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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

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第807話 奇襲部隊


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ガギンッ、ガギィィィン!


 ガンテツとハムサの戦いは、ハムサの息も付かせぬような猛攻から始まった。

 次々と打ち込まれる斬撃に、ガンテツは無理に反撃しようとはせずに、ひとつひとつの攻撃を見極めながら、時に受け止め、時に受け流し、時に回避しつつ猛攻を凌いでいる。


 最初から全力で襲い掛かるというのは、強敵を相手にした時のハムサのいつもの戦術であった。

 しょっぱなからトップスピードで仕掛ける事で、まだギアが上がっていない相手の虚を突くと共に、そのまま勢いで押し込む。

 これまでハムサは、何度もこの手で格上相手に勝利を重ねてきた。

 しかしこの手にも問題はある。


「ふうむ、早さが売りのタイプか。じゃが、その程度で某を倒すことは出来ん。師匠の剣は、もっと早い!」


「くっ、わしの剣が悉く捌かれよる! まるで刃先が氷の上を滑るかのようじゃ!」


 最初から全力でかかるという事は、すなわちその攻撃で倒しきれなかった場合、勝ち目がほとんどなくなるという事でもある。

 一応ハムサにも切り札たる闘気技はあるし、最初の全力での攻撃で相手がダメージを負うなり疲労するなりしてくれれば、まだ勝ち目はなくもない。

 しかしこうまで完全に攻撃を凌がれるとは、ハムサも思っていなかった。


「どうした? もう終いか?」


「ハァッ……なんの、まだまだよ……」


 ガンテツの問いかけに答えてみせるハムサだが、最初の猛攻で体力を一気に消耗してしまっていた。

 進化もしていないただのヒューマンで、50を超えているハムサにとって、全力での戦闘は大分堪える。

 今はガンテツが本格的に攻めてこないのをいいことに、一旦距離を取って体力回復に努めているが、呼吸の乱れはすぐに治りそうもなかった。


「では今度はこちらから参る」


 そう言うと、今度は先ほどとは攻守が入れ替わる。

 ガンテツはドワーフだけあって、元々敏捷はあまり高くない。

 だが元々シラーシ流を学び、今では影治から四宮流の剣を習っているガンテツの攻撃には、無駄な動きが少なくなっている。

 それは時にコンマ数秒の時間を生み、ハムサと比べたらゆっくりとした動きなのに、剣で受け止めることで手一杯になってしまう。


「流石にしぶといな。1対1の勝負ならもう少し楽しむ所じゃが、集団戦闘中ゆえ早々に決めさせてもらおう」


 相手が剣士なだけあって、ガンテツとしてはもう少しこの戦いを楽しみたい所であったが、今は数で不利な状態の集団戦の最中である。

 さっさと目の前の敵を屠り、敵兵を駆逐する為にギアを1つ上げることにした。


「なっ、くっ、ぐぐぐ……!」


 これまでも必死に食らいついて致命傷だけは避けていたハムサであったが、急にガンテツの動きが早くなり、更に力も増していた。

 この身体能力の変化は、未発動の状態から闘気術で強化した時の変化に似ているが、すでに両者共に戦闘開始直後から闘気術による身体強化は行っている。


「これで終わりじゃな。一閃」


 全身に切り傷を負い、吐き出しそうなくらい心肺を酷使して棒立ち状態となっているハムサに、綺麗な横凪ぎの一閃が加えられる。

 まだ師匠である影治のそれには届かないが、その剣閃はハムサの腹部を真っ二つに切り裂いた。


「これまで……か……」


「ふぅ。強敵相手とはいえ、闘装術まで使ってしまったわい」


 途中からガンテツの動きがよくなった理由。

 それは闘装術を発動していたからであった。

 闘装術といえばシャウラが持ち前の闘気量の多さを活かし、今も訓練を積み重ねている闘気術の上位版ともいうべき技術である。

 膨大な闘気を必要とする為、ガンテツといえども長時間の発動は出来ない。

 しかしこうした場面で短期間使用する程度であれば、問題なかった。


「さて、ここでぼーっともしてられんな。雑魚共を蹴散らしながら、中央の援護に向かわねば」


 そう言うと、敵兵の中に突っ込んで暴れまく手散るシャウラと同じように、ガンテツも敵陣に特攻していった。





◆◇◆




 ゾボロの町を目指し、森を西に進んでいたリュシェル達は無事にゾボロ付近に布陣していたラテニア兵と合流していた。

