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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第2章 深き地の底にて

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第81話 因縁の組み合わせ


 影治が塔内部の草原エリアの調査を開始してから、3日が経過した。

 思いのほか時間が掛かったのは、この空間がそれなりに広かったせいだ。


「まだ中心部にある森にも踏み込んでねえしなあ」


 影治が調査した結果、どうやらこの草原地帯は中心部に森が広がり、その周囲に草原地帯が広がっていることが明らかになった。

 そして反対側の見えない壁にも辿り着いたが、そこまでいくのに数時間も歩くことになったので、直径数十キロメートルはありそうだ。


「とりあえず周辺の草原地帯にはなんもなさそうだったから、森の中に何かあるんだろう」


 そう言った訳で、影治は森へと向かって移動を開始する。

 この森は影治が最初に生活していた半分ジャングルっぽい森とは違い、影治も見覚えのあるような広葉樹や針葉樹の入り混じった森だ。

 ここでは木の実やキノコなど魔物以外の食糧も採取出来るので、食料採取も兼ねて影治は念入りに調査を進めていく。


「【闇球】、【闇球】、【闇球】…………。【闇の玉】、【闇の玉】、【闇の玉】…………」


 ひとりぶつぶつと言いながら歩いている影治の姿は、傍からみるとヤバイ奴に見えるかもしれない。

 だがこれも闇魔術の練習を行っているだけであり、時折【闇球】の直撃を受けた小動物や昆虫などがパタリとその場で倒れ伏していく。


 なお使用しているのは闇魔術だけでなく、無属性魔術と交互に発動している。

 無属性魔術は、回復魔術や神聖魔術同様に無詠唱による発動が可能なので、一見すると闇魔術だけ使っているように映っているだけだ。


「【闇の囁き】、【闇の囁き】、【闇の囁き】…………にしても、さっぱり闇魔術が上達しねえなあ」


 【闇の囁き】は対象に恐怖心を与えるクラスⅠの闇魔術だが、影治はそれを自分自身に対して使用していた。

 一度どのような効果か味わってみたいというのもあったし、何度も食らうことで耐性でも出来ないもんかという期待も含まれている。

 しかし、クラスⅠの魔術のせいなのか一度も効果が表れることはなかった。

 もしかしたら、自分自身に使用しても恐怖の効果はでないのかもしれない。


「無属性魔術はクラスⅢまで使えるようになったってのによ」


 もう1つ、【闇の囁き】の効果が表れない理由として、クラスⅢの無属性魔術である【魔術抵抗強化】を自身に掛けているせいもあるかもしれない。

 クラスⅢの無属性魔術には他にも【魔力の壁】というものがあって、これは攻撃魔術などに対して防壁を展開する魔術だ。

 この2つの魔術があれば、ミランダの【轟雷】のダメージを少しは軽減出来ていただろう。


 そして闇魔術に関してだが、やはり影治が天使種族ということで適性があまりないのか、これだけ四六時中闇魔術を使用していても、未だにクラスⅡの魔術すら使用することができない。


「ううむ、こりゃあ闇魔術のクラスⅡを覚えたら他の属性を伸ばすべきだな」


 ミランダの【轟雷】や、ピー助の光のハイクラス攻撃魔術を見て以来、影治はクラスの違いによる威力の違いを思い知っている。

 火や水などはクラスⅢまで使用可能だが、その先がちょっとなかなかすぐに使える気配がなかったので、最近は積極的に訓練をしていなかった。


 だが適性が低い闇魔術の訓練をしたことで、他属性にどれほど適性があったのかというのを感覚的に掴んだ。それはこれまで意識したことがない感覚であった。

 とりあえずグレイスからは火魔術のクラスⅣまでを教わっているので、まずは火魔術。そして無属性魔術もクラスⅤまでは教わっているので、これも並行して訓練していくことになるだろう。


