第48話 嫉妬のエネルギー
「何がいけなかったんだ?」
呆然と立ちつくす3人を見ながら俺が言うと、
「間違いは何もないわ」
マリーは目に涙を浮かべながら答えた。
「間違えてないのなら」
「間違えてないから問題なのよ」
この言葉に全員が振り向く。
「間違いがあればそれを直せばいい。でも今回は正常に機能し正常に終わったの」
「何が言いたいんだ?」
「つまり、ファイヤードラゴンの髭だけじゃ駄目なのよ!」
「え?」
「つまりこの方法じゃママの魔力をパパの1.5倍まで上げられないってことなの」
マリーは俯きながら呟くように言った。
「そんな‥‥」
小百合はそれを聞くと目に手を当てて泣き始めた。
俺の部屋がどんどん重苦しい空気に包まれていく。マリーが話し始めて以来、この部屋は絶えずいろんな会話に包まれてきた。あの日々はもう二度と帰ってこないような気がさえする。
小百合は顔を押さえた手の間から溢れんばかりの涙をこぼしながら独り言のように言った。
「あんなにがんばったのに、どうして駄目なの? このままじゃ、あの3人が死んじゃうじゃない」
「小百合‥‥」
「ごめんなさい。ごめんなさい。私がもっとがんばれば良かったのに」
それも一理あるが、美人が泣いているのを放っておくわけにもいかず俺は小百合に優しく声をかけた。
「小百合が悪いんじゃない」
「でも、助ける方法はなんかあったはずよ」
小百合の泣き声はより一層大きくなり俺達を驚かせた。俺はそんな小百合の頭に手を置きそっと髪をなでながら、
「落ち着けよ。まだ、死んだわけじゃない。最後の最後まで一緒にがんばろう。」
と声をかると小百合は、
「ありがとう四郎君」
と俺に胸に顔をうずめながら泣いた。
「ちょ」
「大丈夫だ。俺が着いているから。俺が何とかするから。もう泣くな小百合」
と俺は小百合の耳元で囁いた。
「私、私、今日ほど四郎君のことを好きだと思ったことはないわ」
「ちょ、ちょ」
「俺も小百合のことが大好きだ。だから二人で一緒にがんば‥‥」
「き~さ~ま~ら~」
震えた声のマリーに気付くと、俺と小百合はふと我に返り二人同時にマリーの方を向いた。
「何しとるんじゃい!」
マリーの怒りの声と共に俺達は強烈な電撃にのた打ち回った。
「人間になったマリーは攻撃魔術が使えないんじゃなかったの?」
「きっと怒りが法則に勝ったんだろうな。恐るべし女の執念‥‥」
俺たちはその言葉を残し倒れ込んだ。
「そんなに強い電撃出したらお兄ちゃん死んじゃうよ」
「私もここまでするつもりはなかったわよ」
息を切らしながらマリーが言うと、突然小百合が立ち上がった。