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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第1章 獣人の少女

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第18話 材料集め


 新たな魔術の練習は、最初に窯に火を入れた後から実は行っていた。

 はじめは窯にくべる薪を集めていたのだが、それが終わった後はすることもなかったので、風の魔術の練習をしていたのだ。


「風魔術を覚えれば、4属性を制覇出来る。それに風魔術にも色々使い道があるからな」


 新しい属性への魔力変質を探るのも大分慣れてきた影治。

 だが風の場合は自然に吹く風を感じたり、周囲にある大気を感じ取る位しか能動的に風を感じられない。

 うちわのようなものがあれば、それで扇いで風を感じられたのだろうが……。


「ん……? なんか心持ち分かりやすい?」


 しかし練習を開始してから2時間。

 ふとした感触を掴んでからは、あっという間に風属性への魔力の変質に成功する影治。

 そこからはただ風を送るだけの魔術、【送風】を覚えることに成功した。


「もう少しかかるかと思ったが、案外すんなりいけたな? 火や土と比べると風属性の方が適性があるってことか?」


 生憎とこの世界では今の所、ステータスを表示することが出来ていない。

 筋力やらHPやらそういったものが、数値として存在しているのかすら不明だ。

 なのでその辺は前世の時同様に感覚的に判断するほかない。


 ともあれ、風魔術を修得出来た影治は最初の火入れを行って窯自体に問題がないことを確かめると、作業を止めて床についた。


 翌日も天気は快晴で、外での作業も問題はない。

 そして今日も朝から行うのは魔術の練習だった。

 といっても、これまでのような新しい属性魔術の練習ではなく、すでに基本を使えるようになっていた属性魔術の練習だ。


 影治はこれまで覚えた属性の中で、実現したいと思う魔術というものが幾つかあった。

 すでに属性魔力への変質は出来るので、後はイメージとその魔術が存在しているかどうかが鍵だ。


 これまでの経験上だと簡単そうに思える魔術でも、存在していない魔術を使うのが難しいと感じていた。

 感覚的には不可能という訳でもないし、実際これまで魔術を覚えた時に脳裏に魔術名が浮かんできたということは、それらの魔術を開発した者がかつて存在したということでもある。


 しかし今は新規の魔術開発を研究している余裕などない。

 なのでとりあえず現状のサバイバル生活で役に立ちそうな魔術を思い浮かべ、その練習に励んでいった。


 そうしてその日もまた一日魔術練習に費やされ、翌日を迎えた。

 そこで影治はようやく食料採取以外の目的で、森での活動をはじめる。




「さ、まずはムーブソイルで入口を開けて……と」


 昨日一日中魔術を考えていた影治は、幾つかの魔術を覚えることに成功していた。

 【土操作】……ムーブソイルもその内の一つだ。

 実は影治は土壁を作ってからこれまでの間、ちょっとしたアスレチックの要領で土壁の上を強引に上って出入りしていた。


 しかし今はムーブソイルの魔術を覚えたことで、周囲の土を操作して動かせられる。

 これで入口部分の土壁を一時的に人が通れるくらいに開き、通り過ぎたらまた閉じることで行き来も可能になった。


 だが壁を越えても、その周りには以前の雨の影響ですっかり水堀になった堀がある。

 そこで堀の傍に盛り土を用意しておき、自分が通る時だけその土を操作して橋を架けることで、堀もすんなりと渡ることが可能になっている。


「ううん、やはり魔術は便利だ」


 すっかり魔術に魅了されてしまった影治。

 これまで修得してきた魔術は、今の現状で必要となる生活系の魔術ばかりだ。

 しかし昨日の練習では、生活にも役立つし戦闘にも使えそうな魔術を開発していた。


「切り裂け、風の刃よ! ウィンドカッター!」


 別にこのような呪文の詠唱などはいらないのだが、思わず声を発してしまう影治。

 【風斬】……ウィンドカッターはその名の通り、風の力で対象を切り裂く風魔術だ。

 何故に風の力で物が切れるのか不明だが、そうした科学的なイメージを払拭して、魔術的イメージでイメージしたら割と簡単に修得が出来た。


 影治がウィンドカッターを放ったのは、洞窟近くに生えている木。

 あまり太い木ではなく、以前自作の石斧(ロドリゲス)で切り落としたものと同程度の木だ。

 ウィンドカッターの一撃は確かにその細い木に切れ目を入れたが、幾ら細い木といっても一発だけは切り落とせないらしい。


「むう。応用の効く魔術もあるが、こいつは威力をこれ以上高めようとイメージしても変わらないんだよな」


 クリエイトソイルなんかは割と応用が効いたのだが、ウィンドカッターは応用力がない。

 というか、基本的には応用が効かない魔術の方が多い。

 それはまるで魔術というものが1つの型に嵌っているかのようだ。


「ま、いっか。とりあえず拠点周りから伐採していこう」


 1度では切れない木でも、何度か同じ個所に重ねていくことで切り倒すことは出来る。

 それも石斧なんかで切るよりも切断面がやたらと鋭利であり、なおかつ影治の集中力の賜物か同じ個所を切り裂いていたので、切れ目スッパリ綺麗に切り裂かれていた。


 この木の伐採は、拠点周りの視界を確保という意味合いもあったが、何よりこの木材で入口広場にちょっとしたものを建てようと思っていたからでもあった。

 影治は前世での島の暮らしの間、空いた時間に以前に学んだサバイバルや、持ち込んだ本などの知識の実践を行っている。


 それはサバイバルというレベルを超え、文明を1から築くレベルで多方面に及んでいる。

 自然の状態から道具を作り、家を建て、布を得る。

 紙の生成方法や石鹸の作り方。料理方面では醤油や味噌の作り方から、チョコレートの作り方なんてのも実践していた。

 もっともカカオなんてのは自生していないので、代わりにどんぐりや植物油脂を使った代替品で作っている。


 そうした知識と経験を元に、ひたすら今日の影治は材料集めに奔走した。

 集めるのは手頃な木とラタンの蔓。

 ラタンは日本ではトウと呼ばれ、家具などの素材として使われているものだが、日本では自生していない。

 そのため前世での島生活の中では実践したことはなかったのだが、例のサバイバル動画ではこれを思いっきり活用していた。


「ううん? なんか妙に丈夫な気がするな。これもファンタジーな世界だからか?」


 熱帯的な気候の森のせいか、この辺りにはラタンらしき植物はあちこちに生えている。

 外皮の部分が所々鋭くトゲのように尖っているので、何気にこれまでなんども切り傷を負い、その度にヒールで治していた。

 ほぼ全裸な状態なので、いつのまにか傷ついているのだ。


 この外皮の部分を剥くと、中に蔓の中心部分となっている丈夫な紐状の組織が現れる。

 大体一本につき長さ3メートルから4メートル位はあるだろうそれは、よじり合わせてロープにしなくともかなりの強度がありそうだった。


 太さの方も、今回は紐代わりに使うので竹ひごより少し太い程度のものを集めていたが、親指と人差し指で輪を作った時くらいの太さのものも生えている。

 これらを使えば椅子などの家具も作れるだろう。


「どんくらい使うかは分からんが、多めに用意しても悪いことはないだろ」


 とにかく魔術を使うのが楽しくて仕方ないといった調子で、影治は周辺の木やラタンなどを集めていく。

 それは日が暮れるまで続けられ、一時置き場に置いた材料が山盛りになるのだった。


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