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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第18章 ランクシティー
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第694話 闇魔術師ランキング68位


 ビュクロスに到着してから3日目。

 昨日は旅の目的の1であったランクホールを訪れ、気になっていたランキングを閲覧してきた。

 その結果から、影治は自分が世界的に見てどの程度の位置にいるのかを知る。

 3日目の今日は、これまで街をろくに巡れてなかったので、1日自由行動という事になった。


「それでエイジ様はどこに向かわれるので?」


「まずは都市庁舎だな。ガムルの奴に聞きてえ事がある」


 ドラゴンアヴェンジャーでは、自由行動時にある程度お決まりのグループがあるが、毎回同じメンバーで行動している訳ではない。

 今回影治と一緒に街中を歩いているのは、リュシェルとガンテツ……それとチェスだ。


「と、言いますと、あのお土産物屋にあった変わった品々の件ですか」


「そうだ。あのソードボールと呼ばれてた玩具も含め、俺の故郷で見かけたようなもんが幾つも並んでた。まず間違いなく転生者が絡んでる」


「転生者ですか! ある意味天使や悪魔といった、希少種族以上に出会う事がないと言われる存在ですが、エイジ様本人を除くとワイルに続いて2人目の所在が分かるかもしれませんね」


「ワイルなんかは名前だけ聞いても分かり辛えんだが、ランクホールで散々見た名前の中には、転生者っぽい名前もちらほらあった。どうも今生きている転生者だけでも、それなりの数がいるっぽいな」


 影治の場合、同じ元日本人として名前から判断する事も可能だが、今回のように明らかに日本人っぽい痕跡を残している者がいれば、それを追跡することも出来る。

 あれらのお土産のアイデアを伝えた人物が、何を考えていたのかは不明だ。

 足跡を残して同胞にメッセージを残そうとしたのかもしれないし、単純に自分以外に転生してる日本人がいることを知らなかった可能性もある。


「師匠もそうだが、転生者というのは優秀な者が多いようじゃな」


「うーーん、まあそりゃあ数だけはいたから、優秀な奴も多いっちゃあ多かったけどよ。だからといって、ランキングストーンにそれらしき名前の奴が多いのは、後天的なもんだと思うぜ」


 影治に関しては、前世の頃から普通の人間を逸脱したレベルだったが、他の転生者に関しては恐らく大半の者が人間の枠内に収まっていた者達だろう。

 少なくとも影治が知る限りでは、前世の世界にガチの魔法使いやら超能力者などはいなかった。

 転生時のポイント振り分けで、いい感じのを選べた奴がランキングストーンに名を連ねているのだろう。


 そうした話をしていると、目的地である都市庁舎に到着する。

 受付でガムルと話をしたいと告げると、思いの外スムーズに対面する事が出来た。

 しっかり職員にも影治達の事を言い含めてあったらしい。


「やあやあ、ようこそ。先日伺った、カベリア内への伝達は既に終えているので、余程おつむの弱い者が治める都市でない限り、エイジ殿を煩わせることはないであろう」


 2日振りに再会した都市長のガムルは、相変わらず燕尾服のようなデザインの服を着ており、服の色もこの暑い季節だというのに黒を中心に揃えている。

 相変わらず執務室内は空調が効いているので、この部屋にいる限りは余り気にならないのだろう。


「そいつは話が早くて助かる」


「まあ、連絡網は都市を中心に伝わるので、都市周辺の小さな衛星都市や村などには、伝わるのが遅くなったり連絡自体が行かない可能性はある。そこはご容赦頂きたい」


「それで充分だ。今日お前に会いに来たのはそれの確認もあったが、1つ聞きたいことがあってな」


「ワガハイに聞きたいことであるか?」


 突然そう言われ、心当たりのないガムルははて……? と首を傾げる。


「昨日はランクホールに行ってな。色々とランキングストーンを見てきたんだが……」


「ああ、ご覧になられたか。ワガハイもバーナードからしょっちゅう話を聞いておったので、エイジ殿がどれほどの実力者であるかという事も理解しておるつもりだ」


「ああ、まあ俺の評価は置いとくとしてだ。ランクホールに向かう前に、同じフランキスカ商会のお土産物屋に行ってな」


「ふむふむ」


「そこで売られてる妙なお土産が気になってな。聞けば、それらのお土産のアイデアの元は、お前が紹介した人物だって言うじゃねえか。そこで俺もそのアイデアを出した奴と会ってみてえいんだが、どうだ? 仲介料が必要ってんなら――」


