加賀美の誘い・エレナ君臨
サンダーボルトラインを一気に下って三夜沢赤城神社に出ると、からっ風街道を大間々方面へ一気に駆け抜ける。
さすがに泊まりにまで広瀬まりもを付き合わせることは出来ないため、途中の赤城駅で広瀬まりもと別れた後、先頭を行く三条神流に続いて、小岩剣のN-ONEも行く。後ろには松田彩香のGR86。
三条神流のZD8型BRZや松田彩香のGR86と、N-ONEの性能差は圧倒的。それでも、小岩剣は三条神流のZD8型BRZに必死になってついて行く。
(からっ風だとまだまだだけど、サンボルの時の走り方、なんかラリーの走り方に見えたような?)
と、松田彩香は首を傾げる。
松田彩香は前を行く、小岩剣のN-ONEの様子を撮影していた。後で、加賀美に見せる為だ。
国道50号を走ってワム地下に着いた。
今日は敷地内の焼肉屋で焼肉会。
焼肉屋に入ると三条神流は、
「加賀美、こいつに付いてやって。同じN-ONE乗りだが、車に関しては無知だ。先輩としての知識、教えてあげてくれ。」
と、加賀美に言う。
小岩剣の卓には、加賀美とシビックtype R FL5に乗る高波、一つ前の型である2016年式のBRZ-Sに乗るヤハギが付く。
三条神流は横目で、(高波さん、部活の顧問の先生で、他は部員に見えるな。)と思う。
三条神流の卓には、松田彩香が一緒なのは通常通り。4人掛けの卓。残った席にもメンツが座る。
「いい感じね。あっち。」
と、松田彩香は小岩剣の卓を見て言う。
「そうだな。ふっ。高波さん、部活の顧問の先生に見える。」
「実際、本物の先生ですよ。」
と、S660に乗るコウタが三条神流に言う。
だが、コウタは三条神流と小岩剣両者が、学校の先生を嫌って居るとは知らなかった。
「あぁ、そうなんだ。」
三条神流、明らかに軽蔑するような口調で言う。そして、小学校教諭の虐待を受けていたと言う小岩剣にも、高波が本物の先生だと言うのが聞こえた。
(まずい!コウタ君、地雷踏んだ!)
と、松田彩香は蒼ざめる。
「そうなのですか。」
「まぁね。足利の大学の数学科の教授をしつつ、桐生の塾で非常勤講師をね。」
聞こえていたらしい小岩剣は、至って普通に、高波と話している。なので、松田彩香は意外に思った。
「ちなみにだけど、つるぎ君?この2人と咲さん達はレースにも出ているんだけど、カンナとアヤは時折「エレナ」と言う名前で活動することがあるんだ。」
と、高波がニヤニヤしながら言うのだが、小岩剣には意味が分からない。二人の名前や車から見ても、二人が「エレナ」と名乗る理由が見つからない。
しかし、夕食の最中、二人が「エレナ」と名乗る理由になった奴も来るとの事。
まもなくして、地下駐車場にブリティッシュ・グリーンを纏うイギリス車、ロータス・エキシージがやって来て、そのドライバーが焼肉屋に入って来た。
黒髪のおかっぱ頭で、美少女と言うには小さい目を持つ女性だった。
「あら?今日は御連れがいるの?」
「ええ。小岩剣って言う、カンナの後輩よ。」
「そう。はじめまして。私は恵令奈。東郷恵令奈。」
(なるほど)と小岩剣は思う。
エレナの名前は、東郷恵令奈から取ったらしい。
「日奈子も今着いた。」
と、恵令奈が言うと同時に、また1人合流する。
「あら?」
と、彼女は言う。
「小岩剣君。カンナはじめ、私達の後輩。」
と、松田彩香が紹介するが、恵令奈の姉である彼女、東郷日奈子と、松田彩香、三条神流は高校時代の同級生だ。
「はっはぁ〜ん。」
と、日奈子。
「小岩剣君?かわいい見た目。私達の好みよ。玲愛なんか、きっと一瞬で好きになる。私も「おおっ!」ってなったし。」
日奈子はニヤリと笑いながら言う。
「えっと、あのー」
小岩剣は縮こまり、怯えるが、それが更に、日奈子の事を煽ってしまう。
焼肉会の後「ちょっと借りるねぇ〜」と、日奈子は小岩剣に自分の腕を絡め、一緒に地下駐車場を見て回る。
「ふふっ。かわいい、かわいい。」
と、日奈子はニヤニヤしながら言う。
「えっとー」
「私はアヤとカンナの元同級生で、ロータス乗ってレースにも出てる。これが私のロータス・エリーゼ。で、こっちが恵令奈のロータス・エキシージ。」
何の事かもわからぬ小岩剣。
強いて言えば、左ハンドルなので、これは外車だと言うことはなんとか分かった。
「えーっと、アメリカの車?」
と、小岩剣。
「へっ?」
恵令奈が目を丸くして言う。
「いや、えっと、自分、車にあまり詳しく無くてそのー。元は鉄道好きで、その頃に三条さん達にお世話になったのです。それで、群馬で就職する事になって、また、三条さん達と再会したら、皆さん、車に転身していて驚いてるところです。なので、知識は壊滅的です。」
「あっあーそう言う事ね。」
と、日奈子は納得する。
「でも、ロータスが外国の車ってことは分かったんだ。まぁ左ハンドルだしね。これは、イギリスの車よ。ちなみのちなみにだけど、エンジンの位置、探してみようか。」
日奈子はロータスのエンジンはどこにあるでしょうと問題を出す。
が、常識的に考えて、前しか浮かばないので、フロントのボンネットを指す。
「あーっ残念!正解はここ。後ろにあるの。」
「エンジンを車体の中央に搭載する方式で、ミッドシップレイアウト方式って言う。車体において最も質量の大きいエンジンの質量中心で、車体のそれ以外の質量中心が近くなることで、旋回に入りやすくまた旋回を止めやすい。よって反応の早さに優れ、コーナリング限界も高い駆動レイアウトよ。F1とか、カートもミッドシップよ。」
いきなりハードな会話。
小岩剣、ついていけない。
チームのところに戻ると、今の今までの状況を見た恵令奈は、
「次の群サイの走行会オフ会まだ間に合う?」
と、加賀美に聞く。
「間に合うよ。」
「OK!雪降らないといいな。あっこの日、空いてる?」
いきなり言われた小岩剣。その日は直近だがどうせ暇だったので「空いてます」と答える。
「水上の群馬サイクルスポーツセンターって言う、峠道をそのままサーキットにしたようなとこで、車の集まりやるんだけど来る?」
加賀美が誘う。が、日奈子から「来るよね!来るよね!」と言う圧を感じた。
三条神流は頭を抱えながら、小岩剣に「これ」と、その集まりの詳細を見せる。
オフ会だけなら1500円。
走行会は5000円。
ただし、走行会にはヘルメットやグローブ等、サーキットに必要な機材も必要とある。
「俺も行くし、サンダーバーズはみんな行くよ。まぁ雰囲気だけでも見ておくと良いよ。それに、同乗走行もOKだし、やりたくなったら飛び入りで走行会に行ってもいい。同乗走行にもヘルメットやグローブは必要だけど、予備のやつなら借すし。」
三条神流も言う。
「では、オフ会枠?で参加させてください。それで、同乗走行お願いします。」
言いながら小岩剣は、参加申し込みをしてしまった。




