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or  作者: 真亭甘
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荒廃した街

老朽化を重ね崩れ落ちたコンクリート破片と、劣化し折れたり風雨で錆び付いた瓦礫の上を歩き、先で立ち止まっている白いジャケットを着た男性に声をかけた。


「大狼さん……!いや、ダルフさんでしたか、これが……!」


「ああそうだ、スットマン……ここが俺たちの住んでいた町、東京……そしてここはお台場だ!!」


そこにはダイバーシティの前に建てられているガンダムが、膝をついて倒れていた。


時は20XX年、世の中は発展し、人々は豊かな暮らしを実現していた。夢の中で遊ぶ体験型アプリケーション、通称「DREAMドリーム」の配信から5年が過ぎたある日、突然世界は変わってしまった。それから世の中は、人々が知っている世界とは別の「アドリム」の世界になっていたのだ。


それから3年後、ヨーロッパのEU連合はアクロテンという国に変わってしまった。また中国やモンゴルのアジアの国は華凰に、日本は神宮に……というより、京都や奈良や北海道は神宮になったが、ほかの県では神宮の支配から奪い取った昔の戦国大名が支配する地域と化している。しかし、東京は23区に高壁が聳え立ち、新宿都心にはスカイツリーや富士山を超えるほどの高いタワー「虚空こくう」が立っていた。その麓には金や権力などの力を持つ者たちが、無数の高層ビルに住み着いている。さらに地下になると、地下鉄の跡を利用した通路があり、隠し扉を超えると商店街と戦闘不可領域の医療所がある。さらに下に降りると、壁伝いの中小の建物が立ち並び、人々が暮らしている。


またその外の旧市街地は、異変以降、突然ひび割れと草木の生えた廃墟になっていた。まるでジャングルの森の中にある古代遺跡のように、ほんの少し前まで人々が生き交わしていた場所なのに。人々がこの場所の支配者ではなくなり、ジャングルでは動物のようにこの場所はモンスターの住処と化していた。


ポッコ、ポッコと馬の蹄がコンクリートなどの舗装された場所では鮮明に響き渡るように、馬や鹿のように長い脚が動く。体は横長に丸く、背中には毛ではなく背びれが動いていた。顔は馬のような面だが、目つきや口元はトカゲそのものだった。


「シカノトカゲ」という中小型のモンスター。肉食性で、異変後は何人もの人間が食われている。その恐ろしさから町を我が物のように縦断していたが、顔を上げピクピクと耳を動かして周りをキョロキョロとしだした。ビルから石が落ちる音がすると、後ろのビルの陰から大型の霊長類が飛び降りてきた。シカノトカゲの首に掴まると暴れだし、壁にぶつかり引き落とそうとするが、力尽き横たわった。黒く汚れた物体はシカノトカゲを絞め殺した。その後起き上がり、首を持ち上げ胴体を足で押さえつけて引き剥がした。途端に血が噴き出し、下半身は紅く染まった。まるで液体の入ったビニール袋が破れて、中の液体が飛び散ったかのようだ。シカノトカゲの首を持ったまま川に飛び込み、配管を通じてダウンタウンに出た。


ここは力のない者や闇の人間が共同でいる場所だ。安全ではないが、地上でモンスターや殺人者に出会うよりはましになる。地下タウンに男の姿があった。


「ラン、今日もモンスター種のハントだね。」


質屋のおばさんにランと呼ばれた少年は、ボロボロに汚れた何かを腰に巻き付け、上半身はボロ布をタンクトップのように着ているものの、何も身に着けず肌は油や泥で汚れ、一度も髪を切らずに伸び切っていた。ランは持っていたモンスターの首を渡し、札を握りしめ給仕屋に札をすべて渡し肉を頬張った。ロールパン1個を布の中にしまい込み、地下に何本も張り巡らされた地下水管のように大きな配管を伝って地上へ、さらに虚空の外壁を上ると、突き出た外針の先端に座り布にしまい込んだロールパンを食べた。


「やあ!こんなにもいい景色の中で食べるのは、美味しそうだね。」


白い着物に刀、癖のある前髪が特徴の40代の男性が、外針の根本の方から近寄ってきた。ランも振り返り男の方へと向き合った。


「おじさんも相変わらず、余計なお世話の人だね。」


「ははは、余計なお世話とは失礼な。この建築物には不法侵入者なんだよ、君は。それに私はおじさんじゃない、ミツルだよ!」


40代の男性が若々しそうに自分の名前を表現しているが、その仕草は一生懸命若作りしているように見える……。しかしミツルはそんなのお構いなしにランに近寄るが、大きく飛び上がり離れていく。壁にへばりつくと下を向く。


「何をしているのかい?」


ランの後ろ高く腕を後ろに組んで、浮いている――いや、片足を壁の僅かな窪みに引っ掛けて保っているのだ。ランは見るや思いっきり殴る。壁は爆発し煙をまき散らすが、ミツルは襟を掴むと、「建築物を壊すのではないよ。器物損壊!」と言い残し、遠く山の方へ投げ飛ばされた。木や廃屋などいくつも壊し、大きな地面を削りながら廃屋の壁に止まった。


「そろそろゲーム始めようぜ!」

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