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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第4章 冒険者ギルド
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第180話 妖精の里


「やあ、ブライガー。それにティアにエイジも。どうやらそちらも上手くいったみたいだね」


 影治達がテントを出て歩き回っていると、10人ほどの集団と合流した。

 その中にはクライムが含まれており、影治たちが近づくと声を掛けてくる。


「ああ。捕まっていた妖精は全員救出した。だがちょっと予想外のことがあってな……」


 そう言ってブライガーは妙に強い5人組のことを話す。

 影治が参加していたからよかったようなものの、そうでなければあの5人相手にかなり被害が出ていた可能性があった。


「そんな奴らが……。僕たちの方はそんな強敵はいなかったよ。エイジとティアのおかげであっさりと制圧することが出来た」


 クライムも犠牲者が出る可能性は考慮していたが、それでもそこまで強い者達がいるとは想定外だったようだ。


「あれはただの盗賊なんかじゃあねえな。ジョアンと一緒に護衛した時に襲ってきた奴らみたいな、何らかの裏組織とかの一味だと思うぜ」


「確かに追い詰められたからといって、自害を選ぶような奴がただの盗賊ってことはないだろうね。分かった、こちらで制圧時に幾人か生け捕りにしてあるから、そいつらの口を割ってみよう」


 当初は皆殺しを指示していたクライムだが、思いのほか影治らの魔術によってあっさり制圧出来たので、数名を捕らえることに成功している。

 それはあくまで捕らえて街まで連行する……といった目的ではなく、情報を搾り取るためだった。

 そして絞れるだけ絞った後は、仲間の盗賊の後を追うことになる末路が待っている。




 捕らえた盗賊への尋問はただちに行われた。

 しかし、期待していたような情報を得ることは出来なかった。

 得られた情報は、あの5人の男達は盗賊たちの中心メンバーではあったものの、その素性は誰も知らなかったということ。


 どうも妖精の反撃を警戒してか、魔術を減衰させる効果のある魔導具まで用意されていたようだが、それもこの5人が持ち込んできたものらしい。

 そこまで効果の強いものではなく、レアなものでもないらしいが、一介の盗賊がポンと用意出来るような代物ではない。


 それともう1つ判明したのは、2日後に妖精の里への襲撃を掛けるという予定だったこと。

 ルーキーズの決断や行動が少しでも遅れていたら、盗賊の襲撃を防ぐことは出来なかった。


 妖精対策のアイテムや魔導具。

 それにあの5人が里を襲撃していたら、かなりの被害が出た事は間違いない。

 その報告を聞いたクライムは、事前に阻止出来てよかったと心底思った。


「捕らえた連中の中には幹部級の者がいなかったのか、得られた情報はこんな感じだったよ」


「むうう、シークは何か心当たりないか?」


「……亜人専門の人攫い」


「……なるほど。確かに奴らの可能性はありそうだね」


 ブライガーの問いに答えるシーク。

 それはクライムにとって、目の上のたんこぶと言える相手だった。


「そんな連中がいるのか?」


「うん……。冒険者ギルドだけでなく、領主様もどうにか捕まえようとしてるんだけど、なかなか尻尾を掴ませない連中でね」


「ドラン達が行方不明になったのも、そいつらの仕業じゃねえかって話なんだ。あいつら獣人をメインにしてよくパーティー編成してたからよお」


 ドランというのは、以前ルーキーズに所属していた熊人族の冒険者だ。

 ブライガーが言うように、ある日パーティーごと行方不明になっており、それ以来行方を追っていた。


「そうか、そんな奴らが……って待てよ。そういや俺がビッグシールドの連中と知り合った時も、亜人を攫ってる連中がいたな」


「ボミオスから話は聞いたよ。その時も、バキルと渡り合えるほどの手練れがいたらしいね。もしかしたら、今回の奴らと繋がりがあるかもしれない……」


