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第13話 小百合の決心

 俺は息絶え絶えに教室に入ると、

「どうして学校に中華鍋を持ってくるわけ?」

と小百合が不思議そうに訪ねた。

「生徒玄関に置きっぱなしというのもどうかと思って」

さすがの小百合も理解不能のようだ。


そして放課後。場所は俺が所属する教室だ。

 何故放課後まで小百合に詳しい話をしていないのかと思うかもしれないが、とにかく今日は忙しかった。

まず教室に入れたのは2限目の途中であり、昼休みは先生から呼び出され職員室で過ごす羽目になった。もちろん今朝の事情聴取だ。


更に今日の授業は移動教室が多く小百合とは会えずなかなか話すことができなかったのである。

放課後に思い出の屋上で話をしようとも考えたが、今日に限ってヘリコプターがやたらと飛んでいる。

危険を感じた俺は教室で話すことを提案したというわけだ。

まさかヘリコプターが中華鍋のように降ってくるとは思わないが。念には念を入れる必要がある。

何せマリーは異世界人だ。俺の想像をはるかに超えてくる可能性も十分考えられる。


「お母さんの話では太田君達の容体が良くないらしいの。肺癌という癌は他の臓器に転移し易いから。もう手遅れかもって言ってたわ。手術を諦める方向で考えてるらしいの」

小百合は悲しそうな目で言った。


「私には関係ないことなんだけど気になっちゃって。変な噂も流れてるし。もちろん、そんな噂は信じてないけど腹が立つじゃない」

俺は小百合から視線をそらし大きく深呼吸をした。

「あの噂、まんざら嘘でもないんだ」

「嘘でもないって。四郎君、まさか丑の刻参りしたの?」

「あ、いや、そっちの噂?」


「四郎君、丑の刻参りって女性の方が似合ってると思わない?」

「やってないって。そうじゃなくて別の噂の方」

「じゃあ、マッドサイエンティスト? それとも金の斧?」

「違う。違う」

「私はそれだけしか知らないわ」

どうやら肝心な噂は知らないようである。


「実はもう一つあるんだが、それが正解なんだ」

「そういえば別な噂があるって言ってた人がいたっけ?」

「この前は小百合を騙す形になってしまったが、不良3人組の件は俺の仕業なんだ。俺がマリーに頼んでやったことなんだ」


 少しの間があってから小百合は口を開いた。

「どういうこと? まさか黒魔術?」

「ああ。もちろん殺そうなんて欠片も思ってなかった。病気で苦しませて反省させようとしただけなんだ」

「じゃあ、どうしてこんなことになってるの?」

「マリーの父親が勘違いして、こうなってしまった」

「勘違いって。嘘でしょう?」

「残念だが事実だ」

俺は下を向き小百合の次の言葉を待った。

もしかしたら嫌われるかもしれないという不安が胸をよぎる。


 小百合は母親が看護師という職業に就いていることもあり、命というものを特に大切にしている。

以前、理科の授業で蛙の解剖をすることになった時は皆勤賞を捨ててまで学校を欠席したくらいだ。


「何とかならないの? その黒魔術とかで」

小百合の返答は否定的なものではなかった。というより理想に近い返事と言うべきだろうか。

どうやら嫌われずに済んだようだ。俺の目の前が急に明るくなる。


「一応対策は練っているけど、なかなかうまくいかなくて」

俺は今までのいきさつを全て話した。

「するとクロのお母さんの魔力を高めればいいのね」

「ああ、そういうことだ」

「お願い、私にも手伝わせてほしいの。駄目かな?」

「もちろんいいに決まっているじゃないか」

俺は嬉しくなって即答してしまったが、小百合とマリーという組み合わせを考えると断るべきだったのかもしれない。


「ありがとう、四郎君。私ハラハラしながら見てるだけなんてできない性格だから。それに四郎君と一緒に同じ目標に向かって進みたいの。私一度失敗してるし」

「何だ、マリーの言葉を気にしてたのか?」

「悔しいけど、そうね」

「あいつの言うことなんか気にしなくていいのに」

小百合は嬉しそうな顔でにっこりと笑った。


「じゃあ、今日四郎君の家に行っていい?」

「今日は止めた方がいいかも」

俺は今朝起こった不思議現象を話したが、小百合の決心は変わりそうにもないので学校の帰り家に寄ってもらうことにした。いいのだろうか?


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