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第6話 ブラックテイルな家族その2

 その夜、俺とマリーによる緊急会議が行われた。

「それじゃあ、不良3人組を助ける方法はないってことなのか?」

「そうなの。一度かけた黒魔術を解くことはできないわ」

「だったら、新しい魔法をかけるってのは無理なのか?」

「それはできるんだけど‥‥。その場合は最初にかけた黒魔術より強い魔力が必要になるのよ」

「どのくらいの魔力が必要なんだ?」

「2倍以上かな?」

マリーは躊躇しながら言った。

「2倍? そって凄いことなのか?」

「そうね。パパの2倍の魔力の持ち主なんて思いつかないわ。1.8倍なら身近にいることはいるんだけど‥‥」

なんか言い辛そうにしてるな。何だ? 何があるんだ? 思いっきり気になるが今はそんなこと考えている場合じゃない。


「マリー。魔力っていうのはきっちりとした数値が決まっているものなのか?」

「はっきりは決まってないわ。その時の感情や集中力で多少違いが出るから」

「じゃあ、その1.8倍て方でもお父さんの2倍を超える可能性があるということだよな?」

「望み薄だけどね」

「このまま見殺しにするよりはいいだろう。その人にお願いできないか?」

ほとんど藁をも掴む思いで俺は言った。


「じゃあ、呼ぶことにするけど、本当にいいの?」

「勿論だ。例えどうしようもない不良でも命は大切だ!」

俺はまたまた正義感から語気を強た。暫くの後、俺はふとあることに気付く。


「ちょっと待て? 『本当にいいの?』って、どういう意味だ?」

マリーは視線を逸らした。

「私そんなこと言った?」

「はっきりと言った!」

「う~ん、そうだったかしら? あっ! そうだ。 明日は体育がある日よね。嫌だなぁ、体育の時間は私1人で教室に置いてきぼりなんだもん」

「言えよ! 『本当にいいの?』の真意を!」

俺の血走った目と血相を変えた顔がマリーを睨む。


「わ、わかったわよ」

マリーは相変わらず視線を逸らしたままぼそぼそと小さな声で言った。

「私達がこちらの世界に来て、誰かのために黒魔術を使ったら、その人の所に暫く居つかなければならないの」

「何だ? その勝手な決まりは?」

「仕方ないじゃない。決まりなんだから」

「ということはお前の父親も今度呼ぶって方も暫く居つくってことなのか?」

「そういうことになるわね」

「そんな話は聞いてないぞ!」

俺は頭を抱えて蹲った。

このままだと俺の部屋が尻尾だらけになってしまう。


 マリーは可愛く尻尾を振ってルンルン気分で俺に尋ねてきた。

「それでどうするの? 呼ぶの? 呼ばないの?」

「呼ぶわけないだろうが!」

「じゃあ、見殺しにするのね? まあ、自分の不幸を取るか、他人の命を取るかという選択なんだけど」

う~何ということだ!


「お前もしかして呼びたいのか?」

「だって、その人が来たら一家でここに住めるし」

「一家で住める? その人っていったい誰なんだ?」

「私のママよ」

どこの世界も父親より母親の方が強いらしい。


それにしてもマリーは実に頭がよく回るな。

俺は返事ができず黙っていた。

これ以上尻尾だらけになっては大変だが、俺が原因で中学生を見殺しにするのは一生後悔しそうだ。

「さあ、どうするの? 悩んでたら手遅れになるだけよ。ただでさえ、あなたが望んだことだし、言い換えればあなたが肺癌にしたようなものじゃない。それでもいいの?」

「ちょっと待て! それはさすがに違うだろう?」

「細かくは違うかもしれないけど、自分の願望で依頼したことには違いないわ。将来、後悔し続けるのはあなたじゃなくて?」


「う~ん」

頭を抱えて考え込むこと5分。

「‥‥わかったよ。わかった」

俺は思わず声を出した。

「わかったから呼んでくれ」

「呼んでくれ?」

「‥‥呼んでください」

声のトーンは完全に下がっていた。

頭脳勝負ではマリーには勝てないという思いが頭中を駆けめぐる。もしこんな女を彼女にでもしたら恐らく俺の人生真っ暗になるだろう。


 マリーの母親はそれから2日後にやってきた。

 父の時とは違い綺麗な七色の渦巻きが部屋中に広がり、黒い尻尾アクセサリーがその中心に現れた。大きさは父親よりは小さくマリーよりは大きい。つまり大中小と揃ってしまったわけだ。

母尻尾は空中に浮きながら俺の方へと向かって来る。


「あいえあいえ」

何だ? 何語だ?

「『はじめまして』って言ってるの」

「あっ、はじめまして」

俺は慌てて頭を下げた。

そして、そっとマリーに顔を近づけ小さな声で尋ねた。

「お母さんも言葉が話せないのか?」

「ううん。日本語の勉強はしてたみたいだけど、まだ子音がはっきり出せないみたい」

「じゃあ、さっきのは日本語だったのか‥‥」 

これはかえって話せない方がいいかもしれない。下手に話されて、もし俺が理解できなかったら失礼になるではないか。

それにしても『あいえあいえ』を『初めまして』と理解するのはかなり読解能力を必要としそうだ。

成績が悪い俺には難しすぎる。

 マリーの母親は挨拶を済ませると部屋中を見回した。さすが夫婦、行動パターンが同じだ。


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