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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第246話 ランキングストーン


「試すってのは何だ? 試供品でもくれんのか?」


「いいえ、違います。すぐに用意してくるので少々お待ちいただけますか?」


 グルガンはそう言うと、影治の返事を待たずにカウンターの奥に消えていった。

 買い物は済ませたので別にこのまま帰ってもよかったのだが、試すという言葉の意味が気になった影治は、そのままカウンター傍で待つ。


「よっと……。お待たせしました」


 カウンターへと戻ってきたグルガンの両脇には、幾つもの石板が抱えられていた。

 大きさはどれも一緒で、平均的なノートパソコンと同じくらいだ。

 ものによって多少色合いが異なるが、グレーを基調としている。


「なんだぁ、それは?」


「……もしかしてランキングストーンですか?」


「流石にリュシェル様は御存じでしたか」


 影治の率直な疑問に、グルガンが答えるより先にリュシェルが答えを述べる。

 それは間違いではなかったようで、この石板はランキングストーンという代物らしい。


「仰るとおり、これはランキングストーンという迷宮遺物です。効果としては、名前の通りにランキングを順位形式で表示してくれるんですよ」


「ああん? いまいちよく分からねえんだが、そもそもランキングってのは何のランキングなんだあ?」


「それがまた種類が豊富でしてね。例えば……こちらのランキングストーンは、髪の毛の長い人ランキング、ですね」


 カウンターの上に取り出した石板の上部には、髪の毛の長い人、と書かれてある。

 グルガンはそのタイトル部分に触れ、恐らくは魔力を流したのだろう。

 元々描かれていた飾り枠の内側に、髪の長い人と思われる人物の名前が、1位から20位までのランキング形式で浮かびあがった。


 だがどうやらまだ続きがあるらしく、グルガンがスマホのタッチパネルのように石板の表面をスライドさせると、画面がスクロールして21位以下まで表示される。

 最下部には100位と表示されているので、髪の長い人ベスト100がこれで分かるということだろう。


「……色々と突っ込みどころが多いけど、そんなこと知ってどうすんだ?」


「そこはまあ他にも種類が色々ありますから……。こちらは魚料理が上手い人で、これは臆病者ランキングですね」


 次々と石板……いや、ランキングストーンを取り出して起動させていくグルガン。

 まったく役に立たないとは言えないランキングも含まれているが、そもそも表示されているのが名前と順位だけだ。


 魚料理が上手い人は名前だけ知ってもどこの人か分からなければ、直接会わないと魚料理を作ってもらうことも出来ないし、髪の毛の長い人ランキングも、名前だけでそれぞれの髪の長さが表記されていないので、いまいち参考にならない。


「エイジ様。確かに今幾つか起動したのは微妙なラインナップでしたが、ランキングストーンはその種類の豊富さから、コレクターも多数存在しております。それにこのランキングは魔導具を起動した時に更新されるので、常に最新のランキングが見れるのですよ」


