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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第1章 獣人の少女
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第20話 瓦焼きの日々


 材料集めに丸一日費やしたとはいえ、その翌日には小さな建物の基礎部分を作り上げてしまった影治。

 もっとも今回は屋根だけ作るつもりなので、壁部分までは作らない。

 火を使う施設のため、雨に濡れないようにしっかり作っているのだ。


「で、今日は昨日に続いて瓦を焼きつつ、昨日作った基礎の方に調理用の竈を作るか」


 調理用の竈は構造的にも簡単なので、土魔術が使える影治ならかなり短時間に作ることが出来た。

 作った竈の数は2つ。今後更に必要になればその時にまた増設すればいいだろう。


「あとはこの竈にスッポリ嵌るサイズの鍋やフライパンも作るか」


 窯が出来たので、ちょっとした台所用品は作ることが出来るようになった。

 早速影治はクリエイトクレイで生み出した粘土を、ムーブソイルを使って形を整えていく。

 クリエイトクレイ(粘土生成)クリエイトソイル(土生成)とは別魔術という扱いになっているのに、ムーブソイル(土操作)の方には粘土操作という魔術はない。

 ムーブソイルを使えば同じ土として操作することが可能だった。


「別に手先が不器用って訳でもないが、魔術だとほんと器械で作ったかのように正確に作れるのがいいな!」


 竈のサイズに合うように……などという要求も、ムーブソイルがあれば簡単に調整が出来る。

 デザインに関しては今はとにかくシンプルに機能的なものを意識し、まずは鍋から作り始める影治。

 その後、鍋の蓋やフライパン。水差しやコップや皿など、とにかく色々なものを作っていく。


 無論これらも窯で焼かないといけないので、その分瓦を焼くペースが遅くなってしまうのだが、優先して影治はこれら食器や料理道具などを作っていった。

 それは何故かというと……


「おおお! これこそまさに焼いた肉。ザ・焼肉だああ!」


 早速竈にフライパンを乗せ、角兎がドロップした肉を焼いて食べる影治。

 これまでは焚火に向けて木の串に刺した肉を直火焼きで食べていた。

 それはそれでバーベキュー的な感じでワイルドだったが、調理という点で考えるとどうしても表面がこげついてしまう。


 しかしフライパンなら火加減もうまい具合に調節できる。

 そのまま焼くと焦げ付いてしまう可能性もあるので、しっかりと油を敷いてから焼いたことも、これまでの直火焼きとは味がひとつもふたつも違う要因だろう。


 実は影治はゴブリン以外にも魔物を幾種か狩っている。

 角兎も見た目は小動物的で可愛らしいのだが、歴とした魔物の一種だ。

 倒すとゴブリンより小さな小粒のような魔石を落とし、ドロップとして肉や皮なども落とす。


 他にも影治は牙の生えたイノシシも何度か狩っている。

 こちらも肉や皮をドロップするのだが、他にも脂の塊……ラードのようなものもドロップする。

 今回影治はそのラードを使用して肉を焼いていた。


「ウサギ肉も悪くないが、イノシシ肉もうめえなあ。牙イノシシの方がドロップした時の肉の量が多いし、積極的に狙っていきたいとこだ」


 影治はこの日、調理用の竈と食器や調理用道具。それから火魔術の訓練をして【燃焼】という魔術を新たに覚えた。

 これはブローイングエアーと同じように、常に火を燃やし続けるというものだ。


 火力は普通に焚火を作った時と同じくらいだし、一度設置した場所から動かすことも出来ないが、ブローイングエアーと同じ位の時間燃え続ける。

 戦闘には使えそうにないが、料理など長時間火を使う場面では大いに使えそうな魔術だ。


「でもこのバーニング(燃焼)だと1時間くらいしか持たないから、窯焼き用に使用してから長時間出かけるって運用は出来んなあ」


 結局この日はそこで日が暮れたので、魔術の練習を一旦取りやめる影治。

 だが諦めきれなかったのか、翌日になっても魔術の練習を続けることにしたようだ。



「お? こうか? こうでええのんか?」


 翌日になって、バーニングの魔術を長時間保てないものかと試行錯誤していた影治。

 胡散臭い訛りを発しながらもコツを掴んだのか、魔力の調整の仕方を意識したり、魔術の構成を頭の中に思い描いていく。

 すると見た目はバーニングなのに、使用者の影治の感覚的にはまったく別の魔術だと分かるニューバーニングが爆誕した。


「って魔術名が【長時間燃焼】? なんかすんげー適当なネーミングだな。まあ、ここは俺なりにロングバーニングと名付けておこう」


 【長時間燃焼】は、どうやら最大で丸一日の間【燃焼】の効果を発揮することが出来るらしい。

 相変わらず理屈は分からないが、魔術が成功すると魔術名が浮かんでくると共に、大まかな効果とかも理解できるのだ。


「待てよ? これが出来るということはもしやあれも……?」


 ふと思いついた影治は、更なる魔術の練習を続ける。

 すると、30分もしない内に新たな魔術の開発に成功した。


「バーニングみたいに、長時間効果のある【送風】の魔術名が【長時間送風】……か。なんかこれ他にも長時間シリーズあるんじゃねえか?」


 そうは思う影治だが、今のところ日々の生活への利用用途が思い浮かばないので、魔術の練習は一旦ここで区切ることとした。

 【長時間送風】はそのままロングブローイングエアーと名付けられ、早速この二つの長時間版の魔法が活用されることになる。


「大体瓦が焼きあがるまでの時間が3時間といったところ。なら、ロングバーニングとロングブローイングエアーの効果を3時間に設定しておけば、その間狩りに出かけられるぜ!」


 影治がロングバーニングを練習していたのも、全てはそのためだった。

 周辺の魔物を狩って、動物系の魔物からは肉を。

 ゴブリンからは布や糸、稀にドロップすると思われる武器や道具を求めて、そろそろ本格的に狩りにいこうと思っていたのだ。


「ウィンドカッターの魔術も、ゴブリン相手にどれだけ通じるか試してなかったしな」


 初めの頃は何度も遭遇していたゴブリンだったが、ここ数日は見かける回数が減っていた。

 最初の地点から川を下るにつれて数が減っていたので、元々の数がそこまで多くないのかもしれない。


「……もしかして人里が近いとか?」


 ふとそんな考えが浮かんだが、今の影治の恰好は葉っぱを腰に巻いたほぼ全裸の少年である。

 異世界人とファーストコンタクトを取るにしては、少々お粗末な恰好過ぎた。


「人里を探すにしても、せめてゴブ布でそれっぽい服を作ってからだな」


 軽く今後の方針についてを定めると、窯に瓦と2つの魔術をセットして拠点の周囲の探索に移る影治。

 そして出かけてから3時間経ったらまた拠点に戻り、焼きあがった瓦を除けて新たな瓦を窯に突っ込んでいく。

 同じような作業を繰り返しながら、影治は数日に渡って瓦の焼成と周囲の探索、および魔物を狩る日々を続ける。



 そうしたある日。


 そろそろ瓦も十分数が揃ったということで、今回は少し時間をかけて探索してこようと少し遠出をしていた影治は、森の中にある集落を発見した。


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