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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第21章 戦乱の予感

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第775話 選抜メンバー


「この奥にいるのは災厄級なのだろう? それなら某たちだけで十分じゃ」


「そーよそーよ! あたしらだって、いつまでエイジにおんぶにだっこのままじゃないんだから!」


「いや、だけどな。ダンジョンを攻略した奴の話は、最も新しいものでも100年以上前だ。そんだけ攻略者はいなかったし、報告が少ねえから前回と同じ魔物が出るとも限らねえ。以前倒したリッチとは条件も違えんだぞ?」


 これまでもリュシェル達は、影治のいない状態で災厄級の魔物の討伐をしたことがある。

 にも拘わらず影治が反対しているのは、今回は以前とは条件が異なるからだ。

 以前ホープヒルキングダムでリュシェル達が倒したグレーターウォーターリッチには、明確に弱点属性があり、なおかつその弱点属性を攻撃できる術者が揃っていた。

 またフィールドタイプであるホープヒルキングダムでは、中ボス戦に人数制限が課されなかった事も大きい。


 だが今回はボス部屋の人数制限がある以上、全員で一緒に挑むことはできない。

 影治としてはいつも通り自分も中に入るつもりでいたが、そこをガンテツやシャウラらに押しとどめられているところだった。


「エイジ様が我々を心配する気持ちは嬉しいのですが、それだと返って成長を妨げる事もありましょう。私も全力を尽くしますので、どうか私達にお任せ下さいませんか?」


「リュシェル……」


 リュシェルの説得に、影治は無意識に収納魔導具(アイテムボックス)から木彫りの像を取り出すと、心配する気持ちを抑えるように撫でつける。

 新参のセルマやヨイチはそれが何なのか知らなかったが、過去の話を聞いているリュシェル達は不器用に彫られた像の素性を知っていた。


「仕入れた情報ですと、このダンジョンの守護者はアステリオスという上位のミノタウロスの魔物ですわよね? エイジの言うように、今回もアステリオスが待ち受けているは分かりませんが、私達はこれまで何度か災厄級の魔物とも戦っています。心配いりませんわ」


 そうは言うカレンだが、自分でも完全にそう信じきれてはいないのだろう。

 それなりに長い付き合いになる影治には、カレンの声に微かに揺らぎがある事を聞きとっていた。


「この女の意見に賛成するのは腹立たしいですが、今回は私も参加するので絶対安心とまでは言い切れませんが、ほぼほぼ安心である事は私が保証しましょう」


「……これで更にピー助達もつれていけたらよかったんだがな」


 リュシェル達の案では、参加するメンバーはリュシェル、セルマ、シャウラ、ガンテツ、カレン、ティアの6名となっている。

 後衛としてリュシェルの代わりにヨイチを入れるという案もでたが、話し合いの末その案は却下された。


 強さ的には問題ないが、まだまだ新参で息が合っているとは言えないし、前衛が危ない時などにはリュシェルの植物魔術でエントを呼び出して盾にすることも出来る。

 それに影治がニューホープの事業に専念している間、皆を指揮してきたのはリュシェルだ。

 その際に、冷静な判断力を持つ優秀なリーダーの資質を見せていた。


 なおこの6人のメンバーにピー助達を加えることはできない。

 最初は精霊は人数の枠外に入るのかと思っていたのだが、実はそうではないことが明らかになったのだ。


 これは他のダンジョンでも同じ仕様なのかは不明だが、精霊などの主と契約中の者の場合、その主の分が一人分としてカウントされてしまう。

 なので影治が参加していれば、ピー助とウルザミィを入れても一人分で済むのだが、影治を外してピー助とウルザミィを入れようとすると、精霊の2人分は実質カウントされないのだが、主である影治の一人分だけはカウントされてしまう。

