表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第1章 獣人の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/912

第34話 攻撃魔術


 影治とドナはゴブリンを狩りつつ森の奥へと進み、ある程度の成果を得ることが出来た。

 基本は魔石やゴブ布などの小物が多かったが、今回はレアとして武器をゲットしている。


「って、また石斧かよ!」


「ただのゴブリン、いいもの落とさない」


「そりゃあそうなんだろうが、石斧これで3つ目だぞ」


 ゴブリン狩り遠征に出る前、影治が一人で暮らしていた時にも石斧を1つゲットしていたが、今回の遠征で影治たちは更に石斧を2つも手に入れている。


「あいつらの持ってる石剣や石槍もドロップするんだよな?」


「うん。でも、所詮は石製。使う人、あんまいない」


「……まあ、確かにぶっちゃけ今は石製の武器より魔術のが強いからな」


 今回のゴブリン狩り遠征では、影治が新たに取得していた攻撃系の魔術の実戦運用も兼ねていた。

 属性の力を球状にまとめてぶつける【土弾】、【水弾】、【光球】は、それぞれアースボール、ウォーターボール、ライトボールと名付けられ、ゴブリンへの試し打ちが行われている。


 ウィンドカッターのように切り裂く攻撃ではないので、見た目ではあまりダメージが分かりにくいが、ただの水の塊をぶつけただけに見えるウォーターボールでも、それなりに効いているらしいことが判明した。

