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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第2章 深き地の底にて

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第95話 地底エリア


 地下迷宮エリアから転移した先。

 そこはどこか見覚えのあるエリアだった。


「……暗ぇなあ」


「ぴぃ」


「グィィ」


 転移装置から発せられる光のおかげで、影治がいる周辺だけは視界が通るが、他は真っ暗闇の空間。

 声の通りからして、天井部もそれなりに高いようだ。


「とりあえず【光の球】」


「ぴぃ!」


 転移装置から出て影治が【光の球】を発動させると、ピー助も同様に明かり用の魔術を発動させる。

 それらの明かりによって明らかになったのは、今いる場所は最初塔に入る前の周辺にあった地底空間と似たような場所だということだった。


 地面は土で構成されていて、天井までは4~5メートル位の高さがある。

 今いる場所はかなり広い空間となっているようだが、奥の方には通路のようなものが幾つかあった。


「っと、早速おでましか」


 明かりを点けたせいか、この空間内にいた魔物の注目を集めてしまったらしい。

 影治達に襲い掛かってきたのは、影治と同じ程の背丈を持つ巨大な蜘蛛の魔物に40センチほどの大きさの蜂の魔物だった。


「片っ端から潰していくか」


 そう言いながらも【火球】は使わず、無属性魔術と光魔術を同時詠唱でばら撒いていく。

 これも訓練の一環であり、今は無属性魔術と光魔術を1つずつ放っているが、影治は無属性魔術の方を2重にして放つよう意識していた。

 これが上手くいけば、同時に3つの魔術を発動できるようになるということだ。


 蜘蛛と蜂の魔物は2、3発くらいでは死なないようで、とにかく影治は相手の動きを見ながら回避しつつ魔術を放ち続ける。

 ピー助達の下にはほとんど魔物が寄っていっていないが、近づこうとする魔物に関しては影治が【火球】で防いでいるので、ピー助達はスポーツ観戦でもしてるかのように応援しながら様子を見ていた。


「ぐっ……。これは麻痺か?」


 魔物の数はそこまで多くはなかったが、【火球】縛りをしているのでそれなりに時間が掛かっていた。

 そこへ、どうやってその大きな体で飛んでいるのか謎すぎる蜂の魔物が、影治の腕に尾針をかすらせると、覚えのある感覚に襲われる。

 あの時のように、体が麻痺したような感覚だ。


「ふっ、こんなこともあろうかと!」


 得意気に影治が【麻痺治癒】を無詠唱で発動させ、すぐさま体を蝕んでいた麻痺は解除された。

 麻痺に対する対処が無い場合、攻撃力は低めだが空を飛び回る蜂の魔物と、8本の足からそれなりに攻撃力の高い爪攻撃をしてくる蜘蛛の魔物の組み合わせは、厄介だったであろう。