 思考を巡らすクライムだが、情報のピースが不足しているので、これ以上考えても当て推量にしかならない。

 なので途中で考えを止め、現場の指揮を執ることに専念する。


「今はまだ情報不足だね。それより、奴らの物資を回収したら、死体を纏めて処分する。それから妖精の里まで行って報告だ」


 救出した妖精を送り届けるためにも、一度妖精の里に向かう必要がある。

 クライムの指示によって撤退作業を終わらせた影治とルーキーズは、一路妖精の里へと向かうのだった。








「ここが妖精の里か?」


 ティアや救出した妖精の案内で、妖精の里までたどり着いた一行。

 小さな妖精が暮らす集落だけあってこじんまりとした、自然と一体化しているような可愛らしい建築物が幾つか並んでいた。


 またそれらの建築物以外にも、よく見るとそこいらの大きな木に幾つも穴が開いており、その中から妖精たちが顔を覗かせていた。

 どうやらそういった樹木も彼らの住処のようだ。


 はじめは警戒していた妖精たちだったが、ティアが案内していることに気付き、わらわらと隠れていた場所から出て来る。

 道中で影治がティアに尋ねたところ、およそ100人近い妖精がここで暮らしているらしい。


「そうよ! エイジは妖精の里は初めてよね? 地面に生えてる妖精花はなるべく踏み潰さないよう、気を付けて!」


「妖精花ぁ?」


「そこいらに生えている紫色の花のことだよ。彼らにとって、この妖精花というのは大事なものらしくてね」


 一応里の中にも道らしきものはあって、そうした道沿いには生えていないものの、里のあちこちに妖精花と思われる紫色の花が咲いている。

 影治は花に関しての知識は薄かったが、それは地球でいう所のカタクリという花によく似ていた。


「ほんとそこらに生えてんな。……んー、なんか微かに魔力を発してる?」


「ちょっと! そんなジーッと妖精花を見つめないでよ!」


「ああん? なんなんだあ?」


 影治がジッと妖精花を観察していると、恥ずかしそうに文句を言ってくるティア。

 だが影治は何でティアがそんな反応をするのか分からず戸惑っている。


「ティア! 無事だったんだね」


「よかったわあ。ママ、心配してたのよお」


「わっ、パパ、ママ。もう、あたし子供じゃないんだから!」


 影治がティアと話していると、ヒラヒラと飛んで来たふたりの妖精がティアの周りを旋回する。

 どうやらこのふたりがティアの両親らしいが、ティアはフェアリープリンセスだけあって体がひとまわり大きい。


 そのせいで、ティアの方が両親より大人のように見える。

 フェアリーはエルフ同様に、見た目の老化が一定年齢でストップする種族なので、余計にそのように見えてしまっていた。

 

「クノール。見てのとおり、捕まっていた妖精たちは全員救出してきたよ」


「おお、おお、クライムか。無事仲間が戻ってきたのはいいけど、君たちは大丈夫だったのかい?」


「うん。ここにいるエイジが加わったおかげで、盗賊をひとりも逃すことなく殲滅出来たよ」


「お? これはこれは、ルーキーズの新しいメンバーですかな?」


「いや、彼は一時的に加入している助っ人……みたいなものでね。まだ出会って日も浅いけど、ここのことをばらすような者ではないから安心して」


「へえ、そうなのかい。エイジといったかな? 私はこの里の長を務めているクノールだ。宜しくお願いするよ」


「エイジだ。あんたらのことは口外したりしないと誓うよ」


 少し前に仲間が攫われたばかりとはいえ、髪色からして影治がヒューマンではないことを理解したのか、初対面ながら悪くない雰囲気で互いに自己紹介をしていく。

 そこへクノールの娘であるティアが話に割り込んだ。


「聞いてよ、パパ! エイジってあの天使なのよ!」


「な、な、なななななんだとおおおおお!?」


 興奮した様子で、影治の素性について報告するティア。

 それを聞いたクノールは、鬼気迫る表情で影治の方を振り返った。


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