「分かった、では早速紹介状を(したた)めよう」


 影治もすんなり話が通るとは思っておらず、仲介料の話を持ち出そうとしたのだが、その前にあっさりとガムルの了承を受ける。


「――お、いいのか? お前だって都市長って立場もあるが、オヴェール商会の会長なんだろ?」


「何も商人だからといって、必ずしも対価を求める訳ではない。それに、これに関しては彼女から言いつけられているのでな」


「言いつけ?」


「うむ。もしあれらのお土産について尋ねて来る者がいたら、私とコンタクトが取れるように便宜を図れ……とね」


「……ふうん、なるほどな」


「何が『なるほど』なのかは分からぬが、エイジ殿であれば紹介状以外のサポートは必要なさそうだ。彼女はどうもあれらのお土産に反応を見せる者を探しているようなので、よければ彼女を訪ねて欲しい」


 ここまで来ると、影治にも相手の意図が読めてくる。

 ガムルの話しぶりからすると、もしこの話を持ち掛けた人物が戦闘力のないような市民だったとしても、護衛や案内役を付けるなどのサポートまでも請け負って、案内させようという感じだった。

 件の人物がそこまでする理由、それはやはりその人物が転生者の一人であるからだろう。


「そりゃあいいけどよ。相手が誰かっていう、肝心な部分を聞いてねえぜ。まさかここまで来て、直接会ってのお楽しみって訳じゃあねえだろうな?」


「ワガハイとしたことが、その事を伝え忘れておった。あのお土産のアイデアを出した人物……それは、エリー・ロンド様だ」


「エリー・ロンド……。聞いたことねえ名前…………いや、見覚えはあんな。闇魔術師で68位だった奴だ」


「ほおぅ、大した記憶力だな。エリー様は、ラテニア連合国北東部にあるアドラーバーという街を拠点にしておられる。ワガハイからの紹介状があれば、エリー様とお会いする事も叶うだろう」


 話をしながらささっと書いてはいたが、封書は最後にしっかりと蜜蝋で閉じられ、印を押されて影治に手渡される。

 それを受け取りながら、影治は気になった事を尋ねる事にした。


「あんがとよ。ところで、そのエリーって女は有名なのか? 名前が出た時、リュシェルだけでなくガンテツまで知ってそうな反応をしてたよな?」


「そうですね……。最近は余り表立って活動していないので、ラテニア国外の若い世代だと名前を知らない人は多いかもしれません。ですがそういった人達でも、黒衣の魔女と言えば伝わるくらいに有名な人ですよ」


「あぁ……、やっぱこっちで活躍するとそういう名が付くんだな……」


 影治からすると中二病的な二つ名をあまり好ましくは思っていないが、この世界の人からすると真面目に考えたりした名前がこういう名前なので、嫌がるどころか積極的に二つ名を名乗る者の方が多い。


「彼女は私よりも古い時代の人ですからね。他にも二つ名はたくさんありますよ」


 リュシェルやガムル達の話によると、エリー・ロンドは400年以上前からその名を知られている人物なのだという。

 それだけ長く生きてるだけあって、ランキングストーンに名前が載るほどに闇魔術に長けている。

 なおレア物の長寿ランキングにエリーの名前が無かったので、あの長寿ランキングは最低でも400歳以上の人物がランクインされている事が判明した。









「ランキングストーンを確認するってタスクを消化したかと思えば、また新たなタスクが生まれちまったな」


 あの後、執務の時間を割いて話をしていたガムルと別れの挨拶を交わした影治達は、特に当てもなく街をぶらついていた。


「やはり会いにいくのですか?」


「まあ、そこまで優先度高い訳でもねえけどな。でもこっち(異世界)で400年以上過ごして来たって奴の話は聞いてみてえ」


「師匠であれば問題ないだろうが、エリーは色々と悪い噂も聞く。会う時は気を付けなされ」


「ハッ、何か仕掛けてくるようならやり返すだけだ。それに行くにしても、まずはグルシャスの案内の方が先だ」


 今回の旅の大きな目的の内の1つは達成した。

 この日の残りを適当にぶらついて過ごした影治達は、翌日になってから次の街へと出立するのだった。


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