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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第257話 等級


「なかなか面白ぇ技だな。だがそろそろ幕引きにさせてもらうぜ」


 水魔術と闘気術の融合という点には関心した影治だったが、この技自体はもうある程度見切っていた。

 実際に一度水流で押し戻される経験をしたことで、どの程度の力でどの位置から切り込めばいいのかなどは見えている。

 水流の速さを調節できるとか追加でもう1本出されるだとか、様々なケースを想定した結果、このまま行けると判断した影治はここで決めにいく。


「じゃあ行くぜ。――四之宮流古武術、壱払(いちのはらい)


 それはオークエンペラーをも仕留めた、基本攻撃による連続攻撃そのものが技となっている壱払だった。

 その時の状況、敵の特性などによってその後の流れが変化していく技だが、最初の一振りだけは『払い』に決まっている。


 壱払、弐払(にのはらい)参払(さんのはらい)と払い攻撃が3連続で繰り返された後、突き攻撃が差し込まれる。

 これらの連続攻撃に対しフランデルクは、剣で受けたり、躱したり、水流で受け止めたりして防いでいく。

 だがそれらは既に影治の予測の範囲内であり、攻撃を防ぐ度にフランデルクの選択肢は狭められていった。


 ガキィィィィンッ……。


 そこへ捌払(ろくのはらい)によって、フランデルクの剣を絡めとるようにして手から弾く音が周囲に響く。

 本差しを弾かれ、脇差も先ほど斬り飛ばされた舌と一緒に視界の隅に飛ばされている。

 武器を失い、一瞬茫然とした表情を浮かべるフランデルクの喉元に、次の突き攻撃が向かう。

 だがこれはあくまで模擬戦であるので、切っ先がかするほどの距離で寸止めされた。


「勝負アリ……だな?」


「……拙者の負けでござる」


 素直に負けを認めるフランデルク。

 とはいえ、これが実戦であったならば、今ので決着はついていなかった。

 例えあのまま首元を突いたとしても、異様にタフで頑丈なこの世界の武人は仕留めきれなかっただろう。

 もしフランデルクを完全に仕留めきるのだったら、9手ではなく10手以上の攻め筋が必要だった。




「うううん……。負けるにしてもこんな風に負けるとは流石に想定外だわ」


「無様な姿を晒してしまったでござる」


 飛ばされた武器を回収し、(ワイル)の下へと戻ったフランデルク。

 剣の腕に関して言えば、フランデルクはワイルより間違いなく上だ。

 だが幻覚魔術などの魔術を使うワイルとまともに戦えば、フランデルクに勝ち目はない。

 だがそんなワイルでも、影治相手に勝てるビジョンが浮かばなかった。


「いやいやアレはしゃあねえって。あんなのオレでも無理だろ」


「そんなことはっ! ワイル様には、ワイル様には幻覚魔術があるでござる!」


「冷静になれよ。その自慢の幻覚魔術……しかもユニーク級の魔導具、黄金遮布(おうごんしゃふ)を併用した状態のオレの隠蔽を見抜いたんだぞ?」


「そ、それは……」


 魔導具「黄金遮布」は、身に着けた者から漏れ出る魔力の隠蔽の他、臭い、音、気配などを遮る効果がある隠密用の魔導具だ。

 しかも魔導具の等級は国宝レベルのユニーク級であり、それだけ遮蔽効果も高い。


 この世界の魔導具には……いや、魔導具に限らず武器や防具。魔物のドロップや金属、木材などの素材に至るまで、等級というものが設定されている。

 もっとも価値が低く、鑑定結果に何も表示されない無級から始まり、6級、5級と上がっていく。

 1級からは特級、レア級と上がっていき、その次が黄金遮布のユニーク級となる。


 これらの等級は誰かが定めたものではなく、迷宮遺物の鑑定機能を持つ魔導具を使用した際に表示される等級だ。

 どのような基準で等級が決まっているかは不明だが、単純に脅威度の高い魔物のドロップや、ダンジョンの深層の宝箱で得たものが、基本的に等級は高くなる。


 またポーションにも当然ながら等級が設定されているが、それとは別にポーションには人間が定めた等級も存在するので、少しややこしいことになっている。

 以前、セルマが影治によって切断された腕をくっつけた時は、3等級のヒールポーションが使われていた。

 だがあれは実際の所はレア級であり、2等級のポーションがユニーク級となる。

 なおこれら鑑定の迷宮遺物では、人や魔物などは鑑定出来ない。


「それに、奴は魔術も……少なくとも攻撃魔術などは使用してない。何を隠し持ってるか分からん相手は苦手なんだよ」


 こっそり強化魔術などを使われていたら見分けが難しいが、明らかにそれと分かる魔術は使用されていなかった。

 これは純粋に、影治が相手の剣の腕を知りたいから剣で挑んだという理由からだ。

 それはワイルからすれば、手の内を伏せられたのと同じであり、まだまだ切り札を持っているだろうと予想していた。


「さて、これで決着はついた。こちらの力の一端は見せられたと思うが如何か?」


 ワイルとフランベルクが戦闘後に感想などを話し合っているのと同様、影治の周りにもティアやカレンが近寄って話しかけており、中でもアステリオスが俺様とも戦ってくれ! と喚いているのがワイルたちのいる場所まで聞こえてくる。

