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【番外】彼らの欠片  作者: 白浜ましろ
冬の小瓶の章
7/8

欠片、七つ目。白い息。―フウガとグレイ―


「今日も冷えるな」


 昼過ぎ。買い出しのために外へと出ていたフウガは、白い息を吐き出しながら家まで帰ってきたところだ。

 が、家の戸口前に立ったところではたと気づく。

 両手に抱えるのは、買い出しの品物。

 これでは開けられない。


「仕方ねぇな、一旦置くか」


 ふっと短く息をつくと、白い息がほわっと広がった。

 フウガが荷物を置こうと身を屈める――が。


「ここの扉を開けりゃいいのか?」


 下から声が上がる。

 ん、と訝って視線を落とすと、そこには灰色の毛並みの猫が居た。

 翠の瞳がフウガを見上げている。


「ここを開けりゃいいんだな」


「おう。頼めるか、グレイ」


「俺様に任せろや」


 むふんっと胸を張ったグレイは、戸口前まで歩むと後ろ足で立ち上がった。

 そして、猫にあるまじき器用さで扉を開ける。

 きいと音を立てて開くと、フウガは荷物を抱えて奥へと消えて行った。

 待つこと暫く。フウガが奥から戻って来る。


「ありがとな、グレイ。ほれ、礼のささみ」


 差し出されたささみをグレイは遠慮なく口に咥え、あにあにと咀嚼して飲み込んだ。

 ぺろりと口を周りを舐め、フウガを見上げる。


「んで、ジルに用があんだけど、いる?」


「今は居ねぇな。なんだ、約束事でもあったのか?」


「いや、居ねぇんならいいんだ。俺が勝手に来ただけだし」


「夕方頃には帰って来ると思うが……」


 フウガが顎に手を添えて首をひねった。

 その考え込むような素振りに、グレイはぴんと来る。


「ははーん。さてはシオとおデートだな」


「ま、ジルの奴は、お出かけ、と可愛らしいことを言ってたがな」


 猫らしからぬ顔でにやつくグレイに、フウガは苦笑する。


「てなわけで、もしかしたら遅くなるかもしんねぇな」


「そっか。なら、それはそれで俺は構わねぇぜ。また日を改めるだけさ」


「……もしかして、“魔族の集い”関連か?」


 何事か起きたのだろうかと、フウガの胸中に一抹の不安が募る。


「近頃仲間も増えてきたからな。集う場をもうちょい設けても良いんじゃね? って、そーだんしようと思ってさ」


「ああ、そっちか」


 それならば、それは嬉しい変化だ。

 フウガも顔の表情を和らげた。

 ジルを中心に始めた“魔族の集い”。

 人の世界で暮らす魔族は、立場上やはり日陰に追いやられやすい。

 そのために、互いに支え合おうという集まりだ。

 暮らす術を教えたり、教えられたり――情報交換の場にもなっているらしい。


「始まりは、俺やジルやシオに、クッションだけだったのにな。いつの間にか大きくなってんだぜ? すげぇよな」


 グレイの尾が嬉しげに揺れている。


「そーだな。ま、頑張れや」


 屈んだフウガがグレイの顎下を撫でれば、機嫌のいいグレイの喉がごろごろと鳴った。

 吐き出す息は変わらず白かったが、気持ちは温かだった。



 これは、とある時のとある昼過ぎの一欠片。

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