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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第1章 獣人の少女

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第36話 魔物の巣


「……今度の骨は変な動きはしてないな」


「やっぱ、さっきの骨、変」


 影治とドナの視線の先には3体ものスケルトンがいたが、そのどれもが先ほどのスケルトンのような妙な動きはしていない。


「まるで死んでるんじゃないかってくらい、動かないな」


「エイジ、スケルトン、もう死んでる」


「ああ、そりゃそうか……。ってあのスケルトンもやっぱ誰かが死んだ後の姿なのか?」


 となると、このスケルトンはここから一番近い……と言える距離かは微妙だが、あの村の住人の成れの果ての可能性が出て来る。


「うーん、多分違うと思う」


「その根拠は?」


「スケルトンだけこんなにいるの、ちょっと変。近くに魔物の巣、あるかも」


「魔物の巣? それにスケルトンだけだとおかしいってのはどういった理由だ?」


「死体がアンデッドなったら、ゾンビ交じる。それにあのスケルトン、綺麗な骨してる」


「綺麗な骨? ……ああ、腐りかけの肉とかがこびりついてないってことか」


「そう。だから多分、近くにスケルトンの巣がある」


 魔物の巣とは、ドナによると特定の種類の魔物が発生する場所のことのようだ。

 大抵は洞窟や地下など閉鎖空間に発生することが多いようだが、中には平地にポンッと現れることもあるらしい。


「前住んでた村でも、一回だけコボルトの巣、出たことあった」


「魔物ってのは巣から生まれるのか? ということは、この辺にはゴブリンの巣が幾つかあるってことか」


「それちょっと違う。多分この辺にいるの、野良ゴブリン」


「なんだそりゃ。野良犬みたいなノリでゴブリンが野良ってるのか」


「魔物の巣で生まれる魔物、普通は巣から離れない」


「っつうことは、割とすぐ近くにスケルトンの巣があるってことか」


「多分そう。巣を放っておくと、数が増えてあふれることある。それ危険」


「その状態になると、巣から離れて暴れ出すってことか。となると、スケルトンの巣は早めに潰しておいた方がよさそうだな」


 ここから影治達の暮らす拠点まではそれなりに距離があるが、それでも徒歩で数日の距離だ。

 スケルトンなら朝夜構わず四六時中動けそうだし、スタミナ切れもなさそうに見える。

 となれば、拠点が危険に晒される範囲内だ。


「とりあえずあの3体を倒したら、巣を探してみるぞ」


「がんばる!」


 先ほどの戦闘で感覚を掴んだ影治は、これならドナでもいけるだろうと判断。

 目の前にいる3体は先ほどと同じ素手のスケルトンなので、種類も同じと思われる。


「ドナは左のを!」


 そう言って影治が駆けだすと、戦闘が開始された。

 戦闘自体は特筆することもなく、ドナも予め割り振っておいた左のスケルトンを見事単独で撃破。

 影治もサクッと2体撃破したので問題は特になかった。



「……そしてドロップが骨……大腿骨だな」


「だいたいこつー!」


「動物の骨ならスープのダシとかに利用できるが、人間と思われる骨でそれはやりたくないな」


 そう言いながら、拾った大腿骨を近くの木などに叩きつけてみる。

 強度はちょっと頑丈かな? くらいで普通に人の骨に近い硬さのようだ。


「ま、これは流石にいらんか。魔石だけは回収しておこう」


「はい、エイジ!」


「お、集めといてくれたのか。サンキューな。にしても、3体のスケルトンの内、1体だけ魔石の位置が頭蓋骨の中じゃなくて、あばら骨の……心臓の辺りだったな。この違いに何か意味はあるのかあ?」


 影治が相手した向かって右側にいたスケルトンだけ、魔石の位置が他とは違っていた。

 あばら骨に包まれているとはいえ、外部からは見えやすい位置なので試しに突きで魔石だけ弾き飛ばしてみたら、それだけでそのスケルトンは動きを止めてしまっていた。


「論理派のスケルトンが頭蓋骨内で、感情派のスケルトンが心臓部……って感情派ってなんやねん」


 一人ボケツッコミを入れながら、ドナから受け取った魔石をバスケットに収める。


「じゃあ、スケルトンの巣とやらを探してみるか」


「まかせて! 多分、こっち……」


 鼻が利くドナが先導して進んでいく。

 影治も鼻をヒクヒクとさせているが、森の臭いとは別に微かな臭いしか感じられない。

 その微かな臭いもスケルトンの臭いではなく、自分やドナの発している臭いだ。


「ドナ、臭う?」


「あー、微かにな。でもそんな気にならんレベルだぞ」


 影治が鼻をクンクンさせていることに気付いたのか、ドナが尋ねてくる。

 少女とはいえ、女性の臭いをクンクンと嗅ぐのはこの世界でも褒められた行動ではないのだろう。

 質問に肯定しておきながらも、一応フォローを入れておく影治。


「うー、臭いあると獲物にバレる。あんま、よくない」


 だがドナはデリカシー的な意味合いで気にしているのではなかったらしい。

 森の狩人のような台詞を吐く。


「ああ、そっちね……って見えてきた。あれか?」


 スケルトンに聴覚があるのかは謎だが、小声で話しながら移動していた影治とドナ。

 その二人の前に、小高く盛り上がった地形が見えて来た。

 その盛り上がった部分にはぽっかりと開いた穴があり、どうやら奥へと続いているらしい。


 入り口部分にはまるで見張りのように、武器を持ったスケルトンがいた。

 ゴブリンと同じならば、素手の奴よりは武器持ちの奴の方が強いことになる。

 2体のスケルトンはそれぞれ、錆びた鉄っぽい槍と錆びた鉄っぽい剣を手にしていた。


「錆びているとはいえ、金属製の武器は厄介だな。ドナ、あの洞穴の中にもスケルトンはいるのか?」


「うん。一杯いると思う」


「一杯? 数が分からないくらい沢山ってことか。となると……」


 影治は少し思案してからドナに告げた。


「ここは一旦退こう」







 スケルトンの巣の位置を忘れないよう、周辺を歩き回って地形を覚えたり目印などを設置したふたりは、何日かぶりの拠点へと帰ってきていた。

 留守にしていた間に拠点が荒らされるといったこともなく、原始的ながらも久々の我が家に、ふたりは体をううんと伸ばして一仕事やり終えた感を醸し出している。


「エイジでも、スケルトンの巣、危険だった?」


「ん? いや、別に行こうと思えばいけたと思うぞ」


「……ドナ、あしでまとい?」


「あー、そんなんじゃない。ちょっとスケルトンを見て思いついたことがあってな」


 申し訳なさそうに尋ねるドナに、手を振りながら否定する影治。

 影治はキャラ設定をしている時に、幾つかこの世界に関する情報を得ている。

 例えば恐らく魔術の基本的な属性は8種類あるということ。

 これまで影治が取得して来たのは、火、水、風、土、光の5つの属性だ。

 残りは氷、雷、闇の3つで、いずれこの辺りの属性も練習していきたいなとは思っている。


 そしてそれら基本の8種の属性とは別に、特殊属性というのが存在していることも知っている。

 影治が一番頼りにしている回復属性もその内の1つだ。

 そしてそれら特殊属性の中に、一つ今回の件に打ってつけの属性があったことを影治は思い出したのだ。


「っつう訳で、覚えてやろうじゃねえか。神聖属性って奴をよお!」


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