師匠!人間じゃなかったんですか!?
思い浮かんでしまったので。
勢いだけでやってしまいましたので、短めになっています。
シチュエーションは、森の中の小さなログハウスの中という事で読んでもらえたらと思います。
「師匠!人間じゃなかったんですか!?」
あれ?言ってなかったっけ?
「言ってませんでしたよ!もう!なんでそんな大事なこと教えてくれなかったんですか!」
なんでって……私にとっては当然のことなんだからしょうがないでしょ。
君も一々、「僕は英雄です!種族は人間です!」とか言わないだろう?
「いや、まあ、そうですけど……って!そんな自分から「英雄です!」とか言いませんよ!」
それで?旅はどうだった?
魔王とは戦えたのかい?
「はぁ……もちろん戦いましたよ」
強かったかい?
「それはもう。……彼女と闘うなんて、二度とごめんです」
そうか……。お疲れ様。頑張ったね。
「ええもう、ものすごく頑張りました」
そうかい。
……さて、夕飯の準備でもしようかなぁ。
ああ、君は座ってなさい。帰ってきたばかりで疲れてるだろう。
「待ってください。まだ、話は終わっていませんよ」
いやいや、君の英雄譚は夕食を食べながら聞くから。ね?
「そんな、自分から恥ずかしい話するわけないでしょう」
……。
「……」
……ああ、もう!わかったから、そんな目で見ないでくれ!
「わかってくれてなによりです。それじゃあ、僕と魔王が会ってから、ここに帰ってくるまでの話を始めましょう」
*
魔王城に着くまでは割愛しますね。
特に何か大きな騒動もなかったので。
……本当になにもありませんでしたよ。
魔王城に着いた時の方が衝撃だったというか……。
いや、だって!あんなに丁寧な扱いを受けるとは思うわけないじゃないですか!
ユリス山の洞窟を抜けたら、いきなり魔王城があるし、城門の前では執事長が待っているし、中に案内されると城の人たちが敬意を持った眼差しでみてくるし!
「これまでの道中、お疲れ様でした」なんて本気で労わってくれる人に、敵意なんか向けられますか?僕にはとてもできません!
……すみません。少しだけ愚痴みたいになってしまいました。
執事長に案内され、そのまま玉座のある部屋まで向かいました。
戸惑ったまま部屋に入ると、女性が椅子に座っていました。
一目見ただけで、彼女が魔王であることがわかりましたよ。とてつもないオーラでしたからね。
ええ、それでですね。
彼女の姿に見覚えがあったんですよね。
おかしいですよね?
初対面で、しかも魔王ですよ?
驚きすぎて、無意識にぽろっと「師匠?」ともらしたらしいんです。
その言葉を聞いた魔王も「師匠?」と不思議な顔になりました。
そりゃそうです。
そして、何か一人で納得した様子の魔王がなんて言ったか分かります?
「……やるか」ですよ?
明らかに、私怨が混ざった声でそう言ったんですよ!
隣にいた執事長からは「どうか、ご遠慮なく」って小声で言われるし!
もう!師匠までそんな顔しないで下さい!
その後、闘技場に案内されて、そこで闘うことになりました。
……そういえば、どうしてお城に闘技場があるんだ?
まあ、あの時はそんなことを考える余裕ないくらい戸惑っていたんでしょう。
闘技場には、すでに沢山の観客がいました。
……これもおかしいですが、まあ、いいでしょう。その雰囲気に飲まれないように気を引き締め、魔王の待つ舞台に上がりました。
魔王から、闘技場での戦闘は客席には届かないから安心しろと、だから本気で来いと言われました。
それが本当の事なのか、わからないまま決闘が始まりました。
武器ですか?持ったままでしたよ?
向こうも取り上げるなんてことしなかったので。
まあ、僕なんか相手にならないと思われてたのかもしれませんね。
……決闘の内容ですか?
