表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

悪いことをしたら発覚

あと一回で完結したいです。


設定の補足

領土税は日本の地方税を参考死しています。

封土税は中世ドイツの封建制度を参考にしています。

小説ならではのご都合主義でお願い致します。


選択君主制を選挙君主制に変更します。

ご了承くださいませ。

王国の法律顧問に宛てて

現役大公家の脱税についての告発がなされたのは、前代未聞である。


理由はいくつか挙げられる。


誰もが真っ先に思いつくのは

名指しされたフェルトベルク大公家の逝去した先代大公と、その夫人は、

この王国の主だった王位継承権を持つ名家に連なる人物だ。


選挙君主制の王国で、十代前に遡って王位に着いた家系を紐解くと

夫婦双方が序列の差はあれど、どの家の治世でも家督の承継に食い込んでいる。


生存している先代夫人と、その後継者を告発するには、

どの【王家】にも【聖域】と言われる王家の法律顧問へ宛てた、とか。




 ◇




メイは兄と父から、ガラス板で封緘された大公家への告発文を精読させられた。

王国トップクラスのビッグネームを告発なんて。


ただ社交界デビュー前のメイは、大公殿下の名前ぐらいしか知らない。

確か兄は王立学園で、現大公殿下と同じ講座を取っていたはずだ。

兄との交友関係がどうなっているかも知らないが。


「お二人は、この告発は虚偽と判じているのね。」


メイは父と兄に自分の推測を伝える。

ローゼッタ家は一家どころか、一族郎従がそれなりに法律に携わるので

会話の一つ一つに気が抜けない。


しかし、自分のツッコミ体質を知っているメイに今の所は天職だ。


「その根拠は?」


『ほら来た!って顔はヤメろ』と苦笑しながら兄が問う。


「まず告発された税ですけど、水利地益税は領土税ですわ。

 領役所の管轄です。


 次の、世襲に対する封土にかかる相続税ですけど、

 当主の空位と、未成年者だった後継者のカイン様にかかる封土税を指しているなら

 カイン様が成人したのは去年だから、納税義務期間の終了は今年になるはず。

 この文面なら、告発に該当すると解釈するには、まだ完了していない対象になるでしょう。

 したがって、一方的に違法と言えるかどうか。


 なにより告発状はローゼッタ侯爵個人に宛てた物と思われます。

 告発するなら、王国法律顧問に宛てないと。」


『及第点だね』と、メイの答えに頷く兄。


「どうしてローゼッタ侯爵個人とした?」


父の追加攻撃が入った。


「実証に使えるなら、現物を持ち出さないでしょう?

 きっと宛名がローゼッタ侯爵への私信扱いの物。

 その上、肝心の告発は間違いだらけだから、

 この内容通りの案件に対する証拠保全をする必要がない。

 

 大公家への誹謗中傷、冤罪の証左にはなりますが。」


『宜しい』と、ガラスに封緘した告発文を指で弾いて頷く父。


「それで、私は何をすれば良いのですか?」


メイは続けた。


「カインはね、呪われた大公殿下って噂があるんだよ」


兄がトンデモナイ事を言い出した。





 ◇




兄が言うには。


「もしヤバい事があってもさ、トーマ君を連れていきなさい。

 絶対、あの子の方が強いから。」

「ハァーーー?!」


メイ渾身の『はぁ?!』だった。


「だよねー。

 でも、今回は呪いじゃないよ。

 殿下の呪いでヤバい事は起きないけれど……

 この告発関係で、あの子の魔法が必要になると思うんだ。」


兄は何かを感じ取ったから、呪いを否定しているんだろうけど

トーマを『強い』と言及したのは、対処する方法が必要…

つまり危険があるからでは?とメイの思考を視線で読み取った兄は

『別動隊も用意するし、大公家に関しては表に出したくない事が多い』らしい。


ではメイ個人がトーマに同行を頼むカタチにしたいのか。

ローゼッタ家は無関係に見せるとなると、

メイ個人がトーマ…事によっては辺境伯に借りを作る事になるのでは?


