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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第2章 深き地の底にて
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第91話 新たな仲間?※


「こう……か?」


 これ見よがしに突きつけてくる謎箱の宝石部に、若干戸惑いながら手を触れる影治。

 しかしただ触れただけだと、特に何も起こりはしなかった。


「んん? 見た目的に魔力でも流し込めばいいのか?」


「バコッバコッ!」


「おうおう、なんつうか主張が激しい奴だな。分かった、分かった。今注いでやるよ」


 見た目が少し魔石に似ていたことから影治が推測を口にすると、謎箱がそうだと言わんばかりに箱を開閉させる。

 そこで早速影治は魔力を右手部分に集め、送り込むようなイメージで魔力を流し込んでいく。


 魔石融合術の模索をしている途中、普通の魔石には外部からの魔力を注入することが出来ないことは判明していた。

 しかしこの紫色の宝石のようなものは、影治が送り込む魔力を次々に飲み込んでいく。


「おっ? 結構入るな?」


 これまで魔術を使いまくってきたが、影治の膨大な魔力量からするとクラスⅠやⅡ程度の魔術の消費量は僅かであり、本人としては魔力を消費している感覚すら薄かった。

 しかし今は明らかに魔力を消費してるな、という感覚を影治は味わっている。


「ぐ、グィ!? グィィィィッ!!」


 だがそれも慌てたような謎箱が、自ら後ろに下がるまでの出来事だった。


「お、なんだ? もういいのか?」


「グィィィィ」


「おお、そうかそうか……。って、おい? なんかこいつ(謎箱)とも魔力のリンクが生まれてねえか? ピー助同様になんとなく意思が伝わってくんぞ」


 影治が送り込んだ魔力が契機となったのか、これまたあっさりと謎の物体と繋がりを持ってしまった影治。

 困惑する影治に、謎箱は自分の出来ることをイメージ的な念話で伝えてくる。


「何っ!? お前のその箱の中に、色々物を収納できるだと?」


「グイィィ」


「ふむ? 前の使用者の入れたものがまだいくつか入ったままだと? マスターになった今なら、手を突っ込めば中身を取り出せる?」


 謎箱から送られてくる念話のようなものを、興味深く聞く影治。

 それによると、前に謎箱を使用していたマスターはもうだいぶ前に亡くなってしまったらしい。

 影治が話していた言葉も理解出来ていたようで、それはその前のマスターから学んだものだということだ。

 なるほどと納得しながら、影治は謎箱に手を突っ込む。


「剣に予備と思われる服……サイズからして成人男性のものか? 食料は流石にもう腐り果ててダメになってるし、あとは余り大したものは残っていないようだな」


 見た目が宝箱なだけに期待した影治だったが、中には大したものが入っていなかった。

 謎箱が伝えてきた念話のようなイメージによると、恐らく前の持ち主が謎箱のマスターだったのは遠い昔という訳ではないようだ。

 服はサイズ的に合わないが、剣の方は今でも十分使い物になるだろう。


「ん? これは……。なるほど、そういうことか」


 とりあえず腐って原形を留めていない食べ物を捨て、形あるものを物色していた影治は、箱に入っていたズボンの尻の所に穴が開いていることに気付いた。

 これはたまたま穴が開いたという訳ではなく、穴の縁部分にしっかり当て布がされているので、最初から意図的に開けられた穴なのだろう。

 影治はかつての森の暮らしの中で、そういった服を作ったことを思い出す。


「つまり、嘆きの穴に獣人が落とされたってことだな」


 よく見ると剣の方も金属の剣ではなく、赤い刀身の見覚えのある質感だった。

 鞘もなくむき身のまま仕舞われていたその剣は、恐らくは赤スケからドロップした剣なのだろう。


「そんでお前はその獣人が死んで以来、ここで新たな主を待っていた……と」


「グィィィ」


 微かに蓋を開けながら頷く謎箱。

 どうも前のマスターが獣人だったせいか、魔力の補充が不十分だったらしい。

 獣人の死後は、出来るだけ活動を抑えてスリープモードに入っていたようだ。


「そうか……。にしても、もう少し早くお前と出会いたか――いや、そうなると魔石融合術を生み出せなかったことになるか。これも人間万事塞翁が馬という奴だな」


 魔石融合術は何も、絶対に必要という訳で編み出したものではない。