「最新ったって、対象はどうやって選出されてんだ? 地方ごとに区切ってんのか、大陸規模で区切ってのかも分からねえじゃねえか。それに――」


「世界ですよ」


「――あ?」


「このランキングは世界中の人間が対象になっていると言われています」


「世界中って……お前、そらまたどういう仕組みがアレなんだ? つうか、リアルタイムでランキング更新ってのも……」


「凄いですよね? 世界中にコレクターがいるのも納得の魔導具ですよ!」


 驚いた様子の影治に何故か少し得意気に語るグルガン。

 だが影治はランキングストーンの性能に驚いているだけではなかった。

 なまじラノベなどの知識があるせいで、このランキングストーンという魔導具の存在が、まるでこの世界がゲーム世界であると示唆しているようで、思う部分があったのだ。


 最初のキャラクターメイクの場面からそうだったのだが、魔術がきっちりクラスごとに分かれていたりと、元々ゲーム的要素は存在した。

 しかしファンタジーな世界ながら、余りにリアルとしか思えない生活を送っている内に、ここがゲームの世界かもしれないという感覚が希薄になっている。

 ランキングストーンの存在は、久々に影治に「実はゲーム世界でした論」を思い出させた。


「――これが凄い魔導具だというのは分かった。それで、俺に試してもらいたいことってのは何だ?」


「それは……んしょっと、こちらのランキングストーンに魔力を流してみて欲しいんです」


「これは槍術……ですか。戦闘系のランキングストーンは大分高いと思うのですが、よく手に入りましたね」


「ええ。実は盗賊の腕輪を買い取りに出された方が、一緒に持ち込んだものでしてね。最近手に入れたばかりなんですよ」


 入手の経緯について語りながら、仕草で影治に使用を促す。

 グルガンの意図は読めなかったが、悪意のようなものは感じないので素直に応じる影治。

 すると先程までと同じように飾り枠の内側に、順位と名前がズラッと並ぶ。


「あっ! ねえ、エイジ。これって……」


「やっぱり! これってあなたのことだったんですね!」


 これまでより少し大きめの声が、グルガンの興奮を表している。

 その理由は、ランキングに表示された名前にあった。

 槍術の14位のところに影治の名前が表示されていたのだ。

 それもその部分だけ文字が光っており、自己主張を続けている。


「この……文字が光ってるのは?」


「ランキングに乗ってる人が魔力を流すと、自分の順位のところが光る仕組みになっているんです! 先日買い取って名前を見たときに、もしかして? って思ったんですよ! でも噂ではエイジさんは剣と魔術が得意だっていうことだし、別人の可能性もあるのかなとかも思ったりしていてですね……」


「……っ、驚きました。剣に関してはオークエンペラーをも打倒するのを目撃しましたが、槍もランキングに乗るほどの腕前なのですね」


 魔術とは関係ない部分ではあるが、リュシェルはますます影治に対する信仰心のようなものが高まっていくのを感じていた。

 一方陶然とした瞳を向けられた影治は、「ゲッ、またか!」という対照的な表情を浮かべる。


「確かに槍も習っちゃあいたが、まだ極伝なんだけどなあ」


 そんな自分がランキングに乗るなんて予想外だ、と思っている影治だったが、極伝とは真伝のひとつ手前の伝位であり、皆伝よりひとつ上の伝位でもある。

 理を超える段階にある真伝のひとつ手前ということは、理合いの上では最適解の技術を会得しているということに他ならない。

 そうした事実を踏まえれば、この順位でもおかしくはなかった。


「ね、ねっ! これってつまり、エイジは槍を使ってもすんごい強いってことなの!?」


「ああ、ええと、実は一概にそうとは言えません。この系統のランキングには、槍術の他に槍士というのがあるのです。槍術は槍の技術の高さのランキングであり、槍士の方が、槍を使って戦った際の強さのランキングと言われています。これは剣や斧など他の武器でも同じですね」


 流石に200年以上生きてるだけあって、リュシェルの知識は広かった。

 どうやらその辺の細かいことはグルガンも知らなかったようで、頻りに感心した様子を見せている。


「ほおう……。こんなランキングまであるとなると、大分興味が湧いてくるな。グルガン、剣術や剣士のランキングストーンはないのか?」


「生憎と私は持っておりません。ランキングストーンはそれなりにダンジョンから発見されますが、種類が豊富ですので特定の種類を手に入れるのが難しいんですよ」


「そっか。槍術で14位だったから、剣だとどうなのか気になったんだがな」


 これまでを振り返ってみると、この世界では槍よりも剣をメインに使う者の方が多い。

 しかし影治としても槍よりは剣の方が得意だと思っているし、実際に剣術は真伝に達しているので、槍術14位の記録を抜けると思っている。


「ランキングが気になるのでしたら、ランクシティーに行ってみるのもありですね」


「なんだその如何にもな名前は」


「東のカベリア自由都市群には、街ぐるみでランキングストーンを集めてるところがあるんですよ。人気のないランキングなら無料で見れますし、戦闘系などの人気ランキングも幾らか払えば見せてもらえます」


「東……か。まあ、そのうちそっち方面にいくことがあったら、訪ねてみるのもいいだろう」


 影治はまだしばらくはピュアストールの街に滞在する予定でいる。

 東といえば他にもカウワン王国は米の本場だというし、心の中のやりたいことリストにはどんどん新しいタスクが積み重なっていく。


「んじゃあ、いいもん見せてもらったぜ。またそのうち顔ださせてもらおう」


「はい、今後ともどうぞ御贔屓に……」


 グルガンの試したいことも終わり、店を後にする影治たち。

 一応去り際にシリアに声を掛けたのだが、生返事が返ってきたので、結局店に置いていくことになった。


「ではエイジさまのお泊りしている宿まで参りましょうか!」


 シリアとは逆に、影治に付き従いまくる気満々なリュシェル。

 そのまま宿まで付いてきたリュシェルは、当然のように未知との出会い亭で宿を取るのだった。


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