 だが魔物達の必勝パターンを潰せば、後は純粋な力比べとなる。

 そもそも無尽蔵な魔力で、幾らでも【治癒】を使える影治を仕留めきるのは難しい。

 時間が掛かりはしたものの、襲い掛かってきた魔物は全て蹴散らすことに成功した。


「……そしてドロップしたのが蜘蛛の足に蜂の尾針か。まあ、なんかの素材になるかもしれんから回収しておくか。チェエエエエエエエス!」


「ぐ、ぐぃぃぃ……」


 影治がチェスを呼ぶと、少しおかしな足取りで近寄ってくる。

 無機物な箱でありながら、その動きからは人間臭さのようなものが感じられた。


「んん? なんかあったのかぁ?」


「グィッグイッ」


 影治の問いに器用に箱を左右に揺らすチェス。

 だが影治はチェスが隠そうとしていたことに気付く。


「……おい」


 スタスタと歩いていった影治の行き先は、ピー助のいる場所だ。

 そこには見覚えのある小瓶が転がっていた。


「ぴ、ぴぃ?」


「そこに落ちてるのは、ヒールポーションとマジックポーションの入ってた小瓶じゃないかあ?」


「ぴ、ぴーぴっぴ?」


「『そ、そーなんだ?』じゃなくてだな。お前……勝手に飲んだな?」


「ぴぃぴぃ」


 どこで覚えたのか、必死に顔を横に振って容疑を否認するピー助。

 しかし影治はここで証人を呼ぶことにした。


「チェエエエス!」


「グィィ……」


 チェスはさっきまで影治が立っていた場所から離れて様子を窺っていたが、名前を呼ばれると渋々といった様子で歩き出す。


「お前がピー助に与えたのか?」


「グィグィッ!」


「何々? ピー助がどーーしてもというから仕方なく?」


「ぴ……」


 形成不利と見るや、ふわっと浮かんで逃走を図ろうとするピー助。

 しかし影治の動きは早く、まわりこまれてしまった!


「そう簡単に逃げられると思うなよお?」


「ぴぃぃぃっ!」


 結局ピー助は影治に散々絞られた後、おやつのスライム核などもしばらく禁止されることと相成った。









「まったく。欲しいならまずは俺に聞いてみろ。それでダメだと言われたことは、一旦諦めるんだ。いいな?」


「ぴぃぃ……」


 空間内に散らばっていたドロップを回収した影治達は、新たな地底エリアの探索に乗り出すことになった。

 影治に散々絞られたピー助は、しょぼんとした様子でチェスの蓋の上に突っ伏している。


 最初の空間から続く通路は、それなりに広くて数人が横に並んで歩けるくらいある。

 そして影治達の基本隊列は、影治が先頭でその後ろにピー助とチェスが続く形だ。

 必然、先頭を歩く影治が先にソレに気付く。


「む……。あんだけ地下迷宮をうろついてる時には見つからなかったのに、こんなところにポツンと置いてあるとはな」


 影治が発見したもの。

 それはいかにもといった見た目の宝箱だった。

 チェスのように4本足が生えている訳ではないので、動き出す気配もない。


「チェスにとってはこいつは同族に当たるのか?」


「……グーィ」


 影治の質問に少し悩んだ様子を見せたが、それは違うと思うという答えが返ってくる。


「そいつはつまりこいつはただの箱であって、動き出したりミミックのような魔物でもないってことだな?」


「グィ」


 影治も一応【魔力感知】でより精密に魔力を探ってみるが、箱自体からは何の反応もない。

 そのことを確認した影治は、ズンズンと宝箱に近づいていって遠慮なく手をかけて開ける。


「お、こいつはまあ当たり……なのか?」


 宝箱の中に入っていたのは、ヒールポーションが10本にマジックポーションが5本。

 他には入っていなかったが、使い道も分からないようなガラクタや、自分が使わないような装備が入っているよりかはマシだろう。


「だが今回のポーション瓶は、外側に何か刻まれているな」


 中に入っていたポーションには全て、文字……というよりはアラビア数字のような単純な記号が刻まれている。

 小瓶の形状からして中身は特定出来ているので、影治はこの記号の意味を確かめるべく、ヒールポーションを開けてグビッと飲んでみた。


「ううん……? 心なしかこっちの方が効果が強い?」


 それほど大きな差でもない上に、今はケガなどをしていないので余計分かりづらかったのだが、影治はこちらの方が回復量が高いと感じたようだ。

 それは間違いではなく、無印のものよりこちらのポーションの方が等級が高いものだった。

 といっても、等級が1つ違う程度だとそこまで劇的に効果が変わる訳でもない。


「まあこいつは回収するとして……。どうやらこの道は結局分岐もなくここで行き止まりみてーだな。丁度いいし、今日はここで夜営とするか」


「グィィ」


 ピー助は相変わらずしょぼくれているらしく返事はなかったが、チェスからは了承の返事が届く。

 そして影治はポーションを収納しているチェスを横目に見ながら、夜営の準備を始めるのだった。



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