面白い。もう一度やってみようか?」
示志は再び刀を構え、青年に向かって突進した。青年もまた、決して引かず、その攻撃に応じた。
二人の剣士の戦いは激しさを増し、繁華街の人々はその異様な光景に息を飲んだ。しかし、二人の間にあるのはただの斬り合いではなかった。そこにはお互いの剣技を試し、心を読み合う一瞬一瞬があった。
再び二人の剣士は激しい斬り合いを始めた。彼らの戦いは、繁華街の喧騒の中で一瞬の静寂をもたらし、周囲の人々の注目を集めていた。
戦いの激しさが増す中、青年の心には確かな信念が宿っていた。自分の信じる正義のために、何としてもこの狂気の剣士を倒さなければならない。その決意が、彼の動きをさらに鋭く、強くしていった。
そして、男もまた、その狂気の中に確かな目的を持っていた。彼にとって、この戦いは単なる楽しみではなく、自己の存在を証明するためのものだった。その異常な欲求が、彼をますます強くし、青年との戦いを終わらせる気配を見せなかった。
二人の剣士の戦いは、まだ終わりを迎えることなく続いていった。
男はさらに狂気を帯びた笑い声を上げながら攻撃を続ける。「もっと、もっとだ!」彼の動きはますます加速し、青年の防御を突破しようとする。その瞬間、男の目が妖しく光った。
示志の視界が変わり、彼は綾の刀の心象世界に入り込んだ。
心象世界は、荒涼とした岩場と霧、そして快晴の青空が交錯する異様な風景だった。異様な雰囲気を漂わせていた。
そこに現れたのは、「又」という名の、サイコロ本に夢中になる7歳程度の子供だった。
示志はその存在に興味を抱き、近づくが、「又」は冷静に示志を見つめ、
「お前がこの刀の主か?」
示志が問いかける。しかし、子供は答えることなく、静かに本を読むだけだった。
もう一度問い掛けようと、口を開けると
「童の如き分際で、小生に話しかけるな」
子供が呟くと、示志は心象世界から追い出された。
彼は再び現実の繁華街に戻り、目の前に立つ青年を見据えた。
「もっと見せてくれよ」
示志は心象世界を探索しようと「心眼」を発動する。しかし、体全身から力が抜け落ちるかのように、示志は崩れ落ちた。
「ザマねぇな、示志よ!このオレを!」
「うるさい」
崩れ落ちた示志の代わりに、隆長立ち上がるが子供の逆鱗は止まず、膝から下だけを残して隆長はこの世から形を消した。
「この剣は面白い」
と笑い声を上げる。しかし、隆長の光景を思い出して冷静さを取り戻し後退りしてこの場を立ち去っていく。