 この事は、ここに来るまでの5層、10層、15層のボスで確かめてあるので、恐らくは守護者の待つこの扉の先も同じ条件だと思われる。


「ぴぃぃ……」


「グィ」


「妾がついていけないのは残念だが、ここは仲間を信じて待つもまた王としての在り方よ」


「別に俺は王って訳でもねえんだけどな……」


 影治としてはそのつもりはなくとも、周囲からはそのように思われる事は多い。

 リュシェルなどは王という人の枠組みを超えて、内心で神のように奉っているくらいだ。

 ウルザミィも妖精を連れた天使という、リョウとの共通点の多い影治の事を、ついついホープヒル王国時代のリョウと重ねて見ている部分があった。


「ししょー。わたし、すっごいがんばるっ! から、行かせてほしい」


「……情報通りアステリオスが中にいるとしたら、ミノタウロスなんかよりも更にすんげえパワーの持ち主って事だぞ? パワーだけじゃねえ。スピードだってかなりのもんになる筈だ」


「ししょーには、いろいろよくしてもらってる。それはうれしい。でも、それいじょーにわたしは強くなりたい! ごめんなさいだけど、おねがい」


 無口という訳でもないが、普段言葉数が少ないシャウラがここまで長い言葉を話すという事は、それだけ強い思いが込められているという事でもあった。

 それは何もシャウラだけではない。

 ガンテツもティアもカレンも……皆同じ決意の目をしていた。


「……分かった。なら挑む前にはしっかりバフをかけまくってやる」


「いえ、エイジ様。それはなりません」


「何でだ?」


「あくまで私達だけの力で挑む事が重要なのです。勿論今日の私達の得ている力は、エイジ様がいなければ手に入らなかったものでしょう。ですがだからこそ、そうして得た力だけで強敵を倒す事にこそ意味があるのです」


「それは……そうなのかもしれねえが……」


「もう、らしくないわよ! いつものエイジだったら、どーんと行って来い! ってゆーところじゃないの」


「危険は覚悟の上です。リスクなしに力を得ようというのは、必ずしも悪い事だとは思いませんが、それだけでは超えられない壁というものが出てくるのだと思います。私はそれを自分力で乗り越えたいのですわ!」


 まるで初めてお使いにいく子供を心配する、親のような心境の影治だが、影治以外はすでに割り切っていてやる気を見せている。

 珍しくこの場で後ろ向きな考えをしているのは、影治だけという状況だ。

 仲間たちの熱気の前に、取り出した木彫りの像をギュッと握りながら影治も状況を受け入れることに決めた。


「……バフはともかく、アイテム系はどんどん持ってってくれ。どうせ普段はあんま使わねえんだから、ジャンジャン使ってくれていいぜ」


「そうですね。ライトニングヒーローの皆さんも、呪符などは駆使しておられましたし、それはありがたく使わせて頂きます」


 一般的な冒険者にとって、通常戦闘ならともかくボス戦ともなればアイテムの補助は必要不可欠だ。

 魔術師の数も使える魔力量にも限界はあるのだから、それを補助する為の各種ポーションや、バフ、デバフ効果のある呪符などは大いに役に立つ。


「では、行って参ります」


「力になれねえあたいの分まで、きっちりと働いてきてくれよ!」


 これまで言葉少なに話を聞いていたエカテリーナが、仲間に向けて精一杯のエールを送る。

 メンバーを決める話し合いの中で、真っ先に外されてしまったのはエカテリーナであった。


 ダンジョン内を探索するのには、シーフ職の彼女の力は有用ではあるのだが、まだ戦闘面では他のメンバーに一歩か二歩遅れを取ってしまう。

 その事はエカテリーナ自身も理解していて、毒やアイテムなどを駆使した絡め手による戦い方の他に、灰猫へと進化してから修得した重力魔術を活かした戦闘スタイルの模索もしている。


「命だけは失うような真似はするなよ? 体が無事だったら、俺がなんとでもしてやるからな!」


「私も更なる植物魔術の深奥を見てみたいですからね。そうそう死んではいられませんよ」


 軽く微笑みながらそう答えると、無言で頷き合ったリュシェル達が扉の方に向かう。


 ギギィィ……。


 石同士がこすれるような音と共に、大きな石扉を開けたリュシェル達が奥の部屋へと向かった。

 その背中を見送る影治は、行くなと声を掛けたい衝動をグッと堪えて彼らを見送る。


 リュシェル達はその前向きな(こころざし)故か、一度も背後を振り返る事なく前に歩き続けており、やがてバタンッ! という扉が閉まる音によって両者の世界が隔たれた。


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