 ゾボロとガークランの町にいた兵士や冒険者。

 それから志願した町民と、予めレイミーが派遣していた1000の精鋭を含めた合計3000の兵がそこに集結していた。


 数としてはそれなりに集まってはいるが、半数近くが徴兵された者達だ。

 妖魔の割合が多いので、種族的にある程度の戦闘能力があるとはいえ、戦闘を生業としている訳ではない。

 せめてもの救いは、どちらの町も鉱業が盛んな町であるため、炭鉱夫の数が多いという所だろう。

 普段からつるはしを振ったり肉体労働をしている彼らは、力自慢も多い。


 だが事前の偵察で、帝国は1万もの軍を差し向けている事が判明している。

 それに対し、ラテニア側は少ない兵を更に分散配置するという手に出た。

 森という地形を活かした戦術だ。


 中央の支道付近に主力の兵を置き、支道の両脇に伏兵を配置。

 当初の予定では、その両サイドに英雄クラスを配置するつもりだった。

 この英雄というのは、大規模な戦闘において戦術級の力を発揮する強さを持つ者の事を指す。


 しかしリュシェル達がこの場に参上したことで、敵左翼側はリュシェル達が担当する事になり、残りの英雄クラスの者は敵右翼を担当する事になった。

 そしてこの敵右翼側に配置された英雄クラスの中には、2人の英雄系種族の強者が参戦している。

 言わずとしれた、シグムンドのガルダとゼノビアのローズだ。


「ハハッ! オヤジといっしょに戦争に参加するなんて久々だな!」


「はしゃぐのはいいが、お前を満足させるような相手はいないぞ。中央部にはひとりなかなかやりそうな奴はいたけどな」


「ええっ! こっち側にはつえー奴いねえのかよ!」


「まあ、しいて言えば、あそこの槍使いはそれなりに強そうだ」


 強者感知のスキルを持つガルダだが、担当している敵右翼側にはスキルに反応する相手はいなかった。

 かろうじてひっかかったのが、槍を手にしてする男――アルバァだ。


「じゃあ、あいつはオレがもらうぜ! あとの雑魚はオヤジに任せた!」


「あ、おい! ……ったく、いつまでたってもあの気質は変わらんな。お前らも続け! おれも出るぞ!!」


 ひとり突っ走るローズを追いかけながら、ガルダも前に出る。

 こちらではリュシェルのようにエントを呼び出したりは出来ないので、しょっぱなから普通に奇襲を仕掛けていく。


 この奇襲部隊には、ガルダやローズほどとはいかないが、他にも強者は何人かいた。

 ガークランにはダンジョンがあるため、それなりの数の冒険者を抱えており、その中にはミスリル級の冒険者も含まれている。

 また選神碑の近くにあるガークランには、帝国や教国以外の国からも腕に自信のある者が集う。


 それら集いし猛者たちも、この奇襲部隊に参加している。

 敵右翼部隊は3000で、奇襲部隊の数は300程度ではあったが、ガルダとローズの活躍が著しく、数の不利を十分に補っていた。


「げっ、なんだよありゃあ!」


 獅子奮迅の働きを見せるローズに、思わずアルバァから驚きの声が漏れる。

 つい先日にも化け物のように強い相手(ゾルダ)と戦い、どうにか生き延びる事が出来たアルバァだったが、次々に死体の山を築き上げているローズは、あの時以上の危機感を抱かせた。


 それも無理はない。

 アルバァは知る由もないが、四魔君主に名を連ね、オーガ族の英雄と呼ばれるゾルダであろうと、選神碑に名前を刻まれることはなかった。

 選神碑が単純に強さだけのランキングなのかどうか定かではないが、少なくとも選神碑に名前が載っている者達は皆とんでもなく強い。

 その選神碑の89位にランクインしているローズは、そこいらのアダマント級冒険者でも太刀打ちできる相手ではなかった。


「おいおいおい! 何でこっちの方に来るんだよおおお!!」


 女性ながら2メートルの長身と、その背丈より長いハルバードをブンブンと振り回しながら、ひたすらローズは前進を続ける。

 その進む先は、ガルダからそれなりに強いと評されていた、アルバァの下だった。


「チッ、覚悟を決めるしかないか……」


 帝国の傭兵や聖なる暴虐団の中にも、冒険者ランクで言う所のダマスカス級やミスリル級の強さの者もいないではない。

 中には極少数ではあるが、オリハルコン級レベルのものも存在する。

 だがそんなの関係ねえとばかりに、そうした連中をなぎ倒しながらローズは突き進む。

 それを止めるには自分が出るしかないと、悲壮な覚悟をしてアルバァは自らローズの方に近寄っていった。


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