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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
序章 誓い
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第5話 メイキング 前編


▽△▽△▽△▽△▽



「ん、ここは……」


 次に影治が意識を取り戻した時、自分が酷く奇妙な状態にあることを認識した。

 全く光のない完全なる闇の空間、そこにふわふわと揺蕩(たゆた)っているような……。

 そんな奇妙な感覚を覚える影治。


「宇宙……にしても星の光が一切ない。そもそも俺は一体何をして……」


 そこで影治は直前の記憶を思い出した。

 ドラゴンの巨大な鉤爪によって、自分の体が腹の部分から真っ二つに割かれてしまったということを。

 そして痛みを感じる暇すらなく、命を失ってしまったのだということを。


「そうだ。俺は(ドラゴン)に殺され……ということはここは死後の世界か?」


 そう認識した途端、影治は自分に訴えかけてくる何かを感じた。

 それは声でもなく匂いでもなく触覚でもない。

 その何かに対し、一番近しい……或いは知覚できそうな感覚は視覚だろうか。


 周囲の状況どころか、自分の体がどうなっているのかすら見通せない闇の中。

 影治は視覚そのものというよりは、とにかく『見る』ということに意識を集中し、自分に訴えかけてくる何かを捉えようとする。

 するとそれは徐々に形を成し、目で見るようにして知覚することに成功した。



≪条件が満たされています。生まれ変わりますか?≫



 そこにはそう書かれているように影治には見えた。

 その質問文の近くには『はい いいえ』という文字らしきものも表示されている。


「まさか、ここに来ての異世界転生……だと?」


 影治も世界がおかしくなる前にその手のライトノベルを読んでいたので、割とすんなりと今の自分の状況を受け入れる。

 これが辺り一面真っ白な世界であったら、もう少し早く自分の状況に気付けたかもしれない。

 よくあるファンタジー転生ものでは、『気付いたら真っ白な空間にいた』という展開が多いからだ。


「ふっ……。だがそう問われたら言うまでもない」


 表向きは冷静に対応しているように見える影治だが、今も心には死ぬ直前の激情が熱く燃え滾っていた。

 それ故ひとかけらの迷いもなく『はい』を選択する。

 どうやら手で直接触れるのではなく、ただ『はい』の部分に触れるよう意識するだけでいいらしい。

 すると更に新しい文字のようなもの影治は受け取った。



≪それでは『四之宮影治』の転生シークエンスを開始します≫



 そう表示されると、影治は自分の中を誰かに覗かれているかのような感覚を味わう。

 レントゲンとかCTスキャンとか、ああいったものを感覚として知覚出来たらこのような気分なのではなかろうか。

 そういった気持ち悪さを感じる時間が終わると、再び新たな文字が浮かび上がる。



≪精査完了。これよりメイキング画面へと移行します。なお『四之宮影治』は世界改変時より三十年以上生き延びた実績により、ボーナスとして300ポイントが付与されます≫



「300ポイントというのは三十年生き延びたからか? 何やら有利になりそうな話だが、世界改変という言葉も気になるな」


 影治は世界改変と捉えているが、元々視覚で無理やり捕らえた"何か"からの情報なので、その表現が正しいとは限らない。

 影治がそれを世界改変という風に認識しているだけで、このメッセージの主が伝えたい意味合いが全て伝わっている訳ではないのだ。


「……今時グラフィック操作(GUI)じゃなくて文字操作(CUI)か」


 先の質問に答えが来ることもなく、次の文字情報を受け取る影治。

 そこにはただ文字列が並んでいるだけで、視覚的に分かりやすいようなウィンドウ画面などは一切なかった。


「まあいい。それで並んでいる項目は……」


 そこには以下のような文字列が表示されていた。



・種族

・能力

・魔術適性

・属性適性

・魔術修得

・特殊属性獲得

・武器適性

・技術

・特殊技術

・アイテム


残りポイント:371



「やけに項目が多いな。ま、順番にみてこう」


 まずは「種族」から。

 最初に生き返るか聞かれた時『はい』を選択した要領で、心のマウスカーソルで種族の部分をクリックするよう意識する。

 すると種族の一覧と必要ポイントが表示された。


「ヒューマンが0ポイントで、ドワーフが15……。エルフが20でダークエルフが15ねえ」


 そこにはやたらと多くの種族名が表示されており、その数は軽く100を超えている。

 ただよく見るとエルフ、ハイエルフのように同系統と思われる種族も全て表示されているようだ。


「ベースとなる種族が幾つかあって、その上位種族も表示されている訳か。エルフが20ポイントなのに対し、ハイエルフは100ポイントとかなり高い」


 更にざっと目を通していく影治。

 基本的にはファンタジー作品でよく見かけるような種族が多いのだが、中にはドリアンだとかスバロンダットだとか聞いたこともない種族が交じっている。

 ちなみにどちらも必要ポイントは10であり、種族的にはベースに近い下位種族なのかもしれない。


「一番ポイントを必要とするのが、マギセラフとヘラクレスの320ポイントか」


 最初こそギリシア神話の英雄の名前が種族名になっていることに驚いた影治。

 だがよく見ると、他にもそれっぽい名前の種族はいるようだ。

 それらの中でも一番高いポイントを必要とするのが、ヘラクレスの320ポイントだった。


「一番上にあったから真っ先に開いてしまったが、他の項目と比べてこれ(種族設定)が一番重要な気がするな」


 なんせヒューマンならただで選択できるのに、最高種族だと320ポイントも使うのだ。

 これだけでボーナスでもらった300ポイントを丸々消費し、更に追加で20ポイントも必要になってしまう。

 それだけ大きな効果があると半ば直感で確信を抱く。


「ただまあ、判断するのは他の項目もチェックしてからだな」


 一覧の最後にあった戻るを選択し、種族選択場面から次の「能力」へと移る。

 そこにはHP、MP、筋力、体力、魔力、敏捷、器用という文字が表示されていた。

 それを見た影治は、とりあえず魔力に1ポイントだけ振り分けてみる。


「……元の数値が分からねえと判断しようがねえだろこれ」


 そうなのだ。

 最初に10個の項目と残りポイントが表示されたが、メイキング前の状態のステータスの数値はどこにも表示されていない。

 この状態で各ステータスを振れというのも、大分不親切な話だ。


「振ったポイントは即座に決定ではなく、すぐに戻せる……。これで少しは試せることが増えたな」


 影治が真っ先に1ポイントだけ振ったのは、キャンセルできるかを試すためでもあった。

 どうせ残りポイントが371と中途半端だったので、1ポイントだけなら無駄にしても構わないという考えも含まれている。


 ここで一度影治は種族画面へと戻り、そこでも試しにヒューマンを選択してみた。

 その結果、こちらでも一度選んだ後に解除が出来るようだったので、他の項目でも同じなのだろう。

 なお、種族を選択した際に説明文が表示されるかも? という期待は見事に裏切られた。

 非常(非情)に機械的に、『ヒューマンが選択されました』とだけ表示されるのみ。


「こんなの、実際転生してみないとどうなるか分からねえじゃねえか」


 ブツクサ文句を言いながらも、影治は次の項目の検討に移った。



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