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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第2章 深き地の底にて

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第70話 闇魔術の練習


 グレイス曰く、基本的に闇属性は光属性の反対なのだという。

 一見火傷を負いそうな光魔術の【光球】は、その見た目に反して表層的なダメージは受けない。

 だがそれでも攻撃を受けた者は痛みを感じるし、何度も食らえば死ぬことだってある。

 それらの光属性の特性は、闇属性もまた同じだ。

 闇の初級攻撃魔術はそのまんま【闇球(あんきゅう)】といい、見た目以外の効果は【光球】とほとんど同じになる。


「それなら、魔力の段階でも似たような性質を持ってる……はず……」


 影治は新しい属性の魔術を覚える際の基本。

 体内の魔力を闇属性へと変換する練習を行っていた。

 しかしこれまでの属性とは異なり、天使だからなのか適性が失われたからなのか、最初の段階から躓いていた。


「あと闇魔術は相手の能力を下げる魔術もあるから、そういったイメージを持ってみるといいかも」


「能力を下げる……デバフ系か」


 闇魔術のクラスⅧまでを使用出来るグレイスであっても、感覚的なものを他者に伝えるのは難しい。

 色々とグレイスから闇魔術を使用する際のイメージなどのアドバイスも受けているのだが、一向に影治が闇魔術を使える気配がなかった。

 成果が出ないまま時間だけが過ぎ去っていく。





 結局最初のとっかかりである魔力の変換の時点で躓いてから、5日が経過した。

 味の良し悪しは別として、この地下空間でも食料を確保できることが分かった影治は、この好機に是非とも闇魔術の基本だけでもマスターしておきたかった。


 そのためグレイスに危険だと言われた、体に触れて直接闇属性の魔力を流し込む方法も試したのだが、影治の魔力量が多すぎたせいかグレイスの魔力は内部まで浸透せず、弾かれる結果となった。

 もし上手くいっていたとしても、この方法は危険だから別の方法を試した方がいい。


 そう言われた影治は、今度は自分の体に向けて何度も【闇球】を撃ってもらい、体でその感覚を捕えようとした。

 魔術というのは、適性や使用者の魔力の強さによって多少は威力に違いが出て来るが、劇的に変わる訳ではない。


 つまりクラスⅠの魔術は、偉大な大魔術士が使っても威力としてはせいぜいクラスⅡかクラスⅢに届かないくらいの威力になる。

 だがそれでも何発も何十発もその身に受ければ、命を奪うことも可能だ。


「ごめん、エイジ。少し休ませてもらうよ」


「ああ。悪いな、グレイス。でもお陰で段々感覚が掴めてきたぜ」


 グレイスは無謀な修行方法を告げてきた影治に、危険だからと当初は攻撃魔術をぶつけることを拒んでいた。

 だが影治は隠していた回復魔術のことも打ち明け、幾らでも回復できるから大丈夫だとグレイスを説得。

 その話を聞いて仕方ないといった様子でグレイスが提案を受け入れたのは、新たな属性魔術の練習をする時の方法として、影治の言ったような攻撃魔術を直に受けるという方法が確かに存在していたからだった。


 ちなみにグレイスはグルグやミランダとは違い、回復魔術の存在を知っていた。

 確かにグレイスの認識でも、回復魔術の使い手というのはかなり少ないものらしい。

 だがそれでも、【轟雷】を使えるような魔術師が全く知らないというのはおかしい、とグレイスは言っていた。


「ええっと、こうして……こう……?」


 前世の無人島で暮らしていた時とは違い、少し前まではドナと暮らし、今も人……ではないがグレイスと一緒に生活を送っている影治。

 しかし未だに影治の独り言の癖は治っていない。

 というより、すでに影治にとって独り言は考えを纏めたり、意識を集中させるためのルーティンのようになっていた。


 ひとりブツブツ言いながら、ほとんど休みもせずにこの5日間を魔術の練習に打ち込む影治を見て、グレイスはひとつの決心をする。

 しかしそのことを告げるのは今ではない。

 今は闇魔術の習得が先だ。

 それにまだ教えておきたいことはある。


 そのような視線(言葉無き言葉)が送られていることに気付くことなく、影治はひたすら魔術の練習に取り組んでいく。

 そしてついにその成果が花開くときが訪れる。


「もっと魔力の性質変化に集中して…………ッ!? これか! これだな!?」


 どうやら闇属性の魔力への変換に成功したらしく、喜びの声を上げる影治。

 その様子を微笑ましい表情で眺めながら、グレイスは影治に声を掛ける。


「そこまで出来たなら、エイジならもうクラスⅠの魔術はいけるんじゃないか?」


「ああ……。早速試してみる!」


 まるで子供のようにはしゃぎながら、闇の初級攻撃魔術【闇弾】を1発で発動させる影治。

 やはりとっかかりの属性魔力変換部分を突破できれば、クラスⅠの魔術程度は影治にとってお茶のこさいさいなようだ。

 だがこれまでで一番苦労した覚えただけあって、影治は今までで一番の喜びを浮かべている。


「本当にたいしたものだね。後はクラスⅠから徐々にクラスを上げていけばいいよ」


「おう! あんたにもお世話になったが、そろそろここを脱出する為に動き出さねえとな」


 スッキリとした表情を浮かべる影治。

 だがグレイスは影治にまだ伝えていないことがあった。


「あー、それなんだけどね。実は私が使える魔術は他にもあるんだよ」


「え、マジか?」


「うん。……というか、てっきりエイジも使えるもんだと思ってたんだけど、この5日間の様子を見た限りでは、その魔術の存在すら知らないのだと気付いてね。これは闇魔術ほど修得に苦労はしないと思うよ」


「何だ? 他の属性というと主要属性でいえばあと雷属性だけなんだが……」


「生憎と雷魔術は私も使えないよ。そうではなく、魔術を使える者なら誰もが使えるであろう無属性魔術のことだよ」


「無属性魔術……」


 無属性魔術と聞いて、影治は確かにそんなのもあったなと思い出した。

 メイキングの時はポイントの使い道がほぼ決まっていたので、そのほかにポイントの使い道をどうしようかということに時間を割いていない。

 あくまでざっと一覧で見た時の記憶しか影治にはなかった。


「そう。つまり、体内で属性変換をすることなく、そのままの魔力で行使できる魔術だよ。特徴としては、そのままの魔力を使うせいか消費魔力が多い点。でもその割に、無属性攻撃魔術は威力が低い。これは防御系も同様で、全体的にコストが高い傾向にある」


「……なんか欠点しかないように聞こえるんだが?」


「勿論長所もあるよ。まず属性変換をする必要がないから、魔術の発動を早めることが出来るんだ」


「あー、そらあ納得だわ」


 影治は幾つもの属性魔術を扱うので、魔力の属性変換にどれだけ時間がかかるのかよく理解している。

 それは例え無詠唱でホイホイと魔術を使えていた頃であっても、変わりない部分だった。


「それに無属性魔術には他の属性魔術にはないような魔術もある。あとは……魔術が得意ではないけど、魔力だけは多少持ってるって人なんかは、使う人もいるね。無属性魔術は扱いやすいんだ」


「ほう、それは興味深いな」


 グレイスは未だ知らないが、影治は物理戦闘も得意としている。

 それに消費魔力が多いというのも、影治にとってはマイナス要素にはならない。


「では私の知っている無属性魔術について、エイジに教えるよ」


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