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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第2章 深き地の底にて
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第71話 無属性魔術


 闇魔術を修得した影治は、最後にグレイスから無属性魔術を教わることになった。

 といっても、これは魔力を変換する必要がないので、苦戦することなくクラスⅠの無属性魔術の習得に成功する。

 教わった魔術は初級攻撃魔術である【魔力弾】。あとは【魔力感知】と【魔力の指】という魔術だ。


 【魔力感知】に関しては、影治はこれまで魔術を発動するまでもなく、自然と周囲の魔力を感じ取っていた。

 しかし【魔力感知】を使うことで更に感度が強くなり、微細な魔力も感知できるようになる。


 【魔力の指】は、魔力を一か所に集中させて指のようにして扱い、物理的な強度を持たせる魔術だ。

 あまり指自体に力を入れることは出来ないが、背中のかゆい所を掻いたりといったことはできる。


「無属性魔術には他にも五感を強化したり、身体能力を強化する魔術もあるんだけど、基本的に魔術師が武器を持って物理戦闘することはないから、余り使われることはないかな。ちょっと魔術が使える戦士なんかが、稀に身体強化を使う程度だね」


 物理戦闘を行う影治にとっては垂涎の的ともいえる【身体強化】は、無属性魔術のクラスⅣの魔術らしい。

 今の影治はクラスⅠまでしか使えないが、先のことを考えてグレイスの知っている無属性魔術については全て聞き出していく。

 グレイスは無属性魔術をクラスⅤまで使えるようで、教わった魔術の数は結構な数に上る。

 その中には、影治が苦渋を舐めさせられた魔術もあった。





「そうか。魔力の陣はクラスⅤの無属性魔術なのか」


「うん。陣魔術はそれぞれの属性に応じた陣を張る魔術だけど、無属性の場合は魔術そのものに……というより、魔力の込められた攻撃を防ぐ効果がある」


「これも壁シリーズみたいに、炎の陣とか風の陣があるのか?」


「よく分かったね。もちろんそれらも魔力の陣同様に、クラスⅤの火魔術、風魔術にそれぞれ存在するよ」


「壁系だと設置したら動かせないが、陣系は移動しながらでも常に周囲に展開できるのが強みってことか」


 街での戦闘時、ミランダが【魔力の陣】を発動したあと無防備に影治に近づいていったが、ミランダに放った影治の攻撃魔術は全て防がれていた。

 常に対象の周囲に付き纏うのは状況によっては不利にもなるが、基本的には対象を守るのに役立つ。


「けどその分、陣系の防御力はそれほど高くはないんだ。しかも魔力の陣ともなると魔力消費も多いだろうから、格下の魔術師を相手にする時くらいしか使えないって言われてるね」


「ぐ……。確かにあん時の俺は、クラスⅠの攻撃魔術を連発していたからな」


「少なくともそのミランダって女魔術師は、クラスⅤの無属性魔術とクラスⅦの雷魔術を使えるって訳だね。なかなか厄介な相手だ」


「あの轟雷ってのはクラスⅦの魔術なのか? 道理で一撃であんなにダメージもらう訳だ。まったく厄介なババアだぜ」


「……それだけで済むエイジも大概だと思うけどね」


「ああ?」


「普通の人がクラスⅦの魔術の直撃なんか食らったら、まず即死だよ」


 影治は街で暴れた時に、異様に生命力が高い相手と何人も相対したが、中には同じような見た目の損傷でも、すぐに戦闘不能になる者がいた。

 この事について影治は、この世界にはステータスとかレベルのようなものが存在しており、それらが高くなるとあのしぶとい連中のようになるのではないか? と考えている。


 だがドナとの世間話やお尋ね者になる前の街の調査では、そういったゲーム的要素の存在は認められなかった。

 そこで影治は、物知りそうなグレイスに尋ねる。


「なあ、その違いってのは何なんだ?」


「なんだい突然」


「いや。確かに俺は轟雷でかなりダメージを負ったが、即死するほどではなかった。それに、上で俺が暴れていた時に思ったんだが、あっさり死ぬ奴とこいつ人間なのか? って思う程しぶとい奴がいてな。その違いは何なんだって思ったんだよ」


「ううん……。パッと思いつく理由は2つ……かな」


「聞かせてくれ」


 影治がグレイスの目を真正面に捉えながら頼むと、小さくコクリと頷いてグレイスが続きを話し始める。


「まずはエイジが受けた轟雷についてだけど、これは適性が関係している可能性があるね」


「適性?」


「そう。その時はまだ魂環の書を使われる前だったんだろう? なら適性を失う前だから、雷属性の適性の高さによって、雷魔術の威力が軽減されたのかもしれない」


「適性にはそんな効果もあるのか?」


「私自身はハッキリとデータを取って検証はしてないけど、そう言われてるね。基本的に魔術師は魔術に対する抵抗が強い傾向があるとされているんだ」


「……ってなると、適性を失ったのは痛ぇな」


 グレイスの話によると後天的に適性を伸ばすことは可能なようだが、それまでは適性を失った不利な状態のまま過ごさねばならない。


「それは今更しょうがないよ。それでもう1つの理由だけど、レベルが関わってるのかもしれない」


「ッ!? あるのか? レベルが!」


「うんん? ええと、レベルというのは想定された概念の1つでね。魔物を倒すとレベルというものが上がり、強くなると言われているんだ」


 レベルという言葉に大きく反応した影治に訝しむグレイス。

 だが疑問はすぐに抑えて、レベルについての説明を行う。


「言われてる……って随分と抽象的な言い方だな」


「誰も存在を証明できてないからね。ただ戦闘を行う者達の間では、経験則的に知られていることだよ。『レベル』という呼び方も実は一般的ではないんだけどね」


「一般的ではない……か。道理で……」


 影治がこれまで聞き取り調査をした際は、レベルやらステータスやらというワードを持ち出していた。

 それと日頃戦闘に関わるような相手とはほぼ話していないので、経験則として知られている情報も影治には届いていない。


「私としても魔物を倒しまくることで強くなるのは間違いないとは思ってるけど、劇的に変わる訳でもないし、効果を実感するには相当な数を倒さなければならない。そうしたことを踏まえるとね……」


 ここで一旦話を区切ると、グレイスは先程の影治の質問に対して答える。


「さっきの質問の答えとしては、しぶとかった相手というのは恐らく魔物をそれなりの数倒していた相手ではないかと思う」


「ふむ、なるほど……。そう言われると納得がいく部分もあるな。しぶといなと感じた相手は、ハンターに多かった。兵士の中にもタフなのは多少いたが、割合としては少なかった気がする」


「ハンター? 狩人のことかい?」


「いや、冒険者みたいな連中のことだ。単に呼び名が違うってだけで、やってることはそう変わらねえらしいんだけどな」


「ふうん……、冒険者という連中なら聞き覚えがあるよ。ところでエイジ。無属性魔術もマスターしたし、もうここを発つのかい?」


「ああ、そうだな。いつまでもここで暮らす訳にもいくまい」


「そっか。じゃあ最後に1つお願いしたいたいことがあるんだけど、いいかな?」


 先を急ぐ旅という訳でもないが、影治としてはアンデッドがウヨウヨいる真っ暗な地下空間からは早く脱出したいという思いがある。

 それにこの上にある街には忘れ物(・・・)をしているのだ。

 それを回収しに戻らなければいけない。


「最後にお前の命をよこせええ! ってのでなければいいぜ」


 だが最後にグレイスの頼みを聞くくらいなら、影治としても問題ない。

 冗談半分に影治がそう答えると、グレイスはお願いしたいことについて話し始めた。


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