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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第19章 クリスティア島
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第707話 ヨイチの経歴


「やっぱりそうか」


「ま、ヨイチも影治もこっちじゃ珍しい名前だから分かりやすいわな」


「名前を聞く前からそうじゃねえかとは思ったがな」


「うん? 見た目だけなら日本人の特徴なんてないだろ?」


「戦闘中でのことだよ。お前、俺の死毒をくらって即座に解毒ポーション飲んだだろ? 死毒はクラスⅩの死霊魔術で、そうそう知ってる奴はいねえ。なのに、お前は迷いなく解毒ポーションを取り出してたからな。その時点でお前の未来予知の特性と、詠唱を……日本語を理解出来てる可能性が浮かんだ。死の毒なんてやばそうな魔術名を聞けば、解毒ポーションに手が伸びるのも当然だ」


「げっ、あれって死霊魔術……それもクラスⅩかよ! そりゃあ見た事ねえ訳だわ。つうか、あの時の反応で転生者って感づかれてたのかよ」


「弓系のランキングストーンの事を思い出したのはその後だな。そういや、和名っぽいやつがいたなって。でもそれにしちゃあヨイチって名前は余り見ねえ名前だけど、本名なのか?」


「いや、前世での名前は山田陽介っつう、平凡な名前だよ。ヨイチってのは、まあ知っての通り那須与一から取った名前でな。昔からゲームでは弓で遠距離から攻撃するキャラが好きだったから、転生時に弓を極めようって思ってヨイチって名前だけもらったんだよ」


「シュターデンってのは?」


「それは……まあ、特に意味はねえが、かっちょいい名前を考えて付けた奴だ。なんとなくドイツっぽい響きがしてよくねえか?」


「……そうだな」


 シュターデンと聞いた影治は、理屈倒れしてそうだなという印象を抱きつつも名前の件に関してはこれ以上触れるのをやめる。


「ちなみに転生したのは何年前だ? それと転生時のポイント振り分けも教えろ」


「俺が転生したのは大体300年くらい前だな。ポイントはハイバードマンの種族と、魔術属性で植物と風。あとは言語とか基本アイテム一式とか選んで、余ったポイントは弓に全振り……だったハズ」


「チッ、基本アイテム一式を選んでやがったか」


「えっ? 気になるのまずそこお!?」


「それ選ばなかったらどうなるか知ってるか? 素っ裸でこの世界に放り出される事になるぞ」


「お前、まさか……」


「余った1ポイントを使って取った、短剣だけ持った状態で産声を上げたわ」


「捻りの効いた変質者の恰好じゃねえか!」


「うっせえ! 幸い人里離れた森の中で、誰にも見られなかったからセーフだ! それより、お前300年前にハイバードマン選んで転生したってこたあ、進化はしてねえのかよ」