 そんな中、立会人を務めたダンフリーは、シバスチャンと共にワイルたちのいる方へと歩み寄り、話し掛けた。


「……そうだな。シドニア伯の完全な制御下にはなさそうだが、共に戦ってくれるってんならこれほど心強いもんはねえ」


「では……」


「ああ。国に帰ったら、反帝国派とは手を取り合うよう進言しとく。ただウチ(ヴォーギル共和国)は知っての通り共和制だ。オレひとりの意見が(まか)り通る訳じゃねえ」


「承知しているとも。だが国父である貴殿の同意が得られたことは、大きな意味を持つと私は考えている」


 実際なんでもかんでもワイルの言う意見が採用される訳ではないが、今回の件に関しては、将来的なことを考えると十分乗っておくべき問題だ。

 そして実際に自分の目で強力な協力者の存在を確かめたワイルは、自信を持って議員たちに同盟を薦めることが出来る。


「そんじゃあ、もう少し細かい話を聞かせてもらえるか? 使者を通してでは伝えられなかったこともあるだろ」


「そうだな。ではまた応接室までご足労願おう。……アステリオス、戻るぞ!」


「俺はもう用済みってことでいいのか?」


「ああ。エイジのお陰で無事協力を取り付けることが出来た。この件に関しても後で報酬を用意しよう」


 なかなか人使いが上手いのか、なんだかんだでダンフリーに手を貸している影治だったが、別段そのことを面倒だとか嫌だとか思っていない。

 なんだかんだでダンフリーの持ち出す話は、影治にとっても興味あるものであったり有益であったりすることが含まれているからだ。

 存外、ダンフリーはそこらへんを見極めているのかもしれない。


「あー、伯爵。ちょいとお願いがあるんだが……」


 ワイルとの話が纏まったダンフリーは、更に話を詰めるために応接室へ戻ろうとアステリオスに声を掛ける。

 だがアステリオスは影治の傍から離れず、願い事があると告げた。


「……エイジ。すまんがついでにその男のことも任せた」


「お、流石伯爵! よく分かってるぜ! なあ、伯爵もこう言ってることだし、俺様とも模擬戦をしてくれよ。なっ?」


「お前は技巧派とは相性が悪いんじゃなかったか? さっきの見てりゃあ分かると思うが、俺はフランデルクよりは腕が立つぞ」


「だからこそじゃねえか! アイツ(フランデルク)は護衛の任務中だし、隣国のお偉いさんの関係者だ。その点、お前(影治)は同じ冒険者で拠点も同じと来てる。だからやろうぜ!」


「チッ、約束もしてないのに、友達の家に勝手にずんずん上がり込む奴みてえな図々しさだな!」


「おうよ! 友達相手に遠慮なんざしねえもんよ」


「別に俺とお前は友達でもねえだろうが!」


 面倒な奴に目を付けられたと、苦々しい表情の影治。

 別にちょっと模擬戦をやる程度なら、普段の影治であればそこまで拒絶はしない。

 だがズイズイとパーソナル領域に入り込んでくるアステリオスに対しては、素直に模擬戦を受ける気になれなかった。


 しかし、直球でダメだと言っても全く堪えないアステリオスに対し、ついに根を上げた影治は、何戦か相手することとなる。

 それはそれで同じシラーシ流剣術でありながら、身体能力に優れた獣人族の特性を活かした戦い方であり、影治としてもそれなりに得る部分があった。


 だが本来は魔術の修行をしにきたのであり、ダンフリーの呼び出しに加え暑苦しい男(アステリオス)の相手をさせられたことで、結局魔術の訓練はあまり時間が取れていない。


 そうして模擬戦を終えアステリオスが去っていった後、短めの魔術訓練を終える影治たち。

 模擬戦に時間を取られ、少し不機嫌になったティアを連れて帰る前、使用人にワイルと話す時間が取れないか尋ねる。

 だがどうやらまだ応接室での話し合いが続いているらしく、今日はもう時間が取れないという返事をもらった。


「ま、明日でもいいか」


 別に焦る必要もないと思い、使用人に伝言を頼んだ影治は、スタスタと宿へと戻る。

 しかし翌日の朝になって宿の1階へと降りてきた影治は、ワイル達一行がすでに街を出たという話を聞くのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アステリオスがあのキャラに見えて仕方ない
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