メイは頭の中で計算する。


「お、お父様も一緒のご意見ですか?」


メイは自分の借りにしたくないので、父に言質を取る事にした。


「近い将来、王家は辺境伯の力を借りる事になる。

 言えん事が多すぎるが、辺境伯一族も王都に馴染んで貰うには

 適度な難易度かな…」


『どんなんかなぁ?』みたいに言ってるな。と、メイは思った。


確かにトーマは転生者ならではの知識で、法律家泣かせの魔法を編み出した。

チート過ぎて、殆ど証拠に使えないが。





 ◇




フェルトベルク領への旅行の同行を打診して、ホイホイやって来たトーマ様ご一行に

メイは、出発後の馬車の中でカインに張り付いて探るように頼んだ。


『あ、やっぱりか』で済ましてくれたが、世界一物騒な地方出身のトーマは用心深い。

馬車に乗っても頻繁に魔法を発動したようで、今も少し虚空を見上げて沈黙していた。


『なんの魔法なの?今はどうなの』と、魔法が見えないメイはトーマに質問すると

『クリアリングです』と答えるも、詳しい効果を尋ねると


「どうすれば利便性が上がるか、まだ改善の為、

 魔法を組み立ててる途中です。」


と、トーマは返事をした。


多分『変更点が出ると再度の説明が必要になりますので』って事ですね。


『タダで楽しい旅行に連れてってあげる』と騙し打ちした挙句のメイのウザ絡みに

『オメェ、うっせーぞ』と言わないだけ優しいけど

社会人経験者のお断り言葉だわ。と、メイは感じ取った。


まぁ、以前教えてもらってますし。





魔法発動中のトーマは、前世のアニメのように体は発光しない。


姉兄に『DPSで負けているからサーチ&デストロイを磨いたんです』から

体が発光なんて、目立ち過ぎてトンデモナイらしい。


「トーマ君のクリアリングって、確か安全確認だったっけ?」

「……そうです。

 僕の魔法は周囲へのスキャンも組み合わせて、全方位の地形や構造物の把握を可能にしました。」


『空中も地中も有効です。』と付け足すトーマ。


つまり、何がどこに隠れていても見つけるって事だ。



まさかこの後、雷雨になり、

『Mein Vater, mein Vater』と、メイが歌ったら

『僕の時は「お父さん、お父さん」だったんです。』と、テンションが爆上がりした

トーマがヴェリー卿に絡みだして、馬車に酔うとは予想出来なかった




 ◇




カインに同行したチェリー農家視察の二日目。

森の廃墟へ向かったカインは、トーマを馬車に待機させた。


ヴェリーも帯同していたので、トーマはクリアリングを発動し続けた。


そして見つけたのだ。

カイン達のいる場所の奥に、ボストンバッグやトランクが数点隠されていたのが。





 ◇




そこからは簡単だった。


便利なトーマの魔法は探査範囲を絞る事で、物質や内容物の把握が可能だった。


ボストンバッグには証券が。

トランクには金塊が。


もっと精度を上げて、複数枚の証券に記載されている内容も覚えたそうだ。


範囲の方向性を絞ったり、集中しすぎると近距離が疎かになるので、

ヴェリーに護ってもらっている。


カインが帰還したので廃墟のクリアリングは終了。



その後、トーマはハースト邸へ帰宅して『覚えた証券の内容をペースト』した。


覚えた内容を、メイが持参していた和紙へ『コピペ』して書類化したのだ。

それは王都を含む大都市で発生した、投資詐欺事件で騙し取られた証書と同一内容と確認された。



王都では、この投資詐欺事件の主犯とされる人物が拘留されている。

この人物への捜査上に、とある男が浮上した。


似顔絵を見た、主犯とされた人物は『本家出身の従兄』だと話したが、捜査では名前も年齢も違っていた。


とある男は、現在フェルトベルクの領役所で事務員をしていた。


 

閲覧頂きありがとうございました。

楽しんで頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