「ん、ああ。ハイバードマンの段階で、既にティアが3だからな。これ以上の進化は結構厳しいんじゃねえかな」


 ティアというのは、昨今ではゲームにもよく使われている言葉で、階層を表す言葉として用いられる。

 この場合、ティア1が翼人族で、ティア2がバードマンという事をヨイチは言っているのだろう。


「そうか。ちなみにハイバードマンの必要ポイントは憶えてるか?」


「いや……流石にそこまでは憶えてねえな。ポイントが一番高かったのだけは覚えてるんだけどよ」


 流石に300年前の事となると、細かい事までは憶えていられなかったようだ。


「それより影治はどうだったんだよ?」


「答えるつもりはない」


「ええええっ! なんでだよ? 俺も教えたんだから、そっちも教えてくれたっていいだろ」


「お前な……。幾ら同郷で今は隷属状態だからって、ついさっき襲い掛かってきた相手に、そんなことまで話せるかよ」


「あっ! そりゃあ、まあ、そうだな」


「お前、調子いい奴ってよく言われねえか?」


「だははははっ! 出会う奴みんなからそれ言われるわ」


「ふぅ……やれやれだぜ」


 つい先ほどまで命のやり取りをしていたというのに、悪気のないヨイチの態度を見ている内に、割とどうでもよく思い始める影治。

 人によっては、ただ相手をいらつかせるだけだろう。

 だがヨイチの場合は、しょうがねえ奴だなと許せてしまう人徳というか魅力というか、そういった何かがあった。


「ちなみに俺以外で、これまで実際に会った事のある転生者って何人いるんだ?」


「直接会ったので言えば2人……いや3人だな」


「多い……ってほどでもねえか。俺もお前で2人目だからな。どんな奴だったんだ?」


 300年生きてきたヨイチからすると、影治との出会いが4人目。

 だが影治はまだこちらの世界に来てから10年も経っていないので、転生者と出会うペースはかなり早いと言える。

 ヴォーギル共和国のワイルなどは、200年近く生きてきたと言っていたが、実際に転生者と出会ったのは影治が初めてだと言っていた。


「最初のひとりは、まだ俺がこっちきて間もない頃に出会った、カトゥって呼ばれてた天使でな。あの人がいなかったら、とっくにくたばってただろうな」


 そう語るヨイチの表情は、これまでのお調子者の仮面の裏を垣間見たような、寂しそうでいて切なそうなものだった。


「カトゥね……。こっちには1000年前にサイトゥってのがいたらしいんだが、加藤と斎藤って事なんだろうな」


「ああ。あの人は日本での事を話しちゃあくれなかったが、多分名前はそのまま加藤だったと思うぜ。ある日突然フラッといなくなっちまって、それ以降はどこいっちまったかも分かんねえんだ」


「天使系の種族なら、寿命的にはまだ生きてる可能性はありそうだな」


「そう信じたいね。2人目に出会った奴なんかは、ほんの短い付き合いの間に死んじまったからな」


「……キャラメイク出来る時点で、この世界の人よりは有利かもしれねえが、だからといって生き延びられる程甘い世界でもねえからな」


「そういう事だろうよ。3人目に出会った人に聞いた話だと、転生者自体は結構な数が転生してるっぽいんだけど、その大半は1年ももたずに死んでるだろうって話だ」


「その話の根拠は何かあるのか?」


「それを言ってたのが、環大陸でも有名な人でな。ランキングストーンの上位陣にも名を連ねてる」


「ランキングストーンに? ってことは、シンゴって奴か?」


「いや、そいつじゃねえ」


「つうことは、マリナ・ミドーか!?」


 マリナ・ミドーは、剣術で6位。

 剣士で5位にランキングされている他、最大MPでも8位。

 神聖魔術師で1位になっていたので、影治同様に剣も魔術も使える物魔タイプだと思われる。


「そう、そのマリナさんだ。こっち(環大陸)じゃあ業火の熾天使だとか、神の代行者だとか言われてるお人でな。何でも3000年以上前から生きてるらしいぜ」


「3000年……」


 セルマの1000年でも結構な年月だというのに、マリナという転生者はその3倍もの年月を生きているらしい。

 それを聞いて影治が思い出したのは、レア物のランキングストーンの中に紛れていた、長寿ランキングだった。


 他が最大HPやら神聖魔術師だとか、戦闘に関わるランキングばかりだったというのに、長寿ランキングだけは方向性が違っている。

 そしてその長寿ランキングには、14位の所にマリナ・ミドーの名前があった。


「ってこたあ、13位以上の連中は軒並み3000歳以上ってことかよ!」


 暗黒魔術や闇魔術のランキングにセルマが載っていなかったので、セルマはランキングの対象外である事は分かっていた。

 だがもしランキング対象であっても、1000年程度生きているくらいでは、長寿ランキングには元々載っていなかった可能性が浮上する。


「ん、13位ってなんのことだ?」


「こっちの話だ。だがまあ、お前の言いたい事は分かった。データを取ってる訳ではねえが、そんだけ長生きしてる奴が言ってることだから、そう間違っちゃいねえってことだな?」


「そゆこと」


 新たな転生者の情報を得た影治は、その後もヨイチとの転生者関連の話を続けた。

 どうやらヨイチは前世の頃から弓が好きで、自作したりしてたこともあったようだ。

 生まれが田舎だった事もあって、周囲には自然が沢山あり、そこで自作した弓を使って狩りをした事もあったらしい。

 完全に違法行為である。


 だがその経験は、魔物が出現するようになった異変後に活かされる事になる。

 魔物が蔓延るようになった世界を10年以上生き延び、転生の際にも追加ボーナスポイントを得たヨイチ。

 魔術以外にも種族に振るポイントをそれなりに確保する事ができ、ハイバードマンを選択することになる。


 話の途中、影治がダメ元で異変の原因について、心当たりがないか聞いてみたが、それに関しては何も知らないという答えが返ってくる。

 無人島に篭っていた影治とは違い、ヨイチやワイルは文明の身近な場所で暮らしていた。

 だがすぐにネット回線が途絶し、無線も段々となくなっていったようで、外の状況を知る手段がなかったという。





「なあ、いい加減場所移した方がいいんじゃねえか?」


 ヨイチとの話は思いのほか長引いてしまい、すでにリュシェル達に詰め寄っていた客や船員などが軒並みいなくなっていた。

 そこで影治は遮音の香炉をオフにすると、続きは部屋の中でしようと全員に届く声で伝えて、一緒に船室へと移動するのだった。


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