「【闇球】、【闇の玉】、【闇の囁き】…………。お、あれは」


 魔術の訓練をしながらも、しっかり周囲の状況を観察しながら歩いていた影治は、とある植物に目がいく。


「少々小柄だけど、竹っぽいのが生えてんじゃねえか。こりゃあちょっと採取していかんとな」


 辺りを見回すと、この辺りには竹が結構生えている。

 試しに1本切り落として手に取ってみるが、質感や中が空洞なのも同じだった。


「よし、いけそうだ。ガンガン伐りまくるぞ!」


 これだけ竹が生えている場所なら、時期と時間帯によってはタケノコも採取できるかもしれないが、影治が竹を取ろうと思ったのは竹籠を作ろうと思ったからだった。

 竹に関しては、前世に島でひとり暮らしていた時によく扱っていたものだ。


 魔術によって次々切り倒された竹を、これまた加工しやすい形状に魔術で切り分け、器用に竹籠を編んでいく影治。

 これまでは野焼きの土器バッグで荷物を持ち歩いていたが、竹なら軽くてしなやかなので持ち運びが大分楽になるだろう。


「んー、あと3、4本欲しいかな」


 7割方完成した大き目な竹籠を前に、影治は必要な分の竹の量を目算する。

 そして近くの竹にこれまで通り【風斬】を発動させた。

 すると、「ばああぁぁぁ……」という声と共に竹が倒れる。


 よく見てみると、この倒れた竹は地面に完全に埋没しておらず、根本の部分で落書きで描くような棒人間の足の形状になっていた。

 更に顔に当たる部分にはギザギザな歯が生えた口や眼などもある。


「……え、なに? 魔物か?」


 知らぬうちに魔物を倒してしまっていた影治。

 だがよく見ると、根本の部分が二股に分かれているだけで地面から生えていない竹は他にも存在していた。

 そいつらは一斉に偽装を解き、歯をむき出しにしてカタカタとさせている。


「ばんぶぅぅぅぅ……」


「ええい、寄るな! 【風斬】、【風斬】!」


 普通の竹に紛れて接近してきていたのか、最初の魔物竹が倒されると次々に影治へと襲い掛かってくる。


「ましゅうぅ……」


 と同時に、これまたどこからやってきたのか、体長20センチちょっとのキノコの魔物も集団で襲ってきた。


「おいおい。お前ら仲悪いんじゃなかったのかよ! 【闇球】、【闇球】!」


 影治が竹籠作りに熱中している間に忍び寄っていたのか、どちらも数は10匹以上はいたのだが、多数相手の戦闘は慣れている。

 魔物竹は長くしなる両手を鞭のように打ち付けてくるが、元々森の中だったので影治は周囲の木や魔物ではない竹などを利用しつつ、攻撃を躱していく。

 魔物茸の方はどうやら後衛タイプのようで、クラスⅠレベルの土魔術を使ってくるようだった。


「丁度いい。試してみるか」


 ひとつ思いついた影治は、まずは邪魔な魔物竹をしとめていく。

 魔物茸もある程度は狩っていくが、敢えて全ては狩りきらずに魔物茸の使用してきた土魔術を敢えてまともに受けてみた。


「ぐ、むむ、この程度か」


 特に何もしていない状況でも、魔物茸の放った【土弾】と思われる攻撃魔術は、影治にあまりダメージを与えていない。


「こいつらの魔力が弱いのか、或いは俺の地属性の適性のせいなのか」


 続けて影治は、【魔術抵抗強化】を使用した状態で【土弾】をもらい、最後に飛んできた【土弾】を【魔力の壁】で受け止めてみる。

 結果、【魔術抵抗強化】を掛けたことで更にダメージは減少し、かすり傷程度のダメージにまで抑えられた。

 【魔力の壁】は物理的な攻撃を完全に素通りさせてしまうが、土で生み出した弾を撃ちこむ【土弾】に対してはしっかり防壁として機能した。


「ふむ、こんなものか。村人相手だとクラスⅠでもそれなりに効いてた気がするけど、戦える連中相手だとこんなもんなんだろうな」


 検証を終えた影治は、残った魔物達を仕留めていく。

 ドロップとして魔物竹からはタケノコが。

 魔物茸からはキノコがドロップしたので、影治はそれらを回収していく。


 その後は、途中だった竹籠作りを再開。

 ただ大分時間を食ってしまったので、この日はここで野宿することになる。

 晩飯にドロップしたタケノコやキノコを肉と一緒に炒めた料理を作り、満足した影治はピー助に見張りを任せてこの日は就寝した。



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