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恋する死神  作者: 赤い翼をすべる者
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漆黒の身分証明

右往左往しながら来た道をひた走る。急ぎ足で買い物に駆け出した彼女を視界に入れながら走るのは中々この状態では鬼のように難しいことだった。

「早く元に戻ってくれ……」

そう呟き、久しぶりに疲れを感じる自分の足を動かした。そこから痛々しい記憶しかないあの大通りに辿り着くまで15分もかからなかった。

その大通りは日の指す方角が変わりまるで別の場所に見えた。

いつの間にか見失ってしまった彼女を探しつつ破片を受けた現場に戻る、その場所は完全に事件現場と化していた。落とした荷物が凶器の類いであるがために通行人に通報でもされたのだろう、僕が人間に見えるようになっているとなると当然あの鎌も見えている。

そんな考えが集まった人々に近づくほどに頭に広がっていく。

万が一刃の部分に触れようものなら大変なことになってしまう。

触れた人間も、僕自身も。

なんとか立入禁止のテープが見えるところまで入ることができた。

強引に前に出てきたことが原因だろう、数人の人の目線がチラチラと僕に向き始め、仕舞いには警察官一人が僕に気づき話しかけてきた。

「そこの君、ちょっとだけお話いいかな?」

話とは言われたもののどんな受け答えをすべきか、怪しまれること無く荷物を手にしてこの場を去るにはどうするべきなのか、警察官の発言1つで無数のシチュエーションが生まれてくる。そして僕は集まった人々の入れないテープの内側へと通された。外側の人々の声か少し大きくなった。

「この写真、君だよね?」

警察官は小さな顔写真の貼られた長方形の紙を見せてきた、ざっと読むとこれが高校の生徒書であることが分かった。僕かどうかを訊かれてもこの状態になってから自分の顔を見たことはなく顔まで変わっている可能性も否めないこの状況で返答してしまうのは、限りなくそっくりなだけの人だった場合にその写真の本人に悪いので一応確認しておきたい。気づかれることの無いよう慎重に警察車両のサイドミラーを覗く。

その瞬間の驚きを顔に表現することできないことがこの場で唯一悔やまれる点だろう。生徒書の写真とサイドミラーの顔は全く同じものだった。

「はい、これは僕の生徒書です」

「なら、訊きたい事があるから少しだけ時間いいかな?」

きっと事情聴取の類いだ、受け答えには気を付けなければと構えていたが思っていた程大袈裟なものでもなかったらしく、訊くことを訊いたらすぐに解放してくれた。持った記憶のない謎の鞄付きで。生徒書を見せられたことで、思い出したことが1つあった。 

死神の持つ鎌は死神同士の間では「漆黒の身分証明」と呼ばれていること。

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