自分で言うのも恥ずかしいくらい、酷いものでしたよ。なにせ、技もそれを出すタイミングも、動きの癖も一緒なんですから。
まあ、技の衝撃は凄いことになったので、観客も後ろの席の方まで逃げていましたよ。いくら被害が届かないと知っていても、やっぱり、怖かったんでしょうね。
魔王の方も埒が開かないと思ったのでしょう。いいぐらいのところで中断して、引き分けになりました。
観客は大盛り上がりでしけど、僕らは顔が引きつってましたね……。
決闘も終わり、今度は魔王の自室に案内されました。
そこで、師匠の話になりました。
……いや、なんでって。それはそうでしょ。
あんなに師匠に似てるし、技とかも同じなんですから。
それで、話が終わると魔王は、その人は私の家族だろうと言ったのです。
まあ、それはそうだろうなと。
それで、師匠に直接話しを聞くべく、急いで帰ってきました。
*
……なんか、すまなかったね。
「いえいえ、大丈夫です。師匠もこれから、大変な目に会うでしょうから」
――まさか!?
「それでは、入ってきてもらいましょう。おーい!もういいですよー!」
えっ!?嘘でしょう!?
「遅い!まさか、こんなに待たされるとは思っていなかったわ!」
「すみません。こんな風に師匠を追い詰めることがなかったもので、ついつい楽しんでしまいました」
「……あなた、性格悪いって言われない?」
「失礼な!むしろ、いい性格してるねって師匠から褒められてるんですよ!ね、師匠?」
まさか、言葉の通り受け取っていたとは……。
――じゃなくて!なんで、エミリアまでいるの!?
「「なんで!?」じゃありません!急に孫に魔王を押し付けて隠居した祖母がいるって知ったら、行くにきまってるでしょう!」
「えっ!?師匠、エミリアの祖母だったんですか!?てっきり、母親かと……。と言うことは、これが本物のロリば――」
失礼だなぁ!?
まさか、こんなちんちくりんの姿で成長が止まるとは私も思わなかったんだよ!
なんで、娘と孫は普通に成長してるんだよ!
魔王だった時なんて、見守り隊なんてあったんだぞ!!
あんな生暖かい目で見られ続けてたまるか!!
「……まさか、それが理由で?」
え?いやいや、さすがにそれだけが理由じゃないぞ?
「……師匠、目が動きすぎです」
「お婆様……」
いや、本当だって!そんな目で見ないで!
……実際、いい頃合いだと思ったんだ。
私が魔王になって数十年経って、国も平穏を保てるようになった。
もう、動乱の世を生き抜いた老いぼれは、これから先に必要ないと感じたんだ。
だから、次の世代に引き継ごうと思った。
「そうだったんですね……」
「でもどうして私だったの?お母様もお父様もいたじゃない」
ああ、えーと、それはな……。
「それは?」
……あの二人に言いくるめられてな?
「はあ!?」
「僕はエミリアが王になって良かったと思ってるよ。だって、みんな幸せに笑ってたから」
「あ、ありがと」
おっ!なんだい?二人ともそういうことかい?
いやー!これはお祝いかな?
「いえ、僕が好きなのは師匠なので」
……。
はい!?
「エミリアに聞きましたよ?今フリーなんですよね?いやー、安心しましたよ。今までアプローチしてきて、実は実家に旦那さんがいましたってならなくて」
「決闘が終わって部屋で話した時、最初の質問がお爺様は存命かだったからね?」
嘘でしょ!?
――待って!アプローチって何のことだい!?
「え?弟子になったこともそうですし、誕生日に渡している花だって花言葉は【いつまでも貴女を思う】ですよ。他にも色々やってましたけど、まだ気づいてもらえてないと思って、旅に出る前なんかは、毎日、好きですって伝えてたじゃないですか」
だって、子どものやる事だからとしか思えなかったんだ!
まさか、こんな年寄りに本気だなんて思うわけないだろう!?
「悲しいすれ違いね……。お城で話したときだって、ほとんどがお婆様への惚気だったわよ。もう、こっちが恥ずかしくなるくらい」
や、やめてくれ……。
「覚悟した方がいいわ。この人お婆様が思ってるよりヤバいわよ」
「孫のお墨付きですね!」
嬉しくないよ!?
あ、ああ、いや、気持ちは嬉しいんだけど……。
――もう!なんだこれ!?
勢いだけの作品をお読みいただき、ありがとうございました。
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