黄緑の目的地
「お兄さん、荷物とか持ってないんですか?」
荷物?あぁ、そういえば持っていたな鎌を。
色々起きすぎてすっかり忘れていた。
だが、どうしてだろう探ってみても反応がない。遠くに行き過ぎたか。
少し手間だが、この女子高生の案内のもとあの場所に戻ってみるか。
「きっとあの場所に置いてきてしまったのだろう、また案内して貰えるか?」
女子高生は首を傾げ、こう言った。
「お兄さん、このマンション知ってますよね?毎日すれ違いますし」
さて、どのお兄さんと間違えられているのだろうか。
知るわけ無いだろ。僕は死神だぞ。でも今は、あまり考えたくない。
こうなったら、何かこの女子高生を外に出すための理由を作るか。
しかし、どうする。僕はしばらく女子高生の周囲を見渡した。
通学鞄のような物の外付けのポケットからはみ出す黄緑の何処かでみた袋。
そうだ、階段の主婦!!あいつも同じ物を持っていた。これは、いける!!
「分かった、頑張って探してみよう。騒がせてしまって悪かったな。しかし、鞄をみるに下校ついでに買い出しでもするつもりだったのだろう?」
そして、女子高生は鞄の黄緑を見つけた。
「そうだ!買い物!忘れてた」
僕にしてはよくできた誘導だった。
そして女子高生はいそいそと立ち上がり長財布を持って玄関へと走った。
「案内できるとこまでするから早く!」
どうやら急ぎの用事があるようだ。
「分かった。」
そして僕は部屋の外へ出た。数十分ぶりの空は少し日が傾きつつあった。
「先に降りてて、すぐに追い付く」
先ほどまでとは随分と言葉づかいが変わっている。そんなに買い出しが大事か。
僕は指示されるまま階段を降りていく。
少しずつ小さかった物が大きくなっていく。
不思議なようで人間からすれば多分当たり前の光景だろう。
するといつか懐かしい主婦と目が合い話しかけられた。
「あまり若いのが遅くに外歩くと捕まるかもだから、早めに帰ってきなさいね。」
「忠告、感謝する」
「迷子になるんじゃないよ~」
僕は軽く会釈しその場を離れた。僅な会話から地上の仕組みを理解した。
無駄に多い階段を降りきり、入口と同じ場所から質感の違う地面を踏んだ。
「お待たせしました、行きましょう」
「あぁ」
やはり、急ぎ足だ。これ以上離れれば迷ってしまうと必死についていった。
あいつ、ついに走りだした。息が切れる、頬辺りに水滴が垂れる。
「お兄さん怪我人なので無理しないで下さい!」
「心配ない、体力はある方だ」
人間に見つかってしまえば僕の荷物はどうなるか分からない。
できるだけ早く行きたいが体が言うことをきかない。
どうやら本気で体力があると思われてしまったらしい、ペースが上がっている。
かろうじて視界にはいるもののいつまでたってもその差が埋まらない
本来なら一瞬で埋められるはずなのに。