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恋する死神  作者: 赤い翼をすべる者
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再会の藍

どこかに向かう人々をただ見ていた。仕事上視界に入れることをしなかった整った服装に個々の生活を感じてしまう。死神として生命を全うし初めてのことだった。ふと僕は大胆に開け放たれた玄関に無作為に投げ出された鞄を見る。持ち帰ってから特別中身が気になることも無く、自分の持ち物では無いことから確認していない。僕は今根拠の無い1つの予想を抱えている。根拠は無いが、昨日の警官とのやり取りと鎌の消息が不明であることも合わせて考えると、ある程度説明がつく。元の持ち主に申し訳ないと思いつつも、持ち帰った鞄に手を伸ばした。躊躇しながら中身を確認すると、持ち主が高等学校第2学年であることが分かった。何かのノートを手に取りパラパラと捲ると、何かの問題を解くための難解な数式が長文の回答と伴に記入されていた。予想が的中するとしたら僕はこの高等学校とやらに行かなくてはならないのではと死神らしからぬ複雑な思想が脳裏に浮かんだ。鞄と一緒に放り出されていた鍵も手に取り外に出た。そして開けたときと同じように四苦八苦しながら鍵をかけた。改めて景色を見ると何の奇跡か、同じ鞄を持つ人が歩いていくのが見えた。

「あれだ!」

僕は走った、あの人間が遠くに行くかないよう祈りながら。死神であれば祈る必要すらなかった。何故なら死神が追う生物はは死期が近いのだから。そんなことを考えつつ階段を転びそうになりながら急ぎ足でかけ降りた。ギリギリ視界に入るあの人間を他の人々に紛れて追った。その後その人間は昨日の警察沙汰を軽く越える人混みの建物に入っていった。

「おい、勘弁してくれ」

僕は昨日から人混みが嫌いだ。だが私情を挟む時間もない、あの人間を見失うまいと人混みに飛び込んだ。時に押し退け、時に押し戻されを繰り返し何とかあの人間の背後に立った。この目線で1つだけこの場所の答えとして思い浮かぶものがあった。前にも後ろにもそして、左右にも人が詰められているようなこの状態、九割強の人がスーツ等の社会集団を象徴する服装であることから、この場所を駅だと確信した。答えは前の人間が教えてくれた。鞄からカードのようなものを取り出し何かの機械の入口にかざし短い高音が鳴ったと同時に瞬時に移動していった。この機械は改札だ、よって正解できたことになる。多少ごたつきながらではあるが同じ手順を踏みあの人間を追いかけた。駆け込む形になるのだろう、既に到着していた電車にあの人間に少し遅れを取る形で電車に乗り込んだ。あの人間は見失ってしまったが、変わりに聞き覚えのある声が聞こえた

「あれ、零も遅刻?」

何故か僕の名前を知る彼女は昨日の怪我の処置をしてくれた女性だった。彼女は昨日の服装とは異なり藍色を基調とした夏仕様であろう制服を着て座席に腰掛けていた。

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