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ワム地下

夕食の後、三条神流は小岩剣を引き連れ、A DMの他にも、車好きのチームや同好会が集まっている地下駐車場の中をウロウロ歩く。

ワム地下にはゾロゾロと、スポーツカーやヤンチャな車が集まって来る。

三条神流や松田彩香達の他にも、チームを組んでる奴、仲間同士連んでいる奴。

霧降要のSUBARU BRZは別のチームのBRZと隊列を組んで来ていた。他のチームのメンツが何人か居た。

今、連合艦隊は、「赤城サンダーバーズ」と言うチームとなり、旧連合艦隊のメンバーで構成されていると聞いた小岩剣だが、これには戸惑う。

「こうした、地下駐車場やデッカイ駐車場は、車好きの溜まり場。まあ、マナーさえ守って、迷惑行為をしなければいいんだけど、中には、駐車場の中で爆走するアホぅも居るからね。まっウチらは、そんなアホぅが来る場所には行かねえんだけどね。」

と、三条神流。

「しかし、連合艦隊がこうして形を変えて、今も継続していて、自分としては嬉しく思ってます。」

「形を変えざる負えない状況でもあったからね。まっ、一番最初におっ始めたのはアヤなんだ。アヤは俺が長野に行った後、タクシー会社に入って、突然変異を起こして、車に目覚め、それを追うように、連合艦隊のメンバーは鉄道を離れて次から次へと、車へと―。」

「三条さんが長野へ行ったあの頃は、アホな芸人に引っ張られた障害持ちの鉄道オタクのマナー悪化が問題になっていた頃ですね。」

「みんな、一時凌ぎで、車に逃げて来て、戻れなくなって今に至る。かつて、群馬どころか、北関東では最大勢力を誇っていた、群馬帝国帝都防衛連合艦隊は、こうも、呆気なく終わるとは。どうせなら、戦艦「大和」の最後や「日本海海戦」のように、最後の最後まで華々しく有りたかったらしいけど、俺が群馬に戻ったときには、まるで浦島太郎。連合艦隊は今の形になった後。」

地下駐車場に、シルビアS15が3台入ってきた。

やけに、マフラー音がうるさい。

「いわゆるビンボーチューンって奴。マフラーとコンピューターを交換した程度。うるせえだけで、あまり速く走れない。下手くそに改造するってのはああ言うこと。」

と、三条神流。

「自分は、ただの軽ワゴンです。以前、三条さんに、「金無い奴は、軽ワゴンを下手くそに改造する」って―。」

「群馬は派手好きだが、変な方向へ派手に走って下手くそな改造になる事が多いんだよ。車内の内装を派手派手にしてみたり、音響を変えてみたり、角みたいな変な突起物つけてたり、でも、N‐ONEなら、走りに特化した改造パーツがゴロゴロ出ている。やり方次第では、N‐ONEだけど、S660に匹敵する走りをする車に出来るかもしれない。そういう改造を、頭の良い改造って言う。まっ自分が何を望んで、それにあったパーツを使って改造すればいい。」

軽トラの荷台に、家のような物を載せているのを見つけた。

軽トラの荷台の家のような物は、居住スペースになっているらしく、荷台で寝泊り出来る、いわゆるキャンピングカーだ。

「軽でも、こんな楽しみ方だってあるんさ。N‐ONEは、S660のような小型戦闘機じゃないが、改造範囲は広いよ。こんな感じに、キャンピングカーのようにしても良いし、走りに特化した車にしてもいい。まっ、治安の悪い変な車にはするなよ。」

チームのところに戻ると、目の前で他のチームのTOYOTA86が並んで写真を撮っていた。

「おおう。ワイルドスピードみてぇだ。」

と、三条神流が感心している。

だが、車の知識が乏しい小岩剣は、周囲との話について行けない。

「そうだ。えっと、N‐ONEの―。」

と、小岩剣に話が振られる。

「N‐ONEはまだ、素の状態?」

「ええ、まぁ。加賀美さんの話を参考に、今後、弄っていこうかなと―。」

「なら、ここに行くといいよ。」

と、紹介されたのは、先ほど「マルシェ」と言われていた、カーショップだった。

「霧降の実家でもあるんだよここ。「霧降自動車マルシエ」って言うんだが、言いにくいからみんなして「マルシェ」呼ばわりしている。」

「うるせぇ。親父のネーミングセンスがよぉ。」

霧降が舌打ちした。

「キャンピングカーにしてぇなら、デッカイバスが居るぜ。」

と、ADMのメンバーであるマイノータが言う。「バス」と聞いて小岩剣は、連合艦隊旗艦である地上空母「エンタープライズ」の事かと思ったらその通りだった。

だが、「エンタープライズ」もまた、地上空母としての役目を終え、飛行甲板や航空管制コンピューターを下し、その分、居住性を確保したキャンピングカーになり、今は「榛名」と改名しているそうだ。

なんとなくであるが、小岩剣は、群馬で生きてみようと言う気がしてきた。

自分の車の整備の出来る場所も分かり、人間関係も、今日だけで連合艦隊の外、ADMとも築けて行ける見込みが出来てきた。

「移住するにも、不動産情報調べねえと―。」

「なら、望月不動産!」

ADMのラモットが連合艦隊の望月光男を呼ぶ。

彼の家は不動産屋だそうだ。

「予算は―」

「まぁ、こんなもんで。」

「倉賀野の貨物の近くでだと、ここだな。ただ、ここ、事故物件だ。」

望月が言う事故物件。

これもまた、連合艦隊絡みの事故物件だった。

「ああ。三河が住んでいた場所か。」

「鉄道オタクのマナー悪化に抗おうとして、逆に周りから酷い事言われて、最後は、貨物列車に轢かれちまった。自殺さ。それで、以降、いわく付き物件ってことになってんだよ。」

三条神流と望月が話す所へ、

「構いません。一応、そこ、抑えといていただけませんか。」

と、小岩剣。

「いいよ。どうせ、駅から離れてるし、いわく付き物件だから、半年くらい保留ってことで抑えておくくらい出来るよ。」

「へぇ。君は群馬で暮らすのかぃ。」

「なら、あっちこっち走り回れよ。」

「群馬って、いじられるけど、良いところだぜ。」

「機会があったら、伊香保温泉に行ってみるのもいいぞ。あそこは、車好きの聖地だ。」

「なんか変だと思ったら、草津温泉だ。草津行けば、ケガも病気も治る!」

などと、言われる内、小岩剣は群馬で生きていこうと思い始めた。

そして、明日か明後日にでも、正式に北関東ロジスティクスからの内定を受けようと思った。

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