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恋する死神  作者: 赤い翼をすべる者
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死神零と人間零

騒がしい。すごく騒がしい。教室に入るや否や大勢の生徒の話し声が周囲に満ちる。

入り口近くで辺りを見渡す僕に対し視線を向ける者、気にせず会話する者、様々だった。

1つ空いている窓際の席にそそくさと歩いていった。椅子に腰掛け数秒後、落ち着くため窓から外を眺めた。何をするべきなのか、この場の誰を話し相手として採用すべきなのか分からない。

僕は人間にそよ風と呼ばれるものに吹かれていた。いつもより視界に映る全てが大きく新鮮だった。

「零、お前が遅刻ってどうしたんだよ。アラームでも切っちまったか?」

「席座って静かに外見てどうしたよ、具合悪いんか」

「いや、別に」

いきなり話し掛けてきた2人組に戸惑いつい口数少なめに返してしまった。

ただ外れた返答ではないことが表情から伝わった。

「受け答えに異常なーし、いつもの零だな」

「そういや次、数学だったよな。課題やったかな」

「おーい、竹センの授業かよ。寝ちまうか」

そう話ながら2人は自分の席に帰っていった。所々読めない文字の書かれた緑の大きな板から文字が消されていく。視界が疑問に満ちていた、授業とやらが始まる前から頭が痛い。学びとかそういう類いではないけれど、周囲を見ているだけで刺激されるのが分かる。ここで起こる事をまともに受け止め続けると、日か沈む頃まで頭が持たないだろう。

「あまり考えないようにしよう」

目を背けるわけではないが、見すぎない程度に過ごす。学校とやらで生活する上での目標になった。死神零が透けないための、人間零として教室に存在するために見方を変えた生活しよう。

「何でこんなことに」

少し弱音が滲んだ後、聞き覚えのあるメロディが響く。教室の中の人間が全て席に着く、この音にどんな効果があるのかを考えようとした自分を止めた。すぐ情報を受け取る死神零の才能を初めて恨みかけた。存在する環境によって自分の才能でも邪魔だと感じるのだと気づいた。普段死神として生きる僕が、人間として存在するのはこんなに難しいのだと思った。もし、どちらかを選ばなければならない、そんな時が来たなら僕はどちらを選べば良いのだろう。本来なら即答できるこの問いに今の僕は答えを出せずにいた。姿や関係は人間だけれど、中身は死神という非科学な生物だからだろう。100%どちら側と言えないから迷っているのだ。いずれ全てに答えが見つかる、いつか元に戻れる、人間的に言えば希望や可能性を考え感じた一瞬だった。


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