 ほんの思い付きで始めたら、思いのほか嵌ってしまったという結果によるものだ。

 そのことを妙に感慨深く思いながら、影治は気になったことを尋ねる。


「ちなみに、お前の中はどれくらいの容量まで収納できるんだ?」


「グィ? グィィィィ……」


 そう尋ねると、不意に影治の脳裏に真っ暗闇の空間のイメージが送られてくる。

 ……が、それだけ見せられても比較対象となるものがないので、どの程度の広さなのかさっぱり見当がつかない。

 だがどうやら本人(謎箱)には後どれくらい入りそうなのかが分かるようなので、今後物を収納していくことで段々明らかになってくるだろう。


「ピィピィ!」


「ん? そうだなぁ。お前にもなんか名前を付けてやった方がいいか」


 影治と謎箱のやり取りを見ていたピー助から、名前を付けてはどうかという案が出される。

 それもそうかとウンウンと唸り出す影治。

 本人は気づいていないものの、正直いってネーミングセンスがない影治。

 ややあって考えだした名前とは……


「よし、決めた! お前の名前はチェス。宝箱のチェストから取って、チェスだ!」


「グィィィィ!!」


 これまたピー助同様に見たまんまの名前であるが、謎箱――チェスはこの名前が気に入ったようで、満足そうな声を上げる。


「そうなるとこいつはもういらなくなるか」


 影治は背負っていた竹籠を一旦地面に下す。

 戦闘に入るたびに態々外していたので、これをそのまま収納すれば今後はスムーズに戦闘体制に移行することができる。


「グィッ、グイッ」


「私に任せろだって? そんじゃあ、こいつを頼む」


 そう言って竹籠を中身そのままでチェスに収納する。

 そこでふと影治がとあることに気付いた。


「ところで、お前のその箱の口? に入りきらないサイズのものは、やっぱ収納出来ないのか?」


「グィッグィッ、バッコバッコ」


「ほおう。流石に大きすぎるのは無理だけど、ある程度のものなら収納できるのか」


 どうもチェスは影治が手ずから収納しなくとも、自分で近くにあるものを収納する能力があるらしい。

 その際は誰かに直接収納してもらう時とは違い、少々魔力を消耗するらしいのだが、それくらいなら影治が補給してやれば問題ない。


 また同様に収納してあるものを自分から外に出すことも出来るようだ。

 試しに影治が指示をすると、先程影治が収納した竹籠がフッっと近くに現れた。

 そして影治がそれを確認すると、再びフッと姿が消えチェスの中に再収納される。


「おおお、これは凄いな!」


「グィィ」


 一般的な異世界ものに出て来るマジックバッグやアイテムボックスとは大分違った形ではあるが、有能な仲間? を迎えられて影治はいたく満足そうだ。


「ぴぃぃ」


「お、そうだ。ピー助は俺の肩の上じゃなくて、チェスの上に乗って移動してくれんか?」


「ぴぃぴぃ!」


「まあ、そう言ってくれるのは嬉しいんだけどな。見たところ、チェス自身に戦闘能力はなさそうだし、お前にチェスを守ってやって欲しいんだ」


「ぴ、ぴぃぃ……」


「グィッ、グイッ」


「そうだ。チェスはお前の弟分になるんだからな。チェスもピー助が守ってくれると助かるって言ってるぞ」


「ぴぃ? ……ぴぃぃ!」


「グィィィ……」


 主の頼みに最初は不満そうであったものの、上手く乗せられるとピー助はすぐに態度を改める。

 元々戦闘が始まった時は、竹籠を下すと同時にピー助も一緒に肩の上から下ろし、少し離れたところで様子を見ててもらう体勢になっていた。

 別にピー助自体の重さはそこまで重くもないのだが、肩に乗せたままの戦闘は流石に危険だ。


「ふぅ、大分身軽になったな。それに、こっからはドロップを捨てることなく回収できるぞ!」


 山岳エリアのゴーレムが落とした石のように、何に使えるのか分からないものはこれまで完全に無視してきた。

 しかしチェスが加入したことで、その問題も解消された。


「よーーし! そうとなりゃあ、まずはこの地下迷宮エリアを攻略すんぜ!」


「ぴぃ!」


「グィィ!」


 こうして新たなメンバーを加え、影治は心機一転して地上を目指すのだった。


チェス、イメージ


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 見ようによっては犬みたいな足ですが これが滑らかに動く謎生物と思うとキモいですね
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