 ウィンドカッターよりはダメージが落ちるようなのだが、それほど変わらない回数でノーマルゴブリンを沈めることが出来たのだ。


 それは他のアースボール、ライトボールも同様で、ボールシリーズは大抵同じくらいの回数でゴブリンを倒せることが分かった。

 ちなみにライトボールは見た目はライトスフィアと似ているが、あちらはただ照明のための魔法なので、敵にぶつけてもダメージはない。


 その他に影治はファイアアローと名付けた【炎の矢】も修得している。

 こちらはより攻撃向けのようで、上手くいけばゴブリンを炎上させることも出来た。

 攻撃力も恐らくウィンドカッターよりは高く、単体相手なら周囲が火事になる可能性を考慮しなければ、ファイアアローが一番優秀だと思われる。





「エイジ! ゴブリン達が!」


 ぶつくさいいながら影治が石の斧を回収していると、ドナが緊迫した声を上げる。

 ゴブリン狩りにも慣れてきたドナがこのような声を上げるということは、これまでとは違う何かを感じたのだろう。


「どうした? 相手はゴブリンなんだろう?」


「うん……。だけど、多分たくさん……いる」


 鼻をクンカクンカさせながら、臭いでゴブリンの数を探っているドナ。

 この様子からすると、4体や5体どころの集団ではないのかもしれない。


「エイジ……どうする?」


「ううん……たくさんってのは、100より多いか?」


「さすがに、そんなにおおくない」


「なら殺るか」


「……だいじょぶ?」


 ゴブリン狩りにはそれなりに自身をつけてきたドナだったが、相手の数の多さに不安になっているらしい。

 以前影治が教えた相手の数が多い時は逃げろ、という教訓を覚えているのだろう。


「まあ、ドナ一人だったら逃げるのが正解だ。だが今は俺がいる」


「でも、数おおいよ?」


「大丈夫だ。ドナは無理に沢山相手せず、逃げ回りながら着実に1体ずつ仕留めていけ。それに……相手が集団なら試してみたい魔術もあるからな!」


 影治が前に教えたこととは反するが、場合によっては嫌でも多勢相手に戦う場面も出て来る。

 そういった時にぶっつけ本番で臨むよりは、影治という御守役がいる今のうちに経験しておくことも重要だ。


「それで、そのゴブリン達はこっちに向かってきてるのか?」


「うん。多分、こっちに気付いてる」


「それなら準備を整える時間はあるな」


「準備?」


「まあ本来なら人数差があってまだ相手との距離があるなら、逃げるのがいいんだけどな。でも戦うと決めたなら、簡単な罠を仕掛けたり、戦場を選ぶことも出来る」


「……つまり、どういうこと?」


 ドナはいまいちピンと来ていないのか、眉間にシワを寄せながら尋ねる。


「そうだな。今回は相手のが多勢だから、この森の地形は悪くない。木々を盾にして攻撃を防いだり、姿を隠すことも出来る」


「ふむふむ」


「ただ今回は最初に俺が魔術を使いたいので、ちょっと開けた場所が好ましい。という訳で、少し後退するぞ」


「わかった!」


 元気よく返事するドナ。

 それから二人は来た道を少し戻り、そこだけ木々が生えておらず太陽の光が差し込む場所へと辿り着く。

 広さ的には小さな広場といったくらい。

 影治とドナは、その広場と森の境目辺りに待機して、ゴブリンの集団を待ち受ける。


「来た!」


「ほおう、数は30位とゴブリン村よりは少ないが、ホブゴブリンに杖持ちゴブリンもいやがるな」


 これまで出会ってきたゴブリンにも武器持ちのゴブリンはいたが、今影治が言ったようなゴブリンとは出会ったことはなかった。

 だが影治は前世の島暮らしの時に、これらのゴブリンと戦った経験が何度もある。

 当時は魔術も使えず、杖持ちゴブリンが使う魔術を必死に盗み見して覚えようとしたこともあった。


「あん時ぁ一方的に魔術を撃たれるだけだったがなあ。今の俺は一味も二味も違うぜえ」


「BJH)GAB!!」


 その影治の言葉がきっかけになったかのように、相手ゴブリン集団のリーダーらしき一回り体の大きいホブゴブリンが、号令のような声を上げる。

 すると杖持ち以外の武器持ちゴブリン達が、一斉に影治たちへと殺到する。


「ハッ! 甘い、甘々なんだよお! ウィンドダンス!」


 妙にテンションの上がっている影治が、風魔術の【風の舞】――ウィンドダンスを発動させる。

 これはゴブリン村での戦いを経て、集団に効果のある範囲攻撃魔術が欲しくて練習した魔術だ。

 効果は一定範囲に風の刃を生み出して切り裂くというもので、一つ一つの刃のダメージはウィンドカッターには及ばないが、無数に切り刻まれるので単体相手に使用しても、ウィンドカッターよりは強い。


 ただこの一発だけで仕留めきれたゴブリンはいなかった。

 元々ウィンドカッターでも2発か3発撃たないと倒せないのだ。

 それを承知していた影治は、接近される前に更に2発目のウィンドダンスを放つ。


「あともう一発は……無理か。ドナ! あの杖持ちが使ってくる魔術には気を付けろよ!」


「わかった!」


 2発目のウィンドダンスでも、倒れるゴブリンは一体もいなかった。

 だがあちこちに傷を負ったゴブリン達の様子を見るに、あと一押しすれば倒せそうな個体が多いように見える。

 今回だけはドナに実戦訓練をさせてやるというよりも、とにかく先に数を減らしてやろうと、影治はしょっぱなから全開で挑む。


「……ふっ、ほぉっ。アースボール! ウォーターボール!」


 戦場全体に注意を払いながら、ドナに複数のゴブリンが向かっている時や、杖持ちゴブリンが魔術を使ってきた時などに、影治は魔術でそれらを迎え撃つ。

 と同時に、身軽な動きで次々とゴブリンの急所を穿ち、着実に仕留めていく。


 影治も体式鍛錬などを始めたせいか、これまで以上に今の新しい体を使いこなせるようになっていた。

 そのおかげで、ゴブリン村での戦闘時より更に素早くゴブリン達を仕留めていく。


「殺ったどおお!」


 最後に残ったボスと思われるホブゴブリンを討ち取った影治は、勇ましく勝鬨を上げる。

 ……ただ台詞的には、無人島生活で獲物を取った時と同じような言い回しなのがどこか残念であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

完結しました! こちらもよろしくお願いします! ↓からクリックで飛べます!

どこかで見たような異世界物語

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