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第38話 ファイヤードラゴンの謎

 辺りには巨大なファイヤードラゴンなど見当たらない。

しかし、マリーは確かにドラゴンが出たと言った。どういうことだ? 

緊張感が徐々に増していくのが感じられる。


「あ、ドラゴンだ。可愛い」

突然の芽依の声に俺は飛び上がった。

芽依の指差す方向を見ると猫ぐらいの赤いドラゴンがいるではないか。

何だこれ?


「これがファイヤードラゴンなのか? 何というミニチュアサイズ」

急激に緊張感が消えた俺は安堵の気持ち丸出しの声で言った。

「子どもなのかしら?」

小百合も意外そうに言う。


「この大きさなら300歳は越えてるわね」

だということはこのドラゴンは立派な大人ということか。

「何だ緊張して損した。こんな小さいんだったら楽勝じゃねえか」

俺はドラゴンの頭をポンポンと叩くと、ドラゴンは俺の指にガブリと噛み付いた。

「ぎゃああああ!!」

「気を付けて。小さくてもドラゴンなんだから」

「こいつ強いのか?」

俺は噛みつかれた指を引っ張りながら聞いた。

「弱いわよ」

マリーがげんこつでドラゴンの頭を殴ると、ドラゴンは大人しく俺の指を離した。


「本当に強いのはあそこにいるわ」

マリーの視線の先には森から頭を出した大きなファイヤードラゴンが見える。

体長は有に20メートルは超えているように見える。

よく考えてみればマリーの持ってきた資料のファイヤードラゴンは大きかった。


「は、早くこいつの髭を取って逃げようぜ」

「残念だけど、このドラゴンの髭はもうなくなってるわ」

よく見ると、切れてしまったのか髭は殆ど残っていない。

「あの大きなドラゴンはこの子の親かしら?」

「逆よ。大きい方が子どもなの」

「どういうことだ?」

「この種のドラゴンは生まれて一年間で急成長するわ。その後は年を取る毎に縮んでゆくのよ」

流石に異世界は違うぜ。


いや、考えてみると人間も似たようなものか。

 大きなファイヤードラゴンは口から火を吹き、木の葉を焦がして食べ始めた。

やはり少し焼いた方が美味しいのだろう。


 え?

「あいつ火を吹いたぞ」

「それはファイヤードラゴンだから当然でしょ」

マリーは『バカじゃないの?』と言った雰囲気で平然と言ってのけた。

「あり得んだろ。怪獣じゃあるまいし。火なんか吹いたら自分の体も焼けてしまうじゃないか」

「きっと丈夫な身体なのよ」

「そういう問題じゃないだろうが!」


火を噴くドラゴンだと?

そんなドラゴンと戦うなんてとんでもないことだという実感が湧いてくる。

幸いあのドラゴンは俺達に気付いていない。逃げるなら今だ!


「マリー、あれはでかすぎる。他のを探そう」

「ええ、それが賢明ね。と言いたいけど次のファイヤードラゴンがすぐに見つからないかもしれないの」

「どういうことだ?」

「ファイヤードラゴンは絶滅危惧種なのよ。だからちょっと危険だけどこいつの髭を貰う方がいいかもしれないわ」

「危険なのは『ちょっと』じゃないだろう!」

「でも見つからなかったら大変なことになるし。戦いましょう」

小百合が突然話に加わってきた。

 小百合、冷静になってくれ。


「もし見つからなかったらここに戻ってくればいいじゃないか。あんなでかいの見失わないって」

「それはそうだけど」

取り敢えず退却の意見をまとめようとした時、突然芽依が元気な声を上げる。

「大丈夫だよ。芽依に任せて」

「私に任せてって‥‥。どういうことだ?」


 芽依はファイヤードラゴンに向かって仁王立ちすると大きな声で叫んだ。

「我が杖に宿りし暗黒の雷よ。邪悪なる竜を射よ」

「ちょ、ちょっと待て! そんな声を出したら気付かれ‥‥え?」

芽依が杖を振り下ろすと、杖の先から弾けた雷がファイヤードラゴンへと発射されたかと思うと、見事にファイヤードラゴンの額へと命中した。


だが流石はドラゴンだ。ダメージを受けた様子もなくこちらを睨んでいる。

ん? 睨んでいる?

「おい、逃げるぞ!」

そう言い残し、俺は一目散に走り出した。

「ちょっと、1人でどこに行くのよ!」

マリーのあきれかえった声が森の中へと響